熊本豪雨から3カ月、水害からの復興めざす球磨川流域

 7月4日の熊本豪雨から3カ月。球磨川の洪水による水害被災地では、様々な問題に直面していることを西日本新聞が伝えています。
 広範囲に浸水した人吉市では、入居申し込みに対して、仮設住宅用地の確保が追いついていないとのことです。水害リスクの低い土地が元々少ないという問題があります。

◆2020年10月3日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/650715/
ー仮設住宅用地の確保進まず 熊本・人吉市、水害の低リスク地少なくー

 7月豪雨の被災地で仮設住宅の建設や民間賃貸住宅を活用した「みなし仮設」の入居が進む中、市街地が広範囲に浸水した熊本県人吉市では、入居申し込みに対して、住宅用地の確保が追い付いていない。水害リスクの低い土地が元々少なく、建設用地の確保が難航し、多くの賃貸住宅も被災したからだ。避難所暮らしが長引く被災者からは体調不良を訴える声も上がる。

 20人が犠牲になった人吉市では家屋約2300棟が全半壊し、水害から3カ月近くたった1日現在、386人が避難所で生活している。市都市計画課によると、建設型仮設住宅への入居申し込みは約420件。一方、着工した仮設住宅は完成分も含めて11団地347戸。約70戸分の用地が確保できていないという。

 用地確保が難航する最大の理由は、水害リスクの低い土地の少なさ。7月の水害では多くの賃貸物件が浸水被害を受けた。まとまった広さがある市有地の多くが、球磨川の浸水想定区域内にある。市は駐車場や材木置き場など同区域外にある土地の地権者と交渉を進め、これまでに民有地6カ所で建設にこぎつけた。

 自宅が2階まで浸水し、避難所で暮らす男性(76)は自宅に近い第1、第2希望の仮設団地の入居者選定に漏れ「いつまでこんな生活が続くのか。もう体がきつい」と訴える。最近は自宅の片付けを終えて帰ると、入浴施設へも行かずに寝ることが多いという。

 県によると、仮設住宅を建設する7市町村のうち、用地が不足しているのは人吉市のみ。市の担当者は「今月中に建設用地を確保し、全員が年内に入居できるようにしたい」としている。(中村太郎)

◆2020年10月4日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/651015/
ー球磨川流域「復旧1-4割」 豪雨3ヵ月12自治体アンケート 再建急務ー

川辺川ダム8首長「容認」
 熊本県南部を中心に甚大な被害が出た豪雨災害から4日で3カ月。西日本新聞は、大規模氾濫が発生した球磨川流域の12首長にアンケートを行った。被害規模の違いもあり、復旧・復興の進み具合は「1~4割」と評価は分散。住まい確保や生活道路復旧、市街地再生など課題が山積する中、復興の道筋を描けず苦悩するリーダーの姿も浮かぶ。建設論議が再燃している川辺川ダムについては8市町村が「容認(条件付きを含む)」とした。

 アンケートは(1)復旧・復興の進捗(しんちょく)度(2)復旧・復興の優先課題(3)川辺川ダム建設の是非-について質問。11市町村が回答し、川辺川ダムの水没予定地がある五木村はアンケート自体に「回答を差し控える」とした。

 復旧・復興の現状は、球磨村など5町村が「1割」、大規模浸水に見舞われた人吉市など3市村は「2割」と回答した。相良村は「3割」、錦町は「4割」、芦北町は未記載だった。

 「1割」とした球磨村の松谷浩一村長は「まだ被災家屋の片付けも済んでいない状況。道路、橋、河川、インフラ復旧など多くの課題がある」と説明。ほかの市町村は、道路やインフラの仮復旧は進んでいるが「本格的復旧・復興はこれから」(内山慶治山江村長)という意見が多かった。

 復旧・復興の優先課題(複数回答)は「住まい確保」「道路の復旧」がいずれも6市町村で最多。次いで「球磨川の治水対策」(4市町村)、「農林水産業の復興」(4町村)だった。松岡隼人人吉市長は「住まい確保」「治水対策」「市街地再生」を挙げ、「(治水の)方向性が定まらないと被災住民の(住まいの)再建やまちづくりの方向性が定まらない」とした。

 川辺川ダムの是非については錦町、多良木町、湯前町、球磨村が「容認」。八代市、あさぎり町、水上村、山江村が「条件付き容認」とした。ダムの最大受益地とされる人吉市と、建設予定地の相良村は「分からない」と回答。芦北町は「日増しにダム容認論が広がりつつあるという認識は持っている」としながらも無回答だった。 (古川努、中村太郎)

◆2020年10月4日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/651009/
ー「ここで生きる」集落再生私たちで 熊本豪雨で避難 球磨川沿い住民ー

  7月の記録的豪雨で被害を受けた熊本県の球磨川中流域は、山間に集落が点在する過疎地だ。住民の多くが避難生活を続け、存続が危ぶまれる集落も少なくない。4日で被災から3カ月。自治体が復旧・復興計画の策定作業を始める中、集落再生に向けた議論を行政任せにせず、住民主体で進める動きが広がり始めている。

 3日昼、球磨川に近い球磨村神瀬(こうのせ)地区の集会施設に住民約30人が集まった。村が住民から復興に向けた要望を聞く懇談会が17日にあるのを前に、地区の意見を集約しようと、危険な斜面や降雨後に水があふれる道路を紙に書き出した。

 地区には球磨川や支流の氾濫で泥が積もった住宅が今も残る。地区の支流沿いにある139世帯のうち、現在も暮らすのは20世帯ほど。大半の住民は避難所や仮設住宅、親戚宅での生活を余儀なくされている。

 「ここを離れる人がいるのは仕方ないが、住民同士のつながりは保ち続けたい」。住民集会「こうのせ再生委員会(仮称)」の発起人の一人で、神照寺の岩崎哲秀住職(46)は危機感を語る。8月末から毎週土曜に集まり、連絡の取れない住民のリストアップや住民でできる復旧作業の確認を進めてきた。

 会議の進行役は、熊本地震(2016年)で被災した西原村の集落再生を支援してきたNPO法人「故郷復興熊本研究所」の佐々木康彦理事長(41)。「行政が示す復興施策がどんなに良くても、ただ従うだけでは納得できない部分が出てくる。住民自ら復興を考えるきっかけになれば」と話す。

 自宅1階の天井付近まで浸水し、人吉市の長女宅に身を寄せる大岩清子さん(75)は、被災当初は集落にはもう住めないと思っていた。会議に参加し、意見を交わすうちに「残り少ない人生、最期はここで過ごしたい気持ちが強くなった」という。

 神瀬地区の下流にある八代市坂本町でも「被災者の生の声を市の復興計画に反映させよう」と、住民自治協議会が8月に復興推進部会(約30人)を立ち上げた。旧小学校8校区ごとに集会を開き、被災当時の状況やこれまでの困り事、どのように復興を進めたいかなどを住民に聞き取り調査。計画策定に向けた市との9月25日の協議で住民の声を伝えた。

 部会は「くらし・コミュニティー再建」「防災」など五つの分科会があり、今後も地域再生に向けた議論を進める。森下政孝部会長(79)は「坂本を復活させるために、地域の意見を吸い上げ続けたい」と語る。

 住民の動きを行政も歓迎する。球磨村ふるさと創生課は「他地域にも広げ、住民と連携しながら地域ごとの計画を作りたい」、八代市復興推進課も「多くの住民の意見を寄せてもらうことで、より実効性のある計画ができる」と期待する。 (村田直隆、中村太郎)