「球磨川漁協、総代会廃止提案へ 30日臨時総会 ダム論議に影響か」(熊本日日新聞)

 熊本県が川辺川ダム事業の推進へ動く中で、それを法的にブレーキをかけることができるのが球磨川水系の漁業権を持つ球磨川漁協です。その球磨川漁協に「ダムの是非や補償の在り方に組合員の意見を反映する機会が減ることが懸念される」動きが出てきたと報道されています。

◆2020年11月25日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/704127194438321249?c=92619697908483575
ー球磨川漁協、総代会廃止提案へ 30日臨時総会 ダム論議に影響かー

 球磨川水系の漁業権を持つ球磨川漁協(熊本県八代市、1035人)の理事会が、組合員の代表でつくる総代会を廃止する議案を30日の臨時総会に提出することが24日、分かった。蒲島郁夫知事が川辺川に新たな流水型(穴あき)ダム建設を国に要請するなど、ダム建設の是非を巡る論議が再燃する中、総代から「総代会なしで漁業補償交渉に発展すれば、理事会へのチェックが働かなくなる」と反発する声が出ている。

 総代会は流域の各地区の代表(定員100人)で構成する。定款では、総会に代わり、事業計画や漁業権に関する議案を議決できるとされている。廃止が可決されれば、こうした議案は組合員全員が出席する総会で審議されることになる。

 理事会が臨時総会に提出する議案は、総代会の設置に関する定款の変更など。可決には出席者の3分の2の賛成が必要となる。

 同漁協の組合員はここ10年で4割減少。堀川泰注[やすつぐ]組合長は「総代会は、総代の日当など財政上の負担が大きい。総会の方が組合員の意向を反映できる」と説明。「(ダム計画が再燃する)1年前からあった構想だ」とした。

 これに対し、理事会に批判的な羽手村悦雄総代(人吉市)は「総代会は、役員が勝手なことをしないよう歯止めを掛けてきた。補償交渉の過程が不透明になる」と話している。  漁協では2017年から、理事ら役員の人事を巡り、一部総代と理事会の対立が続いている。(吉田紳一、益田大也)

◆容認、反対…20年前攻防の舞台

 球磨川漁協の理事会が廃止を提案する総代会は、川辺川ダム着工が目前に迫っていた約20年前、国が示した漁業補償案の受け入れを巡り、建設容認派と反対派が激しくせめぎ合った舞台だ。

 建設省(現国土交通省)は1998年末、ダム着工に必要な最後の法的手続きとなる漁業補償の交渉を漁協に申し入れる意向を示した。これに対し、当時の総代会は「アユ漁などにマイナスばかり」として「絶対反対」を明確に打ち出した。

 しかし、国が漁業権の強制収用をちらつかせる中、条件闘争への転換を求める声が台頭した。2000年9月の臨時総代会で、漁業補償交渉委員会の設置を賛成多数で可決。国は約16億5千万円の補償案を示し、ダム容認が大半だった理事会は受け入れを承認した。

 ただこの間、反対派が求めた臨時総会を再三拒否するなど、理事会の強引な手法に組合員の不満が高まる。01年2月の臨時総代会では約3時間に及ぶ議論の末、補償契約の締結に必要な3分の2以上の賛成に達せず、補償案は否決された。

 総代会の決定を覆そうと理事会が招集した臨時総会でも補償案は否決され、ダム建設は暗礁に乗り上げた。

 当時からダムに反対する八代市のある総代は「組合員の意見を束ねた総代が議論を重ねたことで、容認へ突き進む理事会を止める原動力になった」と振り返る。

 もし総代会が廃止されれば、ダムの是非や補償の在り方に組合員の意見を反映する機会が減ることが懸念される。(益田大也)

◆2020年11月27日 熊本日日新聞
https://www.47news.jp/localnews/prefectures/kumamoto/5540747.html
ー球磨川漁協 臨時総会を中止 総代会の廃止、提案予定ー

 球磨川漁協(熊本県八代市)は30日に予定していた臨時総会の中止を決め、26日、正組合員994人に通知文書を発送した。臨時総会では、組合員の代表でつくる総代会(定員100人)の廃止を諮る予定だった。

 同組合は「人吉市や相良村、八代市坂本町の一部地域で郵便局の遅配が発生し、事前に郵送した総会開催の案内文と書面議決書などが届くのが遅れた」と説明。「(総会は)1週間前までに日時及び場所、目的を示して行う」と規定する定款に違反する可能性があり、25日の理事会で「正組合員が適正な判断ができない」として中止を決めたという。

 球磨川水系の漁業権を持つ同組合の総代会は過去、川辺川ダム建設を巡って容認派と反対派が対立。現在は、総代会での役員選任手続きの正当性を巡って内紛が続いている。

 一方、7月豪雨後にダム建設の論議が再燃したことから、一部総代は「総代会が廃止されれば、漁業補償交渉に関する理事会へのチェック機能が働かなくなる」と懸念。堀川泰注[やすつぐ]組合長は「廃止の提案は漁協の財政や運営上の理由で、ダムとは関係ない」としている。

