球磨川の決壊、溢れた水の「逆越流」が要因 国の調査委

 球磨川水害をめぐる国土交通省と熊本県による検証委員会は、川辺川ダムがあったなら球磨川の水位を下げることができたとする検証結果を発表して終了しましたが、国の調査委員会では堤防決壊の原因を探る調査が行われているようです。
 なお、以下の記事に書かれている「増水してあふれた水が再び川に戻る”逆越流”によって堤防が壊れた」事象については、球磨川水害直後に市民団体の現地調査で明らかになっています。(以下の資料2ページ参照)

〈参考資料〉清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会「2020 年 7 月 4 日球磨川洪水調査報告(第3報)」 
 

◆2020年11月4日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASNC46V3LNC4TIPE018.html
ー球磨川の決壊、溢れた水の「逆越流」が要因 国の調査委ー

 7月の記録的豪雨で熊本県南部を流れる球磨(くま)川が決壊したことについて、国土交通省九州地方整備局は4日、増水してあふれた水が再び川に戻る「逆越流」によって堤防が壊れた可能性が高いとの見解を示した。福岡市でこの日あった有識者会議(委員長=秋山寿一郎・九州工業大名誉教授)の最終会合で示された。

 国交省の調査によると、決壊は人吉市の2カ所で発生。豪雨当日、降雨で水かさが増えた球磨川の水が堤防を越え、堤防が水没。水を含んだため通常より損壊しやすい状態となった。

 その後、水位が低くなった川に水が戻る逆越流が5~6時間続いた。堤防を覆うアスファルトなどが水の勢いではがれ、徐々に堤防の浸食が進んだ可能性が高いと結論づけた。損壊した堤防をコンクリートで覆って保護する復旧工事が国交省から有識者会議に提案され、了承された。

 一方、今回の豪雨で氾濫(はんらん)した九州北部を流れる筑後川では、降雨で上昇した地下水が堤防の外側の地表に噴き出す現象が起きた。鋼板を堤防に打ち込み、水の浸透を防ぐ方法で復旧工事を進めることも決まった。(棚橋咲月)

◆2020年11月4日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/660918/
ー被害軽減へ「流域治水」 越水前提、全域で予防 熊本豪雨4カ月ー

 今年7月の熊本豪雨で球磨川の堤防が決壊、住民が犠牲になるなど各地で想定を上回る規模の水害が相次ぐ中、国土交通省は流域全体で被害軽減に取り組む「流域治水」に方針を転換、全国の1級河川で具体的な方策の協議が進んでいる。ダム建設や堤防強化といった従来の整備手法だけでは限界があるとし、河川の越水を見越して広範囲に予防策を打つ。球磨川流域でもダム建設を視野に入れた議論が始まった。

 流域治水の表明は7月6日。2015年の関東・東北豪雨による鬼怒川の堤防決壊、東日本に甚大な被害をもたらした昨年10月の台風19号など気候変動に伴う大規模災害を受け、国交省がまとめた「防災・減災プロジェクト」で明記した。国と都道府県が管理する河川における氾濫危険水位の超過は、14年からの5年間で5倍の403河川に及んでいる。

 国交省が示す流域治水のイメージは、既存の利水ダムの治水利用▽治水ダムの活用や整備▽遊水地の整備▽田んぼ、農業用クリーク(水路)の貯水面での活用▽浸水リスクが低い高台への移転-など多岐にわたる。リアルタイムでの浸水、決壊状況の把握などソフト対策も充実させる。

 一つ一つの対策は以前からあったものだが、国交省は「自治体や省庁の垣根を越えて最大の効果を図る」と狙いを説明。住民や企業も巻き込んで取り組むという。

遊水地、移転…効果的に
  1級河川の一つ、佐賀県西部を流れる六角川水系。昨年8月の記録的大雨で死者3人、浸水家屋約3千戸の被害を出した流域では、これまでにも河川近くの農地に囲いを設けて「遊水地」としてきた。前もって地価の3分の1程度を補償するのと引き換えに、水を受け入れてもらう仕組みだ。

 ただ、降雨量が想定を上回った昨年はそれだけでは不足したため、新たにクリークを活用する案を検討。かんがい用水を事前に放流することで水位を下げ、雨水をためる。武雄河川事務所(佐賀県武雄市)によると、下流ではさらに広大な遊水地整備も検討されているという。

 福岡市博多区では、御笠川沿いにある山王公園の野球場の地面を掘り下げることで、非常時には雨水をためる機能を持たせている。貯水面での田んぼの活用を都市型に応用したものと言え、それぞれの地域で地形などに応じた取り組みや検討が行われている。

 全国109の1級河川のうち、球磨川流域は最も遅い10月27日に検討をスタート。最大支流、川辺川のダム建設の是非に加え、これまで議論が重ねられてきた治水メニューをいかに効率、効果的に組み合わせるかが焦点となる。 (梅沢平)

災害激甚化 ハード偏重を転換
 国交省が打ち出した流域治水は「一滴もあふれさせない」を基本としたこれまでの姿勢をあらため、河川からの越水を「やむなし」と容認した。毎年のように列島を襲う「想定外」の豪雨によって、方向転換を余儀なくされた。

 河川整備は過去の災害を参考に「数十年に1度」の洪水に対応する方式で進められてきた。流域治水が検討課題に挙がったことは過去にもあるが、ダムや堤防など水を受け止める考え方が主流で、他省庁や自治体と足並みをそろえ、ソフト対策も合わせて行う方策は脇に置かれてきた。

 だが気候変動による災害の激甚化で、堤防の決壊やダムの緊急放流で被害が拡大。ハード偏重のほころびがあらわになった。

 「あふれる」を前提とする流域治水だが、一定のハード整備は必要との視点に立っており、ダムを否定するわけではない。今回の球磨川氾濫の検証結果でも、川辺川ダムがあったとしても浸水は防げないとの観測が示された。

 同省OBで関西を流れる淀川水系流域委員会元委員長の宮本博司氏は、ダムなどのハード整備には一定の時間も費用もかかるとし「堤防強化や住宅移転など、命を守るためにやれることから次々にやっていくべきだ」としている。 (梅沢平)

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