ダム等の公共事業の是非に関して、首長や議員は民意を反映して政治上の見解を述べ、決定に関与することになっています。しかし、首長や議会の決定は民意と異なることがしばしばあります。ダム事業の是非について、大きな決定権を持つ首長はしばしば利権に左右されるからです。
7月の球磨川水害以来、川辺川ダム計画の復活が焦点となっている熊本県で、地元紙が球磨川流域住民の民意の重要性を指摘するコラム記事を掲載しています。関東の利根川などと違い、球磨川は流域住民の生活に溶け込んできた川です。ダム建設によって河川環境が悪化することが、流域住民の多くが川辺川ダム計画に反対した理由でした。
2008年に熊本県知事が川辺川ダム計画の白紙撤回を表明した背景には、前任の潮谷義子前知事が何度も住民討論集会を開催し、ダム事業についての情報を公開し、民意を丁寧にくみ取った経緯があります。
蒲島知事は9月9日、「11月に(国と熊本県が開催している)球磨川豪雨検証委員会による治水対策の方針が出てから民意を測る」という発言をしていますが、流域住民からは国交省主導で行われている検証委員会の検証のあり方や民意の問い方について、懸念する声があります。9月18日の県議会代表質問で「年内にできるだけ早く県としての治水の考えを示す」(テレビくまもと)ことを明らかにしています。民意を置き去りにして川辺川ダム計画を復活させるのでしょうか。
◆2020年9月18日 テレビくまもと
https://www.tku.co.jp/news/20200918%EF%BD%858/
ー球磨川治水対策 知事「年内早い時期に示す」ー
7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策について、蒲島知事は18日の県議会代表質問で「年内にできるだけ早く県としての治水の考えを示すとともに、国、県、流域市町村が連携して治水の方向性を定めていきたい」と答弁しました。知事は、球磨川の治水対策についてさまざまな意見が届いていることを明らかにし「地域の対立がない形で対策を導き出していくことが重要」と、流域の市町村や商工業、農林水産業などさまざまな団体から意見を聞く考えです。