川辺川ダム建設、建設業界が熱視線(熊本日日新聞)

 川辺川ダム計画が蘇りつつある中、流域ではダム計画による地域、人々の心の分断が始まりつつあるとのことですが、ダム本体工事による利益を期待できるゼネコン関係者は、早くも熱い視線を向けていると地元紙が伝えています。
 川辺川ダムは事業中止が決まった2009年時点で、すでに本体工事直前まで事業が進んでいました。川辺川ダムも他のダム事業と同様、道路や砂防など様々な関連工事がありましたが、それらの多くはすでに終了しており、地元の業者が関われる仕事はあまり残されていません。

◆2020年11月18日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/701628266475865185
ー川辺川ダム建設、建設業界が熱視線ー

 「やはり川辺川ダムはできるようだ」

 報道各社が「熊本県がダム建設容認に転じた」と報じる1カ月近くも前の10月15日、大手ゼネコン関係者をざわつかせる出来事があった。自民党の古賀誠・元幹事長が、国土交通事務次官を務めた同党の佐藤信秋参院議員、村山一弥・九州地方整備局長らと球磨川流域を視察したのだ。7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水方針を決めるため、蒲島郁夫知事が流域の意見を聴き始めたのもこの日だった。

 建設や運輸の関連団体などでつくる全国道路利用者会議の会長として、被災した道路を見て回った古賀氏は、今も国交省に大きな影響力を持つとされる。その古賀氏が突然、被災地に姿を見せたことで、ダム受注の機会をうかがうゼネコン関係者の一人は「ダム建設はもはや既定路線というメッセージ」だと受け止めた。

 ダム建設計画の再浮上でゼネコン関係者が色めき立つ一方、地元の建設業界は事態を静観している。

 人吉・球磨地域の建設業者の一人は「誤解されがちだが、ダム本体の建設は受注能力のない地元業者にはうまみがない。むしろ、河床掘削や堤防整備の方が長期的に、安定的に仕事が地元へ落ちていく」と解説する。

 そのことは、ダム計画が止まる直前の2008年に国交省が示した資料からも見て取れる。当時約3400億円とされた総事業費のうち、残っていた事業の費用は4割弱。ダム本体工事が中心で、地元業者が受注できる道路などの付帯工事は、既に多くが完了していた。

 一方で、地元建設業界が、かつて強力にダム建設の旗振り役を務めたのも事実だ。

 02年12月21日午前5時すぎ。降りしきる雨の中、人吉市の人吉カルチャーパレスの中庭に地元の建設業関係者ら約千人が集まっていた。「川辺川ダムを考える住民討論集会」の会場をダム推進派で埋め尽くすのが目的。関係者からは「動員ではなく社命だ」「事前に打ち合わせもして、拍手の仕方まで練習してきた」といった内情が語られた。

 何が地元業界を突き動かしたのか。

 ゼネコンとの“すみ分け”を解説した建設業者は「われわれの業界は国に逆らえない。国交省がダム推進なら、全力で付き合うしかない」と説明。別の建設会社の幹部は「公共工事は悪だ、と声高に叫んでいた反対派への対抗意識も強かった」と振り返る。

 県建設業協会人吉支部の松村陽一郎支部長(59)は「ダムはあらゆる治水対策のうちの一つにすぎないが、ダムを除いた治水対策は考えられない。ダムがあれば洪水までの時間が稼げて、犠牲者を減らすことができたのではないか」と話している。(太路秀紀、小山智史)