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球磨川堤防決壊、要因は「川に戻る水の勢い」と国交省九地整

 さる8月7日、国土交通省九州地方整備局が堤防調査委員会を開催しました。
 http://www.qsr.mlit.go.jp/press_release/r2/20080503.html
 国交省九州地方整備局HP 第二回堤防調査委員会

 7月上旬の熊本豪雨では、右の図1の通り、球磨川の各所で氾濫がありました。そのうち、堤防が決壊したのは2箇所でした。この決壊は川側からの越流ではなく、氾濫水が川に戻るときの勢いで決壊したという報告がこの堤防調査委員会がされました。
 通常は川から周辺地に越流するときに川裏側の法面(のりめん)が削られて、決壊に至るのですが、球磨川の決壊箇所2か所はそうではなく、逆方向の流れによる決壊でした。
〇図1:国交省九州地方整備局HP 【河川】令和2年7月豪雨における出水について(第2報)記者発表資料53ページより
    
 2000年に旧・建設省が耐越水堤防の普及を図ろうと、全国の関係機関に通知した河川堤防設計指針(第3稿)は右の図2のとおり、川裏側の法面(のりめん)のみを強化するものでした。この耐越水堤防工法では今回の球磨川の堤防決壊のケースには対応できないことになります。

 一方、昨年10月の台風19号で決壊した千曲川長野市穗保地区では、建設省から国交省になってはじめて、耐越水堤防工法が導入されましたが、その工法は右の図3の通り、川裏側だけではなく、川表側の法面も強化するものになっています。

 このように今後、耐越水堤防工法を全国で普及させていく際には、場所によっては川裏のり面だけではなく、川表のり面も強化することが必要だと考えられます。

 関連記事を転載します。

◆2020年8月8日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/633772/
ー球磨川堤防決壊、要因は「川に戻る水の勢い」 九地整が見解ー

 国土交通省九州地方整備局は7日、熊本県南部を襲った7月の豪雨で同県人吉市の球磨川の堤防が決壊した原因について、「堤防を越えた水が川に戻るときの勢いでのり面が崩壊した」との見方を明らかにした。福岡市で開かれた専門家による調査委員会の会合で示した。

 同局によると、決壊は2カ所で発生。人吉市中神町馬場の右岸の幅約30メートルと、約1・4キロ下流に位置する同市中神町大柿の左岸の幅約10メートルで、現場付近の川はS字状にくねっている。

 7月13日の現地調査で、農地から漂流したハウス施設の残骸が決壊箇所の近くにたまっていたり、下流方向に草が倒れたりしていたことが判明。九地整は痕跡などから、氾濫した水が川からあふれた後、低地に流れ、再び川に「越流」して決壊を招いたと推察。陸地が山や高台に囲まれ、氾濫した水が逃げ場を失ったことも影響したとみる。

 今後もデータによる裏付けを行うほか、川の水が堤防の土の中に染み込み、強度が弱くなってのり面が滑る「浸透」といった他の要因も絡んでいないか調査や分析を進める。 (大坪拓也)