滋賀県の三日月大造知事は一昨年の知事選(二期目)の際、自民党の支援を取りつけたことをきっかけに、それまで反対していた国の大戸川ダム建設への姿勢を変え、昨年、建設容認を表明しました。
大戸川ダムは建設予定地が滋賀県にありますが、建設目的である「洪水調節」の恩恵を受けるとされるのは下流の京都府と大阪府であることから、現事業費1080億円の国負担を除く324億円の負担内訳は、大阪府186億円余り、京都府128億円余りと、滋賀県(8億円余り)よりはるかに重い負担です。
このため、三日月知事はダム建設を容認しても、大阪府と京都府の知事が容易に推進に転じることはないことを見越して方針転換したとも言われます。
しかし、国土交通省も自民党も大戸川ダムの復活を目指していることは確かです。以下の報道によれば、自民党主催の勉強会に三日月知事と京都府知事が参加したとのことです。京都府の西脇隆俊知事は国土交通審議官なども務めた元国交官僚です。
◆国土交通省近畿地方整備局大戸川ダム工事事務所ホームページ
https://www.kkr.mlit.go.jp/daido/
◆2020年11月24日 NHK滋賀放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/20201124/2060006281.html
ー大戸川ダム推進へ議員が勉強会ー
滋賀県と京都府の自民党の議員が淀川水系の治水対策について学ぶ勉強会が23日、京都市で開かれ、建設計画が凍結されている大津市の大戸川ダムについて協力して建設推進の働きかけなどを目指すことになりました。
建設計画が凍結されている大戸川ダムについて三日月知事は去年4月、「治水の効果があり必要だ」として県の方針を転換し、早期の建設を求める姿勢を示しました。
しかし、1年以上たっても計画が進んでいないことから早期建設を求める自民党の滋賀県連がダムの効果などについて共通認識を持ってもらい、建設推進を働きかけようと京都府連に呼びかけて23日、京都市内で初めての勉強会が開かれました。
勉強会には滋賀県と京都府の自民党の国会議員や県議会と府議会の議員などおよそ100人が参加したほか、滋賀県の三日月知事と京都府の西脇知事も来賓として出席しました。
勉強会は非公開で行われ、国土交通省近畿地方整備局の河川部長が大戸川ダムの経緯や治水効果などについて講演を行ったということです。
自民党の滋賀県連では今後も勉強会を重ねたうえで京都府連とも協力して建設推進の働きかけなどを目指すことになりました。
自民党滋賀県連の武村展英会長は「上流と下流の対立を乗り越えて全体の安心安全を守っていくために、共通の理解をいただいた。第一歩だと思う」と話しました。
自民党京都府連の西田昌司会長は「大戸川ダムによって下流の天ヶ瀬ダムを守ることになり、両府県民ともにプラスになるので、われわれも協力していきたい」と話しました。
また三日月知事は「西脇知事と一緒に共通課題として話ができたことについては、今後に向けて1つの前進ということになるのではないか」と話していました。
◆2020年11月24日 毎日新聞滋賀版
https://mainichi.jp/articles/20201124/ddl/k25/040/155000c
ー「今後に向け一歩前進」 大戸川ダムなど、勉強会に2知事らー
国が大津市に建設を予定し、計画が凍結されている大戸(だいど)川ダムを含む淀川水系の治水対策についての勉強会が23日、京都市内で開かれた。自民党県連・京都府連の主催で、両知事や所属議員らが出席。三日月大造知事が大戸川ダムの建設を容認する方向に昨年転換した後、両知事と両県連が集って治水対策の話をするのは初といい、三日月知事は勉強会後、「今後に向けて一歩前進になると思う」と話した。
大戸川ダムを巡っては、2008年に滋賀、京都、大阪、三重の4府県知事が建設の凍結を求める見解を発表したが、19年4月に三日月知事が建設容認方針に転換し、「時期を見極めながら、関係府県に滋賀県の立場を説明していきたい」と述べていた。
勉強会は、冒頭以外非公開で開かれた。西脇隆俊・京都府知事はあいさつで、淀川水系の河川整備に関し、有識者らによる技術検討会の開催を予定していることを明かし、「計画の進捗(しんちょく)や効果の検証、近年の気象状況も踏まえたさらなる河川整備についても、検討したい」と話した。大戸川ダム建設の賛否について、あいさつでは触れなかった。
三日月知事は勉強会後、「必要な場があれば、各府県の知事に説明する」と今後の姿勢について語り、武村展英・滋賀県連会長は「上流下流の対立を乗り越えて、全体の安心安全を守るための共通の理解・環境整備のために機会を設けた。今後も開催していきたい」と話した。【諸隈美紗稀】