球磨川「流域治水」検討を 九大大学院教授、豪雨検証委に意見書

 九州大の島谷幸宏教授がら7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策について、「流域全体で水害の危険性を減らす『流域治水』を検討するべきだ」とする意見書を国交省、熊本県等に提出しました。

 島谷教授のホームページには意見書が掲載されています。(以下の文字列をクリックすると、意見書のページが開きます。)

 令和2年9月9日 「令和2年7月球磨川豪雨検証委員会」事務局殿 
 九州大学工学研究院環境社会部門 教授 島谷幸宏 
 「令和2年7月球磨川豪雨検証委員会」の検証内容についての意見書

 意見書の末尾に「基本的な考え方は熊本県知事提言に記載してありますので参考にしてください。」とあります。
 「球磨川流域治水の提言」と題する考察は同ホームページに7月13日にアップされています。この提言は島谷教授ら10名の河川工学者によるものとされ、提言の末尾に「​*この提言は熊本県知事に送付させていただいたものです。」と書かれています。
 今回提出された意見書と基本的に同じ趣旨ですが、より詳しい内容です。

★島谷幸宏ホームページより 
 球磨川流域の持続的発展のための流域治水に関する提言  
 「早く流す治水から ゆっくり流す治水へ」 
 令和2年7月13日 九州大学工学研究院 教授 島谷幸宏 10名の河川研究者

 
 西日本新聞に載っている提言の要旨を見ると、〈ダム〉の項目に「貯留型ではなく流水型(穴あき)」と書かれています。
 上記の提言には、最後の「その他」の箇所に「上記対策を実施し、それでもなお洪水対策が実現できない場合には、ダムを排除するものではない。川辺川に関しては、貯留型のダムは環境への影響が大きく現実的ではない。流水型のダムを用いる場合においては、貯留型ダムよりも治水効果は小さく、かつ、環境に対して影響は小さいとはいえ環境に対する十分な配慮が必須であると認識している。」とあります。

 川辺川ダム計画については2000年代後半には一般的な貯留型ダムではなく、洪水調節が必要な時以外は川の水を流す穴あきダムに変えて建設を進めようという話がありました。

◆2020年9月10日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/676631005381215329?c=39546741839462401
ー球磨川「流域治水」検討を 九大大学院教授、豪雨検証委に意見書ー

 7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策について、九州大大学院の島谷幸宏教授(河川工学)が9日、「流域全体で水害の危険性を減らす『流域治水』を検討するべきだ」とする意見書を、国土交通省と熊本県、流域市町村でつくる球磨川豪雨検証委員会に提出した。

 流域治水は堤防やダムだけに頼らず、貯水池の整備や危険性の高い土地の利用規制などを総動員する考え方。同省が7月に公表した洪水や巨大地震に備える防災・減災総合対策にも盛り込んでいる。

 島谷教授は意見書で「検証委の検討メニューに流域治水対策が明記されていない」と指摘。豪雨時の球磨川の流量を減らすために、支流沿いの田畑などを遊水池として活用し、本流への流入量を減らすなど、流域全体で水害リスクを抑制するよう求めている。上中流域の川幅の拡幅や、甚大な被害が出た右岸の人吉市街地のかさ上げなども提言した。

 島谷教授は「流域治水は環境に優しく、持続可能な地域づくりにつながる。検証委には川辺川ダムがあった場合の効果だけでなく、幅広い治水対策を議論してほしい」と話している。

 蒲島郁夫知事は9日の定例記者会見で、島谷教授の意見書について、「検証委の結果を踏まえて治水対策の検討に入るが、意見書で示された考え方も参考にしたい」と述べた。(隅川俊彦、内田裕之)

◆2020年9月10日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/643369/
ー球磨川の流域治水「検討する」 熊本知事、7月豪雨の検証後にー

 7月豪雨で氾濫した球磨川流域の治水を巡り、熊本県の蒲島郁夫知事は9日の定例記者会見で、九州大工学研究院の島谷幸宏教授ら河川研究者11人が知事宛てに出した「流域治水」に関する提言に関し、年内をめどとする国、県、流域市町村の検証委員会の検証結果を踏まえ、具体的な治水策を立案する「次の段階」で検討する考えを示した。

