農水省の大蘇ダムでまた大量の水漏れ

 大分・熊本両県に農業用水を供給する目的で建設された農林水産省の大蘇ダム(熊本県産山村)がまた大量の水漏れを起こしたとのことです。
 1979年度に事業着手した大蘇ダムは、2005年に完成したものの、試験湛水でダム湖の地盤からの水漏れが確認され、2013年度から漏水対策工事が進められてきました。総事業費は当初の130億円から720億6千万円に膨らみました。
 対策工事が終わり、今年2020年4月に供用が開始されましたが、今も漏水量が国の想定を大きく上回っていることが明らかになりました。もともと地盤がダム建設に不適だったことに加え、農水省が漏水の事実を隠し、関係自治体や農家に説明をしないために問題が一層深刻になっています。

◆2020年11月26日 NHK熊本放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20201126/5000010673.html
ー大蘇ダムでまた大量の水漏れー

 大分県竹田市などに農業用水を供給するため、国が熊本県産山村に建設した大蘇ダムで、大量の水漏れが確認されたことが、九州農政局への取材でわかりました。
 このダムをめぐっては、完成後に水漏れが発覚し、追加工事の費用の一部を地元自治体が負担したいきさつもあり、地元の関係者からは不満の声が上がっています。

 大蘇ダムは、国が熊本県産山村に建設した農業用水をためるダムで、大分県竹田市と熊本県阿蘇市、それに産山村に水を供給します。

 昭和54年に着工し、平成17年に完成しましたが、大量の水漏れが確認されたことを受けて、地元の自治体に費用の一部を負担するよう求めたうえで、追加の対策工事を行い、ことし4月から本格運用が始まりました。

 九州農政局によりますと、ことし8月に大量の水漏れが確認され、1日あたり、想定の7倍を超える1万5000トンの水漏れが続いているということです。

 九州農政局は「早急に水漏れの原因や場所を究明し、地元に説明する機会を設けたい」としています。

 一方、竹田市の首藤勝次市長は、NHKの取材に対し「いいかげんにしてというのが、正直な気持ちだ。地元農家は不安に思っており、国の責任できちんと完成させてほしい」と述べ、追加の費用負担を求められても応じない考えを強調しました。

【阿蘇市と産山村のコメント】
 大蘇ダムから水の供給を受けている阿蘇市は「完全な状態でダムを建設してもらわないと、今後の地域の営農に支障が出る可能性がある。農政局にはしっかりと調査を行ったもらい、報告の場を設けてほしい」とコメントしています。
 一方、産山村は「現段階でのコメントは控えたい」としています。

◆2020年11月26日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/704512241484006497?c=92619697908483575
ー国営大蘇ダム、再び漏水 熊本県産山村 1日1万5千トンー

 大規模な水漏れで農林水産省が対策工事を実施し、2020年4月に供用開始した国営大蘇ダム(熊本県産山村)で、地中への水の浸透量が国の想定を大きく上回っていることが25日、九州農政局への取材で分かった。11月現在の浸透量は1日当たり約1万5千トンで、想定の2千トンの7倍超となっている。

 同局は「当面は農業利水への影響はないが、稲作に多くの水を使う春まで今の状況が続き渇水が重なれば、水不足になる恐れがある」と説明している。原因については「調査中」としており、詳細はダムの水位が下がる来春以降にしか調べられないという。

 大蘇ダムは08年、ダム本体完成後の試験湛水[たんすい]で満水時に4万トン、最低水位で5千トンの浸透量があり、利水の計画量が確保できないことが判明。農林水産省と受益農家が多い大分県側が13年から7年間で計126億円を投じ、ダム湖の約3分の2をコンクリートなどで覆う対策工事を実施した。その際、「10年に一度の渇水に対応できる」として浸透量の目安を2千トンとしていた。

 19年度の試験湛水では、水がたまり始めた6、7月ごろは3万トン近く浸透していたが、満水になった9月に2千トン程度に落ち着いた。このため同局は「6、7月は渇いた山肌で水が染み込みやすかった」とみて、漏水対策工事の効果を確認していた。

 供用を開始した20年度は7月の豪雨で満水となり、8月に最大3万トン超の浸透を確認。その後の浸透量の減少幅が少なく、貯水率が約50%となった11月下旬でも依然、1万5千トンの浸透が続いている。

 国は「ダムが完成している状況に変わりない」として25日、大分県竹田市で完工式を開催したが、熊本県側の受益地の阿蘇市と産山村の首長や議員らは「国の説明が不十分」として式典を欠席した。

