球磨川の治水対策について、蒲島郁夫熊本県知事のインタビュー記事が地元紙に掲載されています。
記事の末尾に「現段階で川辺川ダム建設に方針転換したわけではない」との蒲島知事の言葉が紹介されていますが、治水対策の「あらゆる可能性」の中に川辺川ダムが入っており、蒲島知事は川辺川ダム推進の方向に舵を切り替えると思われます。
川辺川ダム建設を中止し、「ダムによらない治水」を掲げて10数年経過しているにもかかわらず、国と熊本県は「ダムの代替案(堤防の整備、嵩上げ、強化や河道掘削などの対策)をほとんど実施してきませんでした。その責任を問われることはないのでしょうか。
◆2020年9月4日 熊本日日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/35d566d00ee6391b932768badd1bc8fbb990482e
ー「あらゆる可能性排除せず検討」 球磨川治水で蒲島熊本県知事に聞くー
球磨川水系の氾濫などで甚大な被害をもたらした豪雨災害は4日、発生から2カ月を迎えた。蒲島郁夫熊本県知事は熊本日日新聞のインタビューで、球磨川の治水対策について、自身が白紙撤回した川辺川ダムを含め、「あらゆる可能性を排除せずに検討を進める。想定を超える豪雨に耐えられる対策を目指す」と述べた。(聞き手・野方信助、内田裕之、高宗亮輔)
-県の初動対応を振り返ってください。
「熊本地震の経験を生かして早い段階で自衛隊、消防、警察などに出動を要請した。多くの人命救助につながったと思っているが、65人が亡くなり、2人が行方不明となったことは痛恨の極みだ。道路の寸断で孤立集落が多数出たことも課題。避難所は、新型コロナウイルス対策でできる限り多くの数を確保した。今後は、被災者の住まいとなりわいの再建支援に全力を尽くしたい」
-今回の球磨川流域の浸水被害をどう捉えていますか。
「県民の安全、安心に責任を負う立場として、大変重く受け止めている。国と県、流域市町村で、戦後最大の被害となった1965年7月洪水に耐えられる治水対策を目指してきたが、今回は想定をはるかに超えるレベルだった」
-知事は2008年に川辺川ダム建設を白紙撤回されました。
「私が設けた有識者会議から河川工学の観点で川辺川ダムが『最も有力な選択肢』という見解が示され、それ以前の民意もダムを望んでいた。しかし、08年当時、多くの民意は川辺川ダムによらない治水を追求して球磨川の恵みや風景を守っていくことを選択したと私は受け止めた。政治家は決断することが仕事。仮に逆の判断だったらリコールされていたかもしれない。それが民主主義だ」
-治水対策は、川辺川ダム建設中止から10年以上経過してもまとまっていません。
「(国、県が提示した)10案は最大1兆2千億円という費用と完了まで最長200年という年数が大きな壁となり、残念ながら流域市町村の合意形成に至らなかった。ただ、八代市萩原地区の堤防強化や市房ダムの予備放流、水防資機材の整備など現時点で可能な対策は進めてきた。検討のプロセスがあったからこそ実現できた取り組みで洪水軽減効果はあったと思うが、十分ではなかった」
-7月豪雨を受けて球磨川の治水能力の検証が始まりました。
「流域の安全安心をどう確保するかという課題を突き付けられている。先日、流域市町村の総意として川辺川ダム建設を含めた抜本的な対策を求める決議も出され、とても重く受け止めている」
「検証は、ダムによらない対策はどうだったか、川辺川ダムがあった場合の効果は、といった具合にあらゆる可能性を排除せずに時間的な緊迫性を持って客観的、科学的に取り組む。県の方向性については、検証結果を踏まえてなるべく早く導き出したい。現段階で川辺川ダム建設に方針転換したわけではない」