川辺川にダム  国交省、当初規模維持 国内最大規模の「流水型」提案

 7月の球磨川水害を機に、熊本県の蒲島郁夫知事は川辺川ダム計画の白紙撤回を撤回し、国に環境に配慮した流水型ダムの建設を要望しました。これを受けて国土交通省は、今月18日に開いた「球磨川流域治水協議会」(第2回)において、従来の川辺川ダム計画の規模(貯水容量1億600万トン)を変えずに球磨川支流の川辺川にゲート付きの流水型ダムを建設する案を提示しました。
➡〈参考記事〉「”川辺川にゲート付き流水型ダム案”提示した国交省の球磨川流域治水協議会配布資料」

 流水型ダムは穴あきダムとも呼ばれ、ダム本体下部に川とほぼ同じ高さの放流口をつくるため、洪水時以外は川の流れを阻害することがなく、河川環境へのダメージが従来型のダムより少ないとされています。

 しかし、1億トン規模の流水型ダムは前例がなく、河川環境への影響は未知数です。また、地元紙の報道によれば、流水型として川辺川ダムを建設するためには新たなダム計画を策定しなければならず、法的な手続きも含め、「今後の検討課題」が多く、いつ建設に着手できるか予定は立っていないとのことです。
 被災した球磨川流域の住民からは、いつ完成するかわからないダム計画より、来年の出水期に備えた緊急の治水対策に早急に取り組んでほしいという、至極もっともな声があがっています。

◆2020年12月17日 NHK熊本放送局
https://www.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20201217/5000010886.html
ーダム 発電用なども治水活用検討ー

 熊本県の蒲島知事が、7月の豪雨で氾濫した球磨川流域の川辺川でのダム建設を容認したことを受け、国はかつて白紙撤回された従来のダム計画の規模を維持したうえで、より治水効果を高めるため、発電用などに確保していた容量も治水に活用する案を検討していることがわかりました。

 7月の豪雨災害を受け、熊本県の蒲島知事は先月、これまでの方針を転換し、球磨川流域の川辺川でのダム建設を国に求めました。
 これを受けて国は、蒲島知事が12年前に白紙撤回した川辺川ダム計画で、発電や農業用に確保していた容量も治水に活用する案を検討していることが、関係者への取材でわかりました。

 具体的には、従来は洪水に備えて8400万トン分の容量を空けておく一方、発電や農業に使うための水を2200万トンためておく計画でしたが、新たな案では全体の規模を維持したうえで、すべてを治水用にあてるということです。
 これにより治水のために使える容量は、およそ1.2倍になります。

 また、蒲島知事は環境に配慮するため、ふだんは水をためずに流す穴があいた構造の流水型ダムの建設を求めていますが、国は大雨の時に放水量を調節できるよう開け閉めができるゲートの設置も検討しているということです。

 国はこうした案を、18日、開かれる県などとの協議会で示すことにしています。

◆2020年12月18日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASNDL73NLNDLTIPE02L.html
ー川辺川ダム、開閉式のゲート備えた流水型に 国交省が案ー

 7月の記録的豪雨で氾濫(はんらん)した熊本県南部の球磨(くま)川の治水対策をめぐり、国土交通省九州地方整備局は18日、最大支流の川辺川に開閉式のゲートを備えた流水型ダムを整備する案を県などに示した。ゲートにより大雨時に水をためたり放流したりする機能を高めるとしている。

 蒲島郁夫熊本県知事は豪雨後、利水を含む多目的ダムとして計画された従来の川辺川ダム計画の廃止と、治水専用の流水型ダム建設を国に求めている。国交省の案では、貯水量は従来計画の1億600万トンを維持し、利水目的だった容量をすべて洪水調節用に振り替える。18日、県庁であった球磨川流域治水協議会の第2回会合で、協議会を構成する県や流域市町村などに説明した。新たな流水型ダムの具体案を国が示すのは初めて。一方、ダム案の全体像や整備スケジュールは示されなかった。

