「コロナと災害避難 命守る環境の確保が急務」(毎日新聞社説)

 災害列島と言われるわが国ですが、災害時の避難所が貧弱であることが、かねてより問題となっています。
 過去の災害では、避難所でインフルエンザなどの感染者が相次いだということです。人が密集することを避けなければならないコロナ禍の現状で、この数年繰り返されてきたような水害が発生すれば、心配は現実のものとなります。
 毎日新聞に続き、福島県の地元紙が社説でこの問題を取り上げています。

◆2020年5月10日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20200510/ddm/005/070/020000c
ーコロナと災害避難 命守る環境の確保が急務ー

 新型コロナウイルスの感染が続く中で、災害発生時に避難所での集団感染を防止する対策が急務となっている。水害リスクの高まる季節が目前だからだ。

 避難所では、大勢の人が狭い場所に雑魚寝を強いられることが珍しくない。「密閉・密集・密接」の3条件が重なる典型的空間だ。

 国は、通常の災害時より避難所を増やすことや、発熱やせきの症状が出た人には専用スペースを設けることを求める通知を都道府県などに出した。

 しかし、そもそも避難所として使える公共施設が足りない地域が少なくない。通知ではホテルや旅館の活用も促したが、そうした民間施設も乏しい自治体がある。

 先月、大雨となった千葉県南房総市は土砂災害に備えて住民に避難勧告を出した。避難者は結局いなかったが、通常の避難所以外に小中学校の空き教室を使えるよう準備したという。他の自治体にも参考になりそうだ。

 ただ、多くの避難所を確保できたとしても、運営に関わる職員らが足りなくなる恐れがある。

 住民も「3密」防止に協力し、親戚宅や友人宅など個々の避難先を考えておいてほしい。

 国は対策を自治体任せにしてはならない。地域の課題を積極的に把握したうえで、より具体的な指示を出す必要がある。

 小さなまちでも避難先やマンパワーを確保できるように、近隣自治体との広域連携を促すべきだ。

 各避難所では、マスクや消毒液のほか、間仕切りなどの設備が欠かせないが、十分な備蓄ができないところもあるかもしれない。災害発生時には、国が要請を待たずにこうした物資を送る「プッシュ型支援」が大切になるだろう。

 日本の避難所は以前から環境の劣悪さを指摘されてきた。国際赤十字などが定めた基準では、1人当たりの居住スペースは最低3・5平方メートルとされているが、守られていないケースが多い。

 過去の大災害では、避難所でインフルエンザなどの感染者が相次いだ。その後も改善が遅れていることが今日の不安を招いている。

 災害被害と感染爆発が同時に起これば、被災地の医療は崩壊する。命を守るため、最悪の事態を防がなければならない。

◆2020年5月11日 福島民友新聞
https://www.47news.jp/localnews/4798477.html
ー激震!コロナショック】避難所『3密』苦慮…災害時感染対策ー

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、県内自治体が災害時の感染症対策に苦慮している。住民が身を寄せる避難所が密閉、密集、密接の「3密」を避けられないためだ。昨年の東日本台風(台風19号)で甚大な被害を受けた本県。市町村は避難所運営の見直しなど対策を急いでいる。

 台風による河川の氾濫で最大42カ所に約4000人が避難した郡山市。現在、避難所運営の見直しを進めているものの、「3密」を防ぐには1人あたり3平方メートルのスペースを確保する必要があり、入場時の検温や体調不良の有無で生活場所を分けることなども想定すると、「通常時の4分の1から3分の1程度の受け入れしかできない」としている。

 体温計も品薄が続きゴム手袋や防護服、消毒液なども足りていない。担当職員の増員も必要で、避難者の体調が悪化した際の搬送方法も課題に上がっている。

 国は避難所の過密状態を避けるため、有事の際に指定避難所以外の避難所も開設するよう通知。避難者の検温や問診の実施、避難所を段ボールで区分けするなどの感染対策をまとめたチェックリストも作った。しかし、人的、財政的な課題もあり、自治体の対応は遅れ気味だ。「避難者の健康観察などさまざまな課題が想定される。人員に加え消毒液やマスクなどの資材の確保に一つの自治体で対応するのは難しい」(須賀川市)という声もある。

 県内で感染者の確認数が最も多い福島市は、16日に感染症を踏まえた防災訓練を実施する計画。避難所の分散化や検温による避難者の体調管理などの手順を確認する予定だが、感染症の影響で参加者数を大幅に縮小せざるを得ない状況だ。市危機管理室は「本来であれば大人数で訓練して本番に備えたいが、感染者が出るのも怖い。思うように訓練もできない」と嘆く。

 専門家も警鐘を鳴らす。福島大うつくしまふくしま未来支援センター特任教授で防災教育が専門の天野和彦氏(61)は「3密」の対応について「絶対的な策は、残念だがない」と指摘。対策として手指や履物の消毒など最低限できることを徹底するしかないとする。天野氏によると、通常の自然災害の場合、避難所はボランティアなど外部からの支援で成り立つ。しかし、感染が拡大する中では「ウイルスを持ち込ませない(持ち込まない)ことが大前提」となり、自主運営が重要になってくる。

 東日本台風で約2カ月間、避難生活をしたいわき市の会社員、男性(65)は自らの経験を振り返り、避難所での「3密」は避けられないだろうと話す。「また水害が発生したら、どこに避難したらいいのか」。被災者からも早急な対応を求める声が上がっている。