 同局は「地元への説明が遅れ、不信感を抱かれてしまった。今後は丁寧な説明に努める」としている。(内田裕之)

https://this.kiji.is/704552493733872737?c=92619697908483575
ー首長、農家ら〝怒りのボイコット〟 国営大蘇ダム完工式 再び漏水、直前に報告ー

 大分県竹田市で25日に開かれた国営大蘇ダム(熊本県産山村)の完工式は、熊本県側の受益地、阿蘇市と同村の首長や議員、農家ら約30人が欠席する異例の事態の中、式典が進められた。九州農政局から「想定を超える漏水」の報告が直前になったことによる、“怒りのボイコット”で、関係者からは「完工とは言えない」「安心して営農できない」と国への憤りの声が上がった。

 佐藤義興・阿蘇市長に国から報告があったのは式典前日の24日だった。佐藤市長は「地元に今後の方針を示さないままの完工式は、非常に失礼で無責任。県や産山村と連携して、地元の主張をしっかりと伝える」と語気を強めた。

 建設地の産山村に伝わったのは、さらに1日遅れの25日午前。村議会の全員協議会で式典「不参加」を決めた。市原正文村長は「もっと早く説明してほしかった。水を利用する農家が安心できるように、漏水の原因を究明して国が責任を持って対策してほしい」とあきれた様子だった。

 熊本県側の代表としてあいさつに立った木村敬副知事は、そんな地元の怒りの声を反映し、「きょうは完工式ですが、工事が終わったわけではない。最終的な漏水対策をしっかり完成させて」とくぎを刺した。

 大蘇ダムは農林水産省が1979年度に事業着手して40年超が経過。計画は何度も見直され、予定より30年以上遅れて完成し、事業費は当初の5・5倍の720億円に膨れ上がった。

 受益農家からも懸念の声が飛んだ。阿蘇市波野で夏秋トマトとアスパラガスを栽培する佐藤慎一さん(72)は「満水になったと聞いて期待していたのに、話にならない。水が必要な夏の時期に水不足にならないか心配」と困惑していた。

 一方、式典に参加した竹田市の荻柏原土地改良区でピーマンを育てる衛藤喜一さん(65)は「熊本県副知事のあいさつで、今回の漏水を知った。喜びの場だと思ったのにいいかげんにしてほしい」とばっさり。同地区のミニトマト農家の男性(67)も「同じことの繰り返しで農家の不安は尽きない。完工式は、国が一つの区切りを付けたかっただけではないか」と皮肉った。(東誉晃)

◆2020年11月26日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20201126/k00/00m/040/377000c
ー「底抜けダム」また水漏れ 改修工事後も想定の10倍、2万トン 熊本・産山村ー

 大分県竹田市と熊本県阿蘇市、産山村に農業用水を供給するため農林水産省が同村に建設した大蘇(おおそ)ダムで、最大で想定の10倍もの漏水が起きていることが九州農政局などへの取材で明らかになった。2005年にいったん完成したが漏水が判明したため改修工事を実施し、今年4月に本格的な供用が始まったばかりだった。

 農政局によると、大蘇ダムは堤防の高さ約70メートル、長さ約260メートル、総貯水量430万トン。1979年に事業着手し88年の完成を予定していたが、阿蘇火山由来の地質や想定外の亀裂などで05年にずれ込んだ。その後、試験供用中の08年に大規模な水漏れが判明したため、ダムの側面にコンクリートを吹き付けるなどの対策工事を進め昨年6月までに終了。当初約130億円だった総事業費は約720億円に膨らんだ。
 
 対策工事後の点検で異常がなかったため、今年4月から農業用水の給水を始めたが、8月から1日1万5000トン程度の水が減り続けていることが判明。漏水量は水量や気象条件によって変化し、多い日は想定(1日当たり2000トン)の10倍に相当する2万トンが漏水している。必要な量の供給はできているが、農政局の担当者は「将来的に足りなくなることも想定される。原因を調査する必要がある」としている。

 大蘇ダムからの給水に頼る受益面積は竹田市が1604ヘクタール、阿蘇市が92ヘクタール、産山村が169ヘクタールで計1865ヘクタール。全体の約9割を占める竹田市はこれまでに、ダム建設や漏水対策のため約27億6000万円を負担した。仮に大蘇ダムからの給水がなくなると、熊本県高森町にある大谷ダムからの時間を限られた給水に頼らざるを得ない状態に戻るという。竹田市の首藤勝次市長は「そもそも国の計画が甘かったのではないか。追加工事が必要になってもこれ以上の負担金は払えない」と語る。

