川辺川ダムで「流水型ダム」へ計画変更求める声、「環境に優しい」には異論も

 7月の水害を機に再浮上している川辺川ダム計画。
 川辺川ダムについては、河川環境を破壊するとの反対意見が強いことから、これを回避するために、流水型ダム(穴あきダム)に計画変更してはどうか、という意見が出されています。
 流水型ダムは洪水調節のみを目的としたダムです。通常はダム堤の穴を通して川の水を流し、洪水時のみ貯水するため、河川環境への影響が貯水型ダムより少ないとされます。
 しかし、流水型ダムが実際に環境に与える影響は、決して小さくないと思われます。

 日本でこれまでに建設された流水型ダムは5基あります。このうち、最も古い流水型ダムは、2005年に完成した益田川ダムです。洪水調節容量が最も大きいのも益田川ダムで、675万㎥です。

 川辺川ダムはこれまでの計画では洪水調節容量が8400万㎥で、益田川ダムの12.4倍もあります。川辺川ダムをもし流水型ダムにしたらどうなるのか、わからないことが多いのです。

◆2020年10月25日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/693021528682775649?c=92619697908483575
ー「流水型」環境に優しい? 川辺川ダム、計画変更求める声 専門家、効果疑問視もー

 7月の熊本豪雨の検証委員会や球磨川の治水に関する意見聴取会で川辺川ダム建設計画が再燃する中、「流水型(穴あき)」への計画変更を求める声が一部の流域首長から上がった。「貯水型」に比べて環境に優しいとされるためだが、川辺川ダムが流水型となれば国内最大規模。専門家からは環境への負荷軽減の効果を疑問視する声や、「清流を守るためには一層の工夫が必要だ」との指摘も聞かれる。

 流水型は、普段は川底付近のダム本体に設けた穴から水が流れ、洪水(大水)時だけ水をためて調整する治水専用ダムだ。

 国内では、ことし11月に本体着工し、2026年度に完成予定の福井県の足羽川[あすわがわ]ダム(高さ約96メートル、総貯水容量約2870万トン)が最大規模になる。だが、川辺川ダムの計画は約108メートル、1億3300万トン。総貯水容量は4・6倍に及ぶ。

◇08年に比較案
 国土交通省九州地方整備局は2008年8月、蒲島郁夫知事による川辺川ダム計画の「白紙撤回」表明の直前に、流水型と貯水型の比較案を県に示したことがある。

 球磨川の「河川整備計画」の原案の策定を前に提示。完成予定は貯水型より1年早まり9年後とされ、本体工事が中心となる残事業費も100億円減の1200億円とした。洪水調節能力は貯水型と同程度で、人吉地点での洪水時の水位を同じ高さに維持する内容だった。

 ダム治水の限界を訴える新潟大名誉教授の大熊孝氏(河川工学)は、巨大な流水型では、洪水時には流入量より放流量が極端に少なくなって流れが滞り、粒の大きな土砂が堆積していくと指摘。堆積が重なれば、結局は貯水型と同じように川の水を濁らせる恐れがあるとみる。

 濁った水は光を遮り水中の光合成を弱め、球磨川の資源であるアユが食するコケの生育を阻む。さらに「穴の大きさや長さ、勾配や普段の水量により魚が行き来できなくなる恐れもある」とする。

 京都大名誉教授の今本博健氏(同)も「穴あきでも下流への土砂供給の減少は避けられず、河床の土砂が動かなくなり古いコケがそのまま残る」と危ぶむ。

◇ゲートで調節
 一方、熊本大大学院の大本照憲教授(同)は流水型でも環境への影響をさらに小さくする工夫が必要とし、ゲート操作によるダムの放流調節を提案する。

 これまでの流水型は、あけた穴を流れきれない水が自然にたまる構造だが、「ゲートで放流量を調節すれば、洪水時に土砂を押し流す力を強めることもできる」とする。実際、足羽川ダムは、国の流水型ダムでは初めて、川底付近に設けたゲートにより洪水調節できる設計だ。

 穴の位置や形も重要で「穴の位置を低くして、できるだけダム建設前の川の流れに近い状態に近づける。工夫の余地はあるはずだ」と強調する。(太路秀紀)