「ダムありき」議論やめて 球磨川流域の建設反対派、被災者ら

国土交通省と熊本県はさる8月25日、7月の球磨川水害の原因を究明し、今後の治水対策を考える検証委員会を開催しましたが、委員会は「川辺川ダム建設」を促す結論ありきの議論でした。これに対する反論を取り上げた記事を紹介します。

◆2020年8月27日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/671489655086138465?c=92619697908483575
ー「ダムありき」議論やめて 球磨川流域の建設反対派、被災者らー

 熊本県の蒲島郁夫知事が定例会見で、自身が白紙撤回した川辺川ダム建設も球磨川の治水対策の「選択肢の一つ」とする考えを示した26日、球磨川流域のダム反対派住民や豪雨被災者からは「ダムありきではない抜本的な治水対策」を求める意見や、ダムの緊急放流を不安視する声が相次いだ。

 「場所によって被害はさまざま。まずは慎重に検証してから、総合的な治水対策を打ち出すべきだ」とくぎを刺すのは、「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」共同代表の緒方俊一郎さん(79)=相良村川辺。

 緒方さんらは今回、国が示した人吉地点のピーク流量を大きく上回る流量が流れたとみており、「大水害ではダムを造っても役に立たず、かえって緊急放流への不安が高まるだけだ」と訴える。

 長く反対運動をけん引してきた靎[つる]詳子さん(70)=八代市本野町=も「ダム前提で議論している場合ではない」と強調する。

 豪雨後、球磨川流域を見て回った靎さんは「瀬戸石ダムなど『人の手』が球磨川の流下能力を下げている」と指摘。新たな構造物となるダムで一時的に治水能力を上げても、「想定外の豪雨」には対応できず、「ソフト面も含め、流域住民を巻き込んだ真の流域治水を進めるしかない」と語気を強める。

 自宅が屋根まで浸水し、近くの避難所に身を寄せている榊愛子さん(75)=人吉市中神町=も「最近の雨の降り方は異常。知事が住民のために考え方を変えるのは大事だが、ダムを造ってどうにかなるとは思えない」と困惑気味。

 人吉市のアパートに避難する清川サミエさん(70)=球磨村神瀬=は「ここまで被害が大きいと、ダム建設も仕方ないのかもしれない」。ただ、水をためきれなくなったダムの緊急放流への不信感は根強い。今回の豪雨で、市房ダムが緊急放流寸前だったことに触れ、「『緊急放流する』と聞いて大きな不安を感じた。将来、川辺川ダムまで緊急放流する事態になったら、さらに恐ろしい」と顔をしかめた。(太路秀紀、臼杵大介、小山智史)

◆2020年8月26日 熊本日日新聞

 上記記事より一部転載

〇国土交通省九州地方整備局の大野良徳河川調査官
「人吉地点のピーク流量(速報値)は毎秒8000㌧。(既存の)市房ダムにより7500㌧程度に減り、さらに(中止されている)川辺川ダムがあれば4700㌧程度までピーク流量を軽減できた」

〇角哲也京都大学防災研究所教授
「川辺川ダムがあれば、ピーク時に人吉地点であふれた水の量を9割程度抑えられていたと推定」「国の試算も基本的には近い数値。ダムによる治水は一定程度以上の効果があったはずだ」
「川辺川ダムの効果だけに依存せず、市房ダムの機能強化や流域の田んぼなど遊水池の確保も含めた全体バランスの中で議論していくべきだ」

〇今本博健京都大学名誉教授
「今回のデータだけを使った試算は意味がない。」
「今回は主に球磨川本流の中・下流域に雨が集中した。他の支流からの合流量なども計算して人吉地点以外の流量の推移を見れば、ダムの効果は限定的だ」

〇大熊孝新潟大学名誉教授
「計画通りの雨にしか対応できないダムは『不安定な治水対策だ』」「川辺川ダムがあったとしても治水効果は限定的だった」
「人吉市では7月4日午前7時ごろには、球磨川本流の流量が毎秒5千㌧に達し、既に水が堤防を越流して水害が発生していた。」「川辺川ダムから人吉までの距離を考えると、同ダムが治水効果を発揮する時間帯には既に被害が出ていた」

〇大本照憲熊本大学教授
「(球磨川を管理する国土交通省九州地方整備局は)浸水の深さや面積にばかり注目するのではなく、氾濫水の流速も重要だ」「じわじわと水位が上がる氾濫では、電柱はなぎ倒されない。球磨川のような急流河川では氾濫の流速を検証しないと、被害の軽減へ適切な対策は議論できない」