 次回総会の開催時期や、理事会が総代会廃止を議案とするかどうかは未定という。(隅川俊彦)

~~~~~転載終わり~~~~~

 上記の記事に関するカメラマンの村山嘉昭さんのツイートを紹介します。
 https://twitter.com/_murayama/status/1331404338527289346
 記事に「同漁協の組合員はここ10年で4割減少」とあるが、かつて球磨川漁協には総代選挙対策のため、釣りさえもしない人(建設関係者)が組合員として大量加入したことがある。本来であれば組合員になる資格がなく、加入要件も満たしていないが、ダム建設を進めたい側が組合費を肩代わり。

https://twitter.com/_murayama/status/1331417296506556416
 この記事を読んだ後、球磨川漁協の総代のひとりに電話し、記事で書かれている動きについて確認しました。組合員の減少は記事に書かれている通り。ある地区では組合員が減少し、総代=組合員というところが出ているようです。漁協は総代の人数(現状は100人)を減らす検討もしましたが、

 総代方式だと総代100人という定款は変えられず、そのため総代会廃止という案が出たとのこと。総代会が廃止された後は、組合員全員が出席する総会で議案の審議や採択され、一人ひとりが判断することになると。そしてこの動きは豪雨以前から検討されていたもので、今回の県知事表明とは別のものだと

 電話先の総代は話していました。熊日の記事で、球磨川漁協の現組合長が「総代の日当など財政上の負担が大きい」と答えていますが、総代会廃止の目的は経費削減が目的。しかし西日本新聞が昨年報じた(「球磨川漁協、続く対立 役員選任で混乱2年 求められる県の調整」 )この流れの延長線にある動きだと思います。

 川辺川に計画されたダムが流水型になったとしても、建設するためには球磨川漁協の容認が必要です。総代会が廃止されると、組合の総会で容認の是不可が審議・採択。組合員の意志が直接反映されるのは良いことだと思いますが

 以前のような数で優位に立つための〝にわか組合員〟の大量加入を禁止する策を取らなければ、以前にも増して組合内が混乱し、組合内の争いが地域にまで拡大する恐れがあります。

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 こちらは上記のツイートにある西日本新聞の記事です。

◆2019年9月23日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/545335/
ー球磨川漁協、続く対立 役員選任で混乱2年 求められる県の調整ー

 6月に選出された球磨川漁協(八代市、堀川泰注組合長)の新執行部が、スタートで、またもや足止めを食らった。今月11日に開催した総代会は、役員選任の正当性を巡り執行部と反執行部の激しいやりとりが繰り広げられ、事業報告や予算案などの審議に入れずに流会。双方から法廷闘争を求める声も上がるなど、2年近く続く混乱に収束の兆しは見られない。

 「まずは、運営をわれわれ(執行部)に任せてみて、だめだというなら不信任を求めては」。「そもそも(役員選任で)定款を守らない執行部を信じることはできない」。総代会は冒頭から紛糾した。閉会後、双方から「裁判で決着をつけるしかない」との声も漏れたが、そうなれば混乱の長期化は免れない。

 対立の根幹は、役員選任の手続きだ。執行部側は、約千人の全組合員が参加する総会での選出を、反執行部側は地区ごとの選挙で選ばれた総代会(定員100人)での選出を、それぞれ主張する。

 混乱が表面化したのは2017年10月、反執行部側の主導で開かれた臨時総代会だった。役員選出や事業運営に不正があったとして、執行部の解任を可決。新役員選出の手続きに入ることを決めた。

 これに対し、漁協を監督・指導する県農林水産部団体支援課は同年11月、「同漁協の定款の解釈上、総代会では役員の選任、解任はできない」とする見解を示した。執行部側は県の見解を根拠に業務を続行し、次回の総会で選任の正常化を図るとしていた。

 ところが、同漁協の発足以来、確認できる限り、総会が開かれたのは川辺川ダム建設の賛否が問われた01年の臨時総会1回のみ。歴代の執行部は、総代会で理事十数人を選任▽理事会が正副組合長を選任-と総会を経ずに選ばれていたため、組合員にも困惑と動揺が広がった。

 県が解釈するように定款が総会での役員選出を定めるならば、なぜ守られてこなかったのか。

 県は「06年の定款改定によって総会で選出することになったが周知徹底されていなかったようだ」と説明する。実際、07年に当時の潮谷義子知事名で出された公文書は、同漁協の役員改選要求を受けた執行部に、臨時総代会を速やかに開くよう催告。総代会に役員選任の権限があることを追認している。

 県は、当時と17年以降の対応の食い違いを「改めて、定款の条文を精査し、解釈を明確に示した」と説明するが、県による2通りの解釈の存在が、執行部と反執行部の歩み寄りを難しくしているともいえる。

 球磨川漁協で、総代会による「代議制」は、球磨・川辺川上流から河口の八代市までと活動範囲が広く県内の内水面漁協で最大規模の組織の幅広い意見を調整する役割もある。県によると、定款改定の詳しい事情は「不明」という。

 同漁協を取り巻く経営環境は、高齢化や後継者不足による組合員の減少、アユ漁獲量の低下、河川補修に伴う補償費収入の減少など年々厳しさを増している。11日の総代会では「無駄な争いはやめて、組合一丸となって頑張っていかなければ」と訴える声もあった。

 一刻も早い正常化を目指すには、県が仲介役となり対話する場を設け、もつれた糸を粘り強く解いていく姿勢が求められる。(永柄信行)