 検証委にも同日出された提言は、「流域治水で水害の被害を大幅に軽減可能」とする。基本的な考え方は、河道の流下能力の向上やダム建設による「流量の制御」ではなく、本流と支流の保水・貯水能力を高める「流速の制御」。水が流れる速度を落とすことで、洪水のピーク流量を低減させる手法だ。

 流速を制御する手法として、球磨川上流部の「瀬」の復活で流れを拡散▽支流護岸の玉石化や蛇行再生▽本流・支流の合流部の遊水池化-などを挙げる。その上で「それでもなお洪水対策が実現できない場合にはダムを排除するものではない」とする。

 ただし、2008年に蒲島氏が「白紙撤回」した川辺川ダム計画のような貯留型ダムについては「環境への影響が大きく現実的ではない」と指摘。流水型(穴あき)ダムに関しても「環境に対する十分な配慮が必須」としている。

 島谷教授は西日本新聞の取材に「かつての川辺川ダム計画は途中まで進んでおり、時間的には早く実現可能だろう。だが、球磨川の治水を考える上で大切なのは清流の維持。清流を守ることが地域の持続につながる」と強調。「(流域治水はダムよりも)コストははるかに安く済む。実現までの期間は、地域の合意形成ができるかどうかで左右される」と話した。

 気候変動による異常気象にスピード感をもってどう対応するのか。住民が誇る清流をいかに守り、地域の合意形成に結びつけるのか。豪雨災害後の民意をどう把握するのか。

 記者会見で蒲島氏は「民意に反して、何が何でも決めたから続行するというのは、まさに独裁者」と述べ、年内に治水案をまとめた後、何らかの方法で「民意」を問う考えを示した。(古川努)

◆2020年9月8日 NHK熊本
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20200908/5000009945.html
ー「球磨川検証委」に意見書提出へー

 7月の記録的な豪雨で氾濫した球磨川の治水対策について、大学の研究者でつくるグループが、流域全体で水害のリスクを減らす「流域治水」という考え方を検討すべきだとする意見書を、近く国などでつくる検証委員会に提出することがわかりました。

 7月の熊本豪雨で大規模な氾濫が起きた球磨川の治水対策について、国と県それに流域の自治体でつくる検証委員会が議論を進めていて、熊本県の蒲島知事は、川辺川ダムの建設を選択肢に含める考えを示しています。

 この検証委員会に対し、河川工学が専門の九州大学の島谷幸宏教授など10人の研究者が、「気候変動で、大規模な水害が相次ぐなか、ダムや堤防といった治水は限界がきている」として、「流域治水」という考え方を検討するよう求める意見書を近く提出することがわかりました。

 「流域治水」は、川の本流を流れる水量を抑えるために、川の支流沿いにある田畑などを遊水池として活用し、流域全体で水害のリスクを減らすものです。

 また、浸水想定区域における住宅建設にも制限を設けて、1階部分を柱だけで支える構造にすることなども提案しています。

 島谷教授は「流域治水は、建設コストの負担も少なく環境にも優しい。検証委員会には、地元住民が納得できる議論をしてもらいたい」と話していました。

◆2020年9月9日 NHK熊本
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20200909/5000009958.html
ー球磨川の「流域治水」検討求めるー

 7月の記録的な豪雨で氾濫した球磨川の治水対策をめぐり、大学の研究者のグループが、流域全体で水害のリスクを減らす「流域治水」の検討を求める意見書を、9日国や県などでつくる検証委員会に提出しました。

 今回の豪雨災害で氾濫した球磨川の治水対策について、国と県それに流域自治体でつくる委員会が検証作業を進めていて、熊本県の蒲島知事は、川辺川ダムの建設を選択肢に含めた治水の在り方を検討しています。

 この検証委員会に対し、河川工学が専門の九州大学の島谷幸宏教授など10人の研究者グループが、「ダムや堤防といった治水は限界がきている」などとして、「流域治水」の検討を求める意見書を9日メールで提出しました。

 「流域治水」は、川の本流の水量を抑えるために、支流沿いの田畑などを遊水池として活用し、流域全体で水害のリスクを減らすもので、島谷教授は「流域治水は建設コストも少なく環境にも優しい。検証委員会には住民が納得できる議論をしてほしい」と話しています。

 意見書について、蒲島知事は9日の記者会見で「検証結果がまとまったあと、具体的な対策を検討する段階で役立てたい」と述べ、「流域治水」についても今後の治水対策の選択肢になりうるという考えを示しました。