 流水型ダムは、本体下部に川とほぼ同じ高さの放流口をつくり、自然な水の流れを保つ。大雨時にはダム本体で水をせきとめて流量を減らし、洪水を防ぐ仕組み。開閉式のゲートを設置することで水量を調節しやすくするという。

 国交省が所管する流水型ダムは現在5基あるが、同規模の流水型ダムは例がない。国交省は、この日の案について「まだ決まったものではない」と説明し、ダムの位置や構造などを検討するため追加の地質調査や環境調査などが必要としている。

 流水型ダムの整備に加え、治水対策を流域全体で講じた場合の洪水防止効果について試算も示した。球磨川中流域の人吉市で、7月の豪雨時の最大流量約7400トン(毎秒)を、新たなダムで2600トン、氾濫した水をためる遊水地整備と既存ダムの改修で500トン減らし、約4300トンにすることができると説明。流域の大部分で水位は堤防の高さを超えないという。

 流域市町村長からは「あと半年すると梅雨がくる。いま取り組むべき計画をどんどん進めてほしい」(竹崎一成・芦北町長)「地質調査などのタイムスケジュールをできるだけ早く示してほしい」(松谷浩一・球磨村長)など、早期の対策を求める声が相次いだ。

 流域の首長からは更に説明を求める声も出た。従来の川辺川ダム計画でダム本体の建設予定地にあたる相良村の吉松啓一村長は「ゲートで(流水量を)コントロールするというが、まだ課題があるのではないか」と指摘。一部が水没予定地となっている五木村の木下丈二村長は「流水型ダムの全容をスピードをあげて住民に示せるよう、努力いただければ」と求めた。

 蒲島知事は協議会の後、記者団に「命を守る治水容量が高まった」と述べ、国交省の提案を評価した。

 協議会では、今回示された流水型ダム案を含む治水対策について、河川工学や都市計画の専門家らから意見を聴く会を23日にオンライン形式で開く。中長期的に取り組む「球磨川流域治水プロジェクト」として今年度中に治水対策をとりまとめる方針。(伊藤秀樹、安田桂子)

◆2020年12月18日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20201218/k00/00m/040/310000c
ー川辺川に流水型ダム建設、国が提案 熊本県知事「速やかな対応を」ー

 7月の九州豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として、国土交通省は18日、従来の川辺川ダム計画の貯水規模を維持した治水専用の流水型ダムを建設する案を、熊本県や流域の12市町村に示した。実現すれば流水型ダムとしては国内最大となる。2009年に旧民主党政権が計画を中止した後、国はダムによらない治水を検討してきたが、九州豪雨後に蒲島郁夫知事がダム容認に転じたのを受け、11年ぶりにダムによる治水に回帰した。

 18日に熊本県庁であった「球磨川流域治水協議会」の第2回会合で、国交省はダムを軸に遊水地や河川掘削などを組み合わせて氾濫を抑止する流域治水の案を提示した。蒲島知事は「必要な予算措置を含めて、速やかな対応をお願いしたい」と支持し、市町村からも異論は出なかった。国交省は今後、有識者から意見を聞くなどして具体的検討に入り、年度内に治水策を決める。

 国交省案は、貯水型の多目的ダムから水をためない流水型ダムに変える。その上で不要になる農業や発電の利水容量をすべて治水に活用することで、洪水調節容量は従来計画に比べ少なくとも約1・2倍の1億600万トンになるとした。国交省の担当者は会合で「(従来計画の容量を)最大限活用する観点で考えたもの」と説明した。国交省は豪雨後、仮に川辺川ダムがあれば人吉地区の浸水面積が6割減らせたが、球磨川の氾濫自体は防げなかったとの推計を示していた。

