八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム完成、観光施設の開業相次ぐ(東京新聞)

 東京新聞に八ッ場ダム事業によってダム建設地周辺に整備されつつある地域振興施設の記事が掲載されていました。
 これらの地域振興施設の整備費は、八ッ場ダムによって都市用水の供給を受ける利根川流域一都四県(東京都・埼玉県・千葉県・茨城県・群馬県)が拠出する利根川荒川水源地域対策基金の拠出金によって賄われてきました。施設完成後の維持管理は地元の負担となりますので、地元にとっては集客が大きな課題です。

*水陸両用バスは以下の記事が掲載された時点では水位低下のため運行が休止されていましたが、9月4日より再開しています。
*利根川荒川基金には栃木県も参加していますが、栃木県は八ッ場ダムの治水負担金のみを支払い、利水事業には加わっていませんので、八ッ場ダムの地域振興施設の整備費は負担していません。

◆2020年9月1日 東京新聞群馬版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/52437/
ー町の再生 振興策で加速 八ッ場ダム完成、観光施設の開業相次ぐー

 長野原町の八ッ場ダム完成に伴い整備された観光施設が今夏、相次いで開業した。上流の同町では八ッ場あがつま湖と周辺を運行する観光用水陸両用バスの運行が始まり、地域振興施設も完成。下流の東吾妻町では、廃止されたJR吾妻線の線路を活用したトロッコの運行を開始するなどして、ダムに関連する地域振興策が動き始めた。(市川勘太郎)

 八月初め、長野原町のJR川原湯温泉駅近くに、地域振興施設「川原湯温泉あそびの基地NOA(ノア)」が開業。建物内にはカフェと温泉施設、敷地内にガスコンロなどを備えたバーベキュー場とキャンプ場がある。肉や野菜などの食材付きプランもあり、手ぶらで訪れても楽しめる。
 施設は国と利水の受益者となる群馬、栃木など一都五県が拠出する「利根川・荒川水源地域対策基金」を活用し、総事業費は約二十三億円。長野原町が施設を所有し、地元旅館主でつくる会社「NOA」が指定管理を務める。
 同社の代表で川原湯温泉観光協会の樋田省三会長(55)は「町の再生が動き始めた。独り勝ちではなく、NOAや温泉旅館をつないで連携していくことが重要。県内外の人が目的を持って訪れるような中心地にしたい」と意気込んでいる。

 ただ、水陸両用バス「八ッ場にゃがてん号」は七月中旬に営業運転を開始したが、現在は水位不足で当面運休している。

 東吾妻町では、二〇一四年九月に付け替えで廃止されたJR吾妻線の岩島駅−長野原草津口駅間の一部を整備し活用。電車のレール上を二人でこいで進む自転車型トロッコのアトラクション「吾妻峡レールバイクアガッタン」が七月中旬、プレオープンした。
 今は渓谷コースで片道一・六キロを往復でき、所要時間約四十五分。日本最短だった長さ七・二メートルの樽沢トンネルや国名勝の吾妻峡などを観光できる。一台二千円で事前予約制。東吾妻町は来春の開業を目指し、コースを八ッ場ダム付近まで延長する整備をしている。
 トロッコを体験した神奈川県秦野市の自営業原田成人さん(50)は「トンネルに入ったり景色を眺めたりとのどかだった。線路の接ぎ目の衝撃は電車では感じられず、制限速度を示す標識も残っていて臨場感があった」と声を弾ませた。

 <八ッ場ダム> 洪水調節や水道用水の供給、発電などに対応した多目的ダム。事業費は約5320億円。1952年に国が調査を始めたが、住民の反対で計画は進まなかった。2009年の旧民主党政権下で建設費が巨額過ぎるなどとして、建設中止を表明したが、11年に撤回。政権交代後に工事が再開し今年3月に完成した。