「八ッ場を知らない子どもたちへ ⑧未来」(上毛新聞)

 上毛新聞連載記事の最終回は、川原湯温泉協会長としてしばしばメディアに取り上げられてきた、川原湯温泉協会長の樋田省三さんへのインタビュー記事です。
 樋田さんは水没地の旧温泉街で老舗のやまきぼし旅館を営んでいました。記事によれば、川原湯温泉が移転したダム湖畔の打越代替地で4月に旅館を再開するとのことです。
 水没五地区は八ッ場ダムの受益者とされる一都四県(東京・埼玉・千葉・茨城・群馬)が支出する利根川・荒川基金の負担で、ダム湖畔の代替地にそれぞれ地域振興施設を建てており、川原湯地区の地域振興施設を運営する地元出資会社のNOAは樋田さんが社長を務めるということです。

◆2020年3月26日 上毛新聞
ー八ッ場を知らない子どもたちへ ⑧未来 観光地化 次世代残す 樋田省三さん(55) 長野原町川原湯 川原湯温泉協会長、「湯宿・御食事やまきぼし」経営ー

 本体工事が始まり、地域再生に向けて歩み始めた。国の工事現場見学会には数多くの観光客が訪れ、昨年は台風19号(令和元年東日本台風)で一夜にしてダムが満水近くまでなり注目を集めた。

 建設再開が決まった時はまだ半信半疑でしたが、本体工事が始まってからは全てが早かった気がします。台風直後、私のレストランにも利根川流域の方が来てお礼を言ってくれました。政権交代の時に住民は批判されましたけど、世間の反応が変わったことに不思議な思いがしました。

 新たな施設が今後、続々とオープンして観光地化が進む。樋田さんが社長を務めるNOAが運営する「川原湯温泉あそびの基地NOA方舟」は誘客の目玉として期待されている。

 かつて住んでいた場所は水の底に沈んだので、旧約聖書のノアの方舟のように地元を再生させたいとの思いを込めました。施設では手ぶらでキャンプやバーベキューが楽しめ、カフェや温泉も備えるほか、街の地域活性化組織の事務所が入るので情報発信基地にもなります。バーベキュー場にはすでに問い合わせがあり、100人規模の予約が入っています。

 ダム湖では水陸両用バスや観光船、吾妻渓谷では自転車型トロッコなどのレジャーが楽しめるようになる。周遊観光を盛り上げるには施設間の連携が不可欠だ。

 私が運営するレジャー施設の主な顧客層は首都圏の若い世代や家族連れで、既存の旅館とすみ分けできると考えています。今後は水没5地区がまとまり、八ッ場エリアという考え方の中で歩みを進めることが必要です。草津町は日本有数の温泉地で、東吾妻町には忍者や真田氏など面白い歴史があります。周辺自治体を巻き込めるかも今後の鍵を握ると思います。

 川原湯温泉の旅館は5軒に減少しましたが、若手が戻りつつある。4月に再開する樋田さんの旅館も長男が戻ってくる予定だ。

 ダムに関係するのは私が3代目で、息子は4代目。将来を担う若者が育たないと成功はないと思うので、人間的に成長しこの地域を良くしてほしいと思います。川原湯温泉は800年という伝統があります。時間はかかるかもしれませんが、しっかりと石にかじりついてでもやれば、良い温泉場になるはずです。

2015年 基礎掘削を開始しダム本体工事が本格化
 16年 ダム本体のコンクリート打設開始
 17年 国道、県道の付け替え工事が完了し、全線で開通
 19年 コンクリート打設が完了し、試験湛水を開始

                      (終わり) 斉藤弘伸が担当しました。

—転載終わり—

写真下=JR川原湯温泉駅の脇で工事中の地域振興施設「川原湯温泉あそびの基地NOA方舟」。2020年3月撮影。

写真下=川原湯地区の地域振興施設を建設中の上湯原代替地。大規模盛土造成地であるため、宅地造成等規制法の基準では安全対策が必要だが、住宅ができないことになったため、安全対策不要とされた。