 国交省案ではまた、ダム本体にゲート付きの水路を設置。ゲートを開閉することで放水量を調整し、豪雨時に水をためられるようにする。国交省は流水型であれば水質を維持しやすく、魚の遡上(そじょう)など河川の連続性を確保しやすいと強調した。一方、蒲島知事が求めている環境影響評価(アセスメント)を実施するかどうかについては明言を避け、ダムの完成時期のめどや概算事業費も示さなかった。【城島勇人、平川昌範】

◆2020年12月19日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/theme/kawabegawa/id28544
ー川辺川ダム「流水型にゲート」 国交省提示、放流量を調節可能にー

 7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策に関し、国土交通省は18日、熊本県の蒲島郁夫知事が支流・川辺川への建設を要請した治水専用の流水型(穴あき)ダムについて、放流量が調節できるゲート付きとする案を県や流域12市町村でつくる流域治水協議会の第2回会合で提示した。流水型ダムは、現行の川辺川ダム(貯水容量1億600万トン)の規模を維持した場合の治水効果(試算)を示した。実現すれば国内最大となる。

 流水型ダムは、洪水時のみに水をため、平時はためない構造。本体下部の穴あき部分にゲートを取り付ければ下流への放流量を操作できる。一方、ダムの規模について同省は「建設場所を含めて検討中」と説明した。

 流水型ダム建設と合わせて県が実施を求めている環境影響評価(アセスメント)について、国交省は同協議会に「追加して必要となる環境調査や環境保全措置を検討する」と報告した。

 この日の会合では、ハード・ソフト両面の対策を総動員し、7月豪雨の最大流量(人吉地点で毎秒7900トン)に対応できる治水対策を目標とすることを確認した。目標値は、人吉地点で7千トンとした国の「河川整備基本方針」(2007年策定)を上回った。

 国交省は、7月豪雨の流量に対し、新たな対策を実施した場合の水位低減効果の試算も公表した。人吉地点(7900トン)では流水型ダムで2600トン、既存の県営市房ダムで500トンをカット。さらに市房ダムに放流口を増設し、貯水容量を増やす改良で200トン、遊水地整備で300トンを削減し、4300トンまで減らせるとした。

 河道掘削や引き堤を加えると、人吉地区の水位は概ね堤防の高さを数十センチから2メートル下回るとした。ただ、中流域の八代市坂本町付近では堤防を最大1メートル越える地点もあった。

 国交省と県はこの日提案された治水対策メニューについて、河川工学など専門家から意見を聴く場を23日に設ける。来年の梅雨時期に備えて直ちに実施する「緊急治水対策」を年明けに公表した上で、流域全体で推進する「球磨川流域治水プロジェクト」を年度内にまとめる方針。(高宗亮輔)

◆2020年12月19日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/674870/
ー熊本、球磨川治水 国内最大規模の「流水型ダム」提案ー

  7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川流域の治水策として、国土交通省九州地方整備局は18日、支流・川辺川への流水型ダム建設を含む素案を公表した。既存ダムの再開発や遊水地整備などを組み合わせた「流域治水」を実現することで、次に熊本豪雨級の雨が降った場合、大規模氾濫が発生した熊本県人吉市付近では、堤防の越水を防ぐほどの水位低減効果があるとする試算も明らかにした。

 素案は、県と流域12市町村などでつくる流域治水協議会で提示した。遊水地の整備範囲を、球磨川上流部や人吉市を流れる支流付近に設定。球磨村などの山間狭窄(きょうさく)部では河道の掘削・拡幅に加え、道路や宅地のかさ上げなどの対策を盛り込んだ。その上で、九地整は流水型ダム案の具体化に向けた地質調査や環境調査、構造の検討などに「速やかに着手する」と表明した。

 また、熊本豪雨における人吉市付近のピーク時の流量毎秒7400トンに基づき、対策の効果を試算。流水型ダムで同2600トン、県営市房ダムの再開発で同200トン、遊水地で同300トンを貯水するなどして、最下流の八代市平野部や人吉市などでは越水を防ぐほどの効果がある一方で、狭窄部の八代市坂本町や球磨村付近での氾濫は完全に防げないという。