 農家の反発も強く、竹田市荻町でピーマンなどを栽培する衛藤喜一さん(65)は「41年たつのにまた振り出しに戻ってしまった。水がたまらないダムはいらない」と憤った。【津島史人、石井尚】

◆2020年11月28日 毎日新聞大分版
https://mainichi.jp/articles/20201128/ddl/k44/040/466000c
ーダム漏水 農政局対応に批判の声 竹田市、市議会に発覚経緯説明ー

 竹田市の農地に農業用水を供給する大蘇ダム(熊本県産山村)で多量の漏水が発覚したことを受けて、市は27日、市議会に急きょ、発覚の経緯を説明した。市は九州農政局が漏水の事実を市に伝えたのはダムの完工式(25日)の前日だったことを明らかにした。

 首藤勝次市長ら市執行部が、市議会委員会室で非公開で説明会を開いた。関係者によると、九州農政局は10月26日に「昨年に比べると、若干漏水が増えている」と市に初めて説明。今月11日に調査を始めると報告があったという。

 だが、九州農政局からその後の連絡はなく、首藤市長が会長を務める「大野川上流地域維持管理協議会」が19日、九州農政局に説明を求めたところ、ようやく24日に漏水の事実を明らかにしたという。

 説明会では、市議から「欠陥工事で考えられないことだ」などと批判の声が上がった。また、首藤市長も九州農政局の不誠実な対応に「漏水と聞いて驚いた。怒り心頭だ」と述べたという。

 市議会は近く、九州農政局に農地に必要な農業用水を確保するよう要請する。佐田啓二議長は「農業用の水を確保する責任は国にある。九州農政局や農水省にしっかり対応していただきたい」と話した。【石井尚】

◆2020年11月26日 RKK熊本放送
https://news.yahoo.co.jp/articles/d06e12f090ea96578492fc09c6772b729d56719f
ー大蘇ダム 想定7倍超の漏水ー

 今年4月に供用が始まった産山村にある国営大蘇ダムで想定の7倍以上の水が地中に染み出していたことが明らかになりました。
 九州農政局によりますとこの想定を超える水漏れで稲作に水を多く使う春ごろや夏場に水不足になる恐れがあるということです。
 今月時点での水漏れの量は、1日およそ1万5000トンで想定された2000トンの7倍を超えています。

 大蘇ダムは大分県の竹田市と産山村、阿蘇市の農家に農業用水を供給する目的で2005年に本体が完成しましたが、2008年の試験ではダム湖から1日最大4万トンの水が漏れることがわかり、農地への水の供給が見通せない状態となりました。

 そのため国と大分県がおよそ126億円を追加で投じてダム湖の周りをコンクリートで覆う工事を行い去年9月の試験では1日の水漏れが2000トンに抑えられていたということです。

 九州農政局は原因は不明としていて現地調査を進めると共にダムの水位が下がる来年春以降に本格的な調査を検討しています。

◆2020年11月27日 日本経済新聞(共同通信)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66722480X21C20A1000000/
ー大蘇ダム、対策後も漏水 農業用水「不足の懸念」ー

 大分、熊本両県に農業用水を供給するための国営大蘇ダム(熊本県産山村)で漏水が続き、対策工事を終えて4月に供用を始めた後も大量に水漏れしていることが、管轄する九州農政局への取材で分かった。漏水は1日当たりの量でみると同局の想定の範囲内といい「現時点で影響はないが、多い状態が続けば農業用水が不足する懸念がある」と説明している。

 九州農政局によると、想定する漏水量は1日当たり2千~3万トン程度。これに対し秋以降は同1万5千~2万トン程度と量が多い日が続いている。山肌から地盤にしみ込んでいるとみており、水位が下がる来春以降に詳細を調べる。決壊の恐れはないとしている。

 大蘇ダムは両県の1865ヘクタールの農地に水を供給する目的で1979年度に事業に着手。2005年に貯水試験を始めた際、漏水によって必要な水量を確保できないことが判明した。国は対策の補修工事をし、計画を3回変更した。

 11月25日に完成式典があったが、熊本県阿蘇市の佐藤義興市長らは事前に漏水の連絡を受け欠席。同市は「農業関係者の落胆は大きい。もろ手を挙げて完成を喜ぶ状況ではない」と理由を説明した。九州農政局は「地元に心配をかけており、丁寧な説明に努めたい」とコメントした。〔共同〕

◆2020年11月29日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/column/syasetsu/1691562/
ー大蘇ダム漏水 農水省の説明責任は重いー

