国交省が水害対策とまちづくりに関して指針作成へ、浸水エリアへの居住誘導やむなし

 6月12日に国土交通省が開催した「水災害対策とまちづくりの連携のあり方検討会」(第3回)の審議内容を伝える記事をお送りします。

 この検討会の配布資料は「水災害対策とまちづくりの連携のあり方」検討会で見ることができます。 
 https://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/toshi_city_plan_tk_000059.html 

 滋賀県では嘉田由紀子前知事の時代に、全国に先駆けて流域治水推進条例を制定し、氾濫の危険性のある河川の近くに立地規制、建築規制の網をかけました。ダムに反対する市民運動では、流域治水の必要性、流域治水条例を全国に広げることを訴えてきましたが、「浸水エリアへの居住誘導やむなし」、「除外すると、まちが成り立たない」という結論では、流域治水条例の全国化を望むことなどできません。

◆2020年6月26日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60690050T20C20A6000000/
ー浸水エリアへの居住誘導やむなし 国交省が指針作成へー

 自治体が住宅の立地を促す「居住誘導区域」を浸水想定区域内に設定している問題で、国土交通省は両区域の重複は避けられないとみて、堤防整備などの水害対策と土地利用などのまちづくりを一体的に進めて被害を防ぐ方針を固めた。水害対策に貢献する再開発ビルの容積率を緩和する制度も創設する。

■「除外すると、まちが成り立たない」
 2019年10月の東日本台風(台風19号)では、浸水したエリアが居住誘導区域に設定されているケースが少なくなかった。全国でも、浸水想定区域を居住誘導区域に含めている自治体は多い。防災やまちづくりの専門家の間では、「浸水が想定されるエリアに居住を誘導するのはおかしい」との声が上がっていた。

 そこで、国交省は20年1月、都市、水管理・国土保全、住宅の3局合同で有識者会議を設置。そうした区域設定の問題も含め、水害対策とまちづくりの連携を検討してきた。6月12日に開いた第3回会合では、5月に実施した自治体への聞き取り調査の結果を公表。自治体からの意見を紹介した。

 ある自治体は、交通事業者と連携して、居住や医療、商業などの都市機能を中心部に集約する「コンパクト・プラス・ネットワーク」のまちづくりを推進。都市の成り立ち上、中心部にある鉄道駅や高次医療施設(大学病院)を浸水深3メートル以上の浸水想定区域に含めている。「浸水想定区域を都市機能・居住誘導区域から除外するのは厳しい」とみる。

 別の自治体は、「(浸水想定区域など)ハザードエリアに既成市街地が多く存在し、誘導区域から除外すると、まちが成立しなくなる。一方、ハザードエリアを誘導区域として公表することにも抵抗がある」と打ち明ける。

 そのため、国交省の有識者会議は、「多くの都市部が水災害ハザードエリア内にあるなか、居住や都市機能を誘導する区域から完全にハザードエリアを除外することは困難だ」と指摘。河川や下水道などの治水施設の整備と併せ、水害リスクの低い地域への居住・都市機能の誘導、地形に応じた住まい方の工夫、避難体制の構築など、水害対策とまちづくりが一体となった取り組みを推進する必要があるとの認識を示した。

 国交省は、有識者会議が7月初旬までにまとめる提言を受け、8月にモデル都市を複数選定。その取り組みを踏まえ、21年3月にガイドラインを作成し、自治体などに通知する。

■防災貢献で容積率緩和の新制度
 有識者会議の第3回会合で示したガイドラインのイメージでは、水害対策とまちづくりの連携を促進する考え方を提示。自治体は、防災・治水部局が提供する水害情報を基に、まちづくり部局が地域の水害リスクを評価し、防災目標を設定したうえで、地域の危険度に応じて居住誘導区域などの指定を判断することが重要だと述べている。

 区域設定のための考え方も提示した。特にリスクが大きい地域(災害レッドゾーン)は原則、立地や開発を規制し、居住誘導区域から除外する。よりリスクが小さい地域(災害イエローゾーン)は、浸水深や建物倒壊の恐れ、避難の容易さなどに応じて、居住誘導区域に含めるか否かを判断する。さらに、浸水深をベースに、浸水継続時間や洪水到達時間、流速、避難時間など他要素も考慮して、区域を設定する。

 区域設定の具体例も紹介。福島県郡山市は原則として、氾濫水の流れが激しい「家屋倒壊等氾濫想定区域」(L2)と浸水深1メートル以上の区域(L1)を居住誘導区域から除外している。埼玉県志木市は、既成市街地の大部分が浸水想定区域と重なっているが、災害避難場所から1キロの範囲(徒歩10~15分圏内)に含まれるため、居住誘導区域に設定している。

 一方、まちづくりの防災・減災対策も例示した。土地のかさ上げや緑地・農地の保全など災害発生を未然に防ぐ手法の他、避難路の整備や浸水深以上への居室の配置など災害発生時の人的被害を最小化する手法、宅地や基礎のかさ上げなど災害発生時の建物被害を最小化する手法を列挙。さらに、まちづくりと連携した水害対策として、遊水機能の強化や下水道の整備など内水氾濫を防ぐ手法を挙げている。

 この他、都市開発プロジェクトで民間事業者が地域の水害対策に貢献する施設整備などに取り組む場合、新築する再開発ビルの容積率を緩和する制度を創設する方針を示した。国交省は、有識者会議の提言を受け、早ければ20年夏にも新制度を導入する。

 新制度で容積率緩和の対象となるのは、民間事業者が再開発ビルの最上階などに近隣住民が避難できるスペースを設けたり、周辺街区に避難路や避難地などを整備したりする場合だ。都市再生特別措置法に基づく都市再生特別地区で実施する再開発事業では、河川の上流域など離れた場所に仮設住宅用地などを確保すれば、容積率緩和の対象となる。

(日経クロステック/日経コンストラクション 谷川博)