 出席した首長からは「時間がかかる環境アセスメントをする必要があるのか」など、治水対策を急ぐよう求める意見もあった。

 九地整は次回会合で、田んぼダムやため池の利用、土地の利用制限、避難対策など河川以外の対策案を提示する。流域治水の全体計画は来年3月に策定予定。 (古川努)

周辺環境に及ぼす影響未知数
 球磨川流域の治水対策の一つである支流・川辺川へのダム計画で、国土交通省が素案で示した「流水型」は同形態としては国内最大になる。常に水をためる「貯留型」に比べて環境負荷は少ないとされるが、前例のない規模だけに周辺環境に及ぼす影響は未知数。国交省は熊本県の意向に沿い、環境影響評価(アセスメント)などの実施に前向きだが、法定通りに行う場合は最長5年近くを要することもあり、事業スケジュールを左右しそうだ。

 1999年施行のアセス法に基づけば、国交省は本体着工に必要な河川整備計画を策定する際に、環境影響を調べる必要がある。主に(1)環境面で配慮すべき事項(水質や生態系、地質など)の検討(2)調査方法の決定・実施(3)結果-を各段階で公表し、住民からも意見を募る。知事は市町村長の意向を踏まえて意見を出せるほか、環境省も内容に問題がないかチェックする。

 国交省が今回提示したダム案では、大雨時に洪水調節でたまる容量は1億600万立方メートル。国内最大の益田川ダム(島根県)など既存の流水型5基の72万~650万立方メートルを大きく超え、建設中の足羽川ダム(福井県・2820万立方メートル)の3倍以上ある。既存の流水型ダムは参考にしづらい面があり、「ダムの堤体が厚く、放流口が長いため、魚が遡上(そじょう)しにくくなる」など生態系への影響に対する専門家の懸念も根強い。

 従来の川辺川ダム計画が発表された66年にはアセス制度はなく、旧建設省は独自に環境調査した結果を2000年に公表。専用設備によって貯水池の水質を保全し、下流への影響は軽減可能-などとした。

 熊本県の蒲島郁夫知事は流水型ダムについて「客観的かつ科学的な環境への影響評価が必要」とし、アセス法に基づく調査または同等の調査を要望し、国交省も必要性を認めている。「時間を要しても厳密に法定通り行う」「法に準じながら過去の環境調査も参考にし、一部手順を省略する」などの選択肢が想定され、環境省と協議するとみられる。 (大坪拓也)

◆2020年12月19日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/news/id28576
ーダム治水「全てこれから」 国交省案提示 法的手続きなど不透明さ色濃くー

 18日に熊本県庁であった球磨川流域治水協議会で、国土交通省九州地方整備局(九地整)は、特定多目的ダム法(特ダム法)に基づき計画された現行の貯留型の川辺川ダムを、流水型に転換する想定で治水効果の試算を示した。しかし、流水型ダムを建設する場所や規模は「今後の検討課題」。法的な手続きも含め、不透明さが色濃く残った。

 九地整は、現行計画の利水容量(梅雨期)2200万トンを全量、洪水調節に活用する案まで示した。これを加えれば、新たな流水型ダムの洪水調節容量は1億600万トンと巨大なものになる。

 協議後、報道陣の質問に答えた九地整の大野良徳・河川調査官は「あくまでこんな方法もあると例示しただけ。位置や構造、いつ現行のダム計画を廃止するのかなど、全てこれから。決め打ちではない」と繰り返した。

 流水型は治水専用ダムのため、建設の根拠法は特ダム法ではなく、河川法となる。特ダム法に基づく現行の計画は、蒲島郁夫知事が11月19日の方針転換表明の中で求めたように「廃止」されることになり、法的には新たに計画する手続きが必要となる。