 産山村山鹿に建設された国営大蘇ダムで、2008年に続いて再び大規模な漏水が発覚した。「一度ならず二度までも-」。熊本・大分両県の受益農家は今、そんなやり切れない思いに違いない。

 漏水は8月に日量最大3万トン、11月下旬も1万5千トンあり、想定の2千トンを大幅に上回る。1979年度の事業着手から40年を過ぎてもなお、想定された機能が期待できない農業用ダムの現状は、受益農家のみならず地元負担に応じた地域にとっても、深刻な事態である。

 加えて、事業主体の農林水産省は現時点で、漏水やダムの現状について十分な説明責任を果たしているとはとても言えない。まずは一刻も早く、受益農家および地元自治体の両県と阿蘇市、産山村、竹田市に対する詳細な説明を求めたい。さらに原因究明と、抜本的な漏水対策を急ぐべきだ。

 大蘇ダムは、国営大野川上流土地改良事業の中核施設で、堤高約70メートル、堤長約262メートル、ダム貯水池の有効貯水量は389万トン。阿蘇、産山、竹田の計3市村に農業用水を供給するとされている。

 79年度にスタートした計画は途中、2度の変更による事業費増額を経て、2005年2月にいったんダムが完成。試験湛水[たんすい]に入った。ところが3年後の08年2月、九州農政局は貯水池からの水漏れが1日5千~4万トンにも達し、計画通りの水の供給ができないことを明らかにした。

 その後、国に加えて受益農家が多い大分県側の負担で、貯水池の約3分の2をコンクリートなどで覆う浸透抑制対策工事に100億円以上を支出。今年4月からようやく供用開始にこぎ着けたところだった。

 今月に入り発覚した再びの水漏れをめぐっては、1度目にも増して、情報公開に後ろ向きな農水省の姿勢が浮き彫りになった。九州農政局が熊本県と阿蘇市に説明したのは24日。産山村への説明は、大蘇ダム完工式当日の25日午前までずれ込み、竹田市の式典に出席するはずだった阿蘇市、産山村の首長ら約30人は欠席した。地元の憤りはよく理解できる。農水省の説明責任の欠如は重大だ。

 国営事業の地元負担金は、地域に利益があって初めて意味を持つものだ。大野川上流土地改良事業の費用は、当初計画では130億円だった。それが水漏れ対策を含む3度の計画変更により、現時点で720億6千万円まで膨れ上がった。このうち熊本県と阿蘇市の負担金は26億円を超える。

 一方で、人口減少や農家の高齢化もあり、受益面積は当初の2481ヘクタールから1865ヘクタールまで縮小した。もっと早く、安価な方法はなかったのか、過去40年余りの節目節目で、違う選択肢はなかったのか、との思いが残る。

 ここまで当初計画から逸脱し、今も事業完了が見込めない以上、事業自体の検証も不可欠だ。大蘇ダムの現状は、いったん動きだせば後戻りしない国営大型事業の問題点も照らし出している。

◆2020年11月30日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASNCZ4VLKNCWTPJB00F.html
ーたまらないダム 事業費膨張720億、なお漏水2万トンー

  熊本、大分両県にまたがる3市村の農業用水をまかなう国営の大蘇ダム(熊本県産山村)で、1日1・5万~2万トンの水が漏れていることが分かった。地下へ水が浸透する漏水はある程度想定されており、国側は「現時点では新たな対策は考えていない」とするが、地元側は、説明されていた漏水量は1日2千トンだったとしており、「早急に説明の場を」と反発している。

 農林水産省などによると、大蘇ダムは総貯水量430万トン。大分県竹田市、熊本県阿蘇市、産山村の農地約1900ヘクタールに農業用水を供給する。国営土地改良事業として1979年に着手され、当初は87年度の完成をめざしたが、2度の計画変更を経て2006年度に供用開始予定だった。

事業費膨張、130億円→720億円に
 04年度にダム本体が完成したが、地質の関係で計画通りに水がたまらないことが判明。大分県と竹田市も負担して、126億円をかけて対策工事を行った。事業費は当初の130億円から、対策工事も含めて720億円に膨らんだ。

 今年4月に本格供用を始めたが、九州農政局によると、ダムが満水となった7月以降、最大1日3万トンの漏水が発生。現在も約1・5万~2万トンの漏水が続いているという。ただ、昨年6~10月の試験湛水(たんすい)時も1日2千~3万トンの漏水が発生していたという。

 それでも今年4月には十分な水がたまっていたといい、「同様の気象条件なら来春も水は十分にたまる。目視の調査でもダムに異常はない。今後の浸透(漏水)量を引き続き注視していきたい」とする。

 だが、地元側は試験湛水時に万トン単位の漏水があったことは伝えられていなかったという。竹田市農林整備課の担当者は「こちらの理解では想定される(漏水の)量はあくまで1日2千トン。農水省は改めて、地元に説明してほしい」と話している。(寿柳聡)

熊本側、完工式を欠席「理解得られぬ」
 市の大野川上流推進室によると、同市内の受益面積は1604ヘクタールで、うち1116ヘクタールを荻地域が占める。主な作物は大根、白菜、トマトやピーマン、スイートコーンなど。冬場は水の使用量が少ないが、田植えが始まり需要が盛んになる春先に十分な水がたまっているのどうか、農業者から不安の声が出ているという。

 阿蘇山系からの伏流水を水源とする竹田湧水(ゆうすい)群が名水百選に選ばれるほど、豊富な水を誇る竹田市。だが河川との標高差がある地域では、水の安定供給が計画的な農業を進めるうえで長年の課題になっている。

 これまで頼ってきた大谷ダム(熊本県高森町)も、老朽化や土砂の堆積などで安定供給に不安があり、大蘇ダムへの期待は高い。推進室の担当者は「国の責任で原因の調査と対策を速やかに行ってほしい」。地元の荻柏原土地改良区は「国からの説明をうけておらず、コメントのしようがない。国の説明を待ちたい」としている。

 熊本県側の受益地である阿蘇市(受益面積92ヘクタール、受益農家74戸)と産山村(169ヘクタール、138戸)では「受益者の理解が得られない」などとして、25日に大分県竹田市であった完工式への出席を取りやめた。

 阿蘇市の担当者は「せめて早い段階で状況と国の対応を説明してもらいたかった」。佐藤義興市長は「完工式をする段階ではなく、農水省には農家の不安を払拭(ふっしょく)する対策をきちんととってほしい」と話した。

 産山村の市原正文村長は「農家が安心して水が使えるよう、責任持って対応して欲しい」と農政局側に求めたという。村議らも「完工式は工事が完了したらするもの。地元に説明もしないまま完工式をするやり方は一方的だ」と批判する。(寿柳聡、後藤たづ子)

◆2020年12月2日 毎日新聞大分版
https://mainichi.jp/articles/20201202/ddl/k44/040/378000c
ー大蘇ダム漏水 国「影響ない」 「信頼関係ない」農家ら反発ー

  竹田市などの農地に農業用水を供給する大蘇ダム(熊本県産山村)で、1日1万5000~2万トンの漏水が発覚した問題で、農水省九州農政局の横井績局長が1日、首藤勝次市長らに経緯を説明した。横井局長は漏水について農業用水の供給には影響がないと強調。一方で、受益農家は「なぜ、もっと早く漏水の事実を説明しなかったのか。もはや信頼関係がない」と反発した。【石井尚】

 横井局長らが同日、市役所を訪れた。首藤市長やダムの受益地の荻柏原土地改良区の佐藤慶一理事長(67)に加えて、市議や受益農家らが九州農政局の説明を受けた。

 大蘇ダム(総貯水量430万トン)を巡っては、今年4月からの供用開始後、8月以後に1日1万5000トン程度の漏水(想定では2000トン)があった。出席者らによると、九州農政局側は漏水の経緯を説明し、ダムの安全性には問題がないと明言。「シミュレーションでは来春の水は足りる」との予測を示したという。

 今後はダムに職員2人を常駐させ、漏水の状況を確認し、7日以降に専門家が原因分析を開始する。

 ただ、ダムの漏水問題は2005年にも発覚し、コンクリートの吹き付け工事などの対策で総事業費は当初の約130億円から約720億円に膨らんだ。地元の農家からは「水漏れの対策工事をしたのに、再び漏水している。農政局の対応が信じられない」と不満の声が上がったという。

 市長への説明後、横井局長は「地元の方に不安や懸念を抱かせてしまい申し訳ない」と謝罪した上で「対策工事の前は1日4万~5万トンが漏れていた。現状は1万5000トンなので工事の効果は出ている」と強調。「漏水は徐々に減少する。4月の水利用に足りると思う」と釈明した。

 佐藤理事長は「1日当たり1万5000トンでは、1カ月に50万トン近く水がなくなっている。追加工事で水を抜くようなことがあれば、農家は困る。しっかり情報開示していただきたい」とくぎを刺した。