 建設予定地をどこにするのか、どれくらいの規模の構造物にして洪水時の水没範囲はどれくらいになるのか-。検討すべき項目は多岐にわたる。

 だが、国交省治水課によると、多目的ダムを治水専用ダムへと変更するため、根拠法を特ダム法から河川法に変えた事例は、これまでにないという。

 そのため同課は「全てを慎重に検討しなければならない」と強調する。計画策定までどのような手続きを踏み、どのくらいの時間がかかるのかは、見通せない。(太路秀紀、嶋田昇平)

◆2020年12月20日 熊本日日新聞 社説
https://kumanichi.com/opinion/syasetsu/id30101
ー流水型ダム 「緊急治水」こそ急ぎたいー

 人間は忘れやすい生き物だという。だが球磨川流域をはじめ県内に甚大な被害をもたらした7月の豪雨は、今も生々しい現実としてある。それから5カ月余りたった18日、国土交通省は熊本県や流域12市町村でつくる流域治水協議会に、蒲島郁夫知事が川辺川に建設を求めた流水型(穴あき)ダムの案を示した。国、県、12市町村の動きは、スピード感をもった対応と受け止めたい。

 一方でもう一つ、記憶しておくべきことがある。それは、同じ国、県、自治体による「ダムによらない治水」の協議が、豪雨以前の12年にわたり一向に進まなかった過去であり、現在との著しいスピード感の落差だ。現在の対応がなぜ、多くの人命が失われた後でなければならなかったのか。深く、幅広く見つめ続けたい。

 この日の流域治水協議会は、流水型ダムや県営市房ダムの貯水力増強など、ハード、ソフト事業を総動員して、7月豪雨の最大流量に対応できる治水対策を目標とすることを確認した。

 このうち川辺川につくるとされるダムは、堤体下部の水路にゲートを付け、洪水時の流量を調節する。従来計画の川辺川ダムと同じ貯水量を維持すれば、従来の農業利水容量を振り替え、洪水調節容量を1億600万トンにできるという。実現すれば国内最大の流水型ダムになる。

 半面、特定多目的ダム法に基づく従来計画から、河川法の下での治水ダムへの転換の道筋、建設予定地や工期など、具体的な見通しは示されず不透明なままだ。

 加えて気になるのは、来年にも起きるかもしれない豪雨に備えた緊急治水対策が、年明けにしか示されないことである。復興はおろか復旧さえままならない被災者にとって、完成が見えないダムより、まず来年の安心を見込める緊急治水こそ急ぐべきだろう。中長期の治水を急ぐ行政と流域住民の間に、ここでも落差と「なぜ」が生じてはいないか。

 11月にダムを含む球磨川の新治水方針を表明した蒲島知事は、その根拠を「民意」とした。しかし、新方針は今も多くの「なぜ」を抱えている。納得できる説明が尽くされ、民意が十分に共感したとは言い難い。

◆2020年12月21日 西日本新聞
https://this.kiji.is/713211098338541568?c=110564226228225532
ー熊本 球磨川流域治水協議会 堤防かさ上げなど支流対策も提示ー

 18日に熊本県庁で開かれた「球磨川流域治水協議会」の第2回会合では、7月豪雨で球磨川流域に堆積した土砂推定224万立方メートルのうち、11月末時点で14万5千立方メートルを撤去したことが報告されたほか、本流の水位上昇で支流の流れが滞ってあふれ出す「バックウオーター現象」が起きたことを踏まえ、支流の治水対策の方向性も示された。

 河道の堆積土砂を巡っては、流域市町村が豪雨災害の発生直後から撤去を強く要望。国や県は来年の出水期に備え、できる限り撤去を進めるとしている。

 国土交通省九州地方整備局によると、堆積土砂のうち国が145万立方メートル、県が79万立方メートルの撤去を担当。11月末現在、国が8万立方メートル、県が6万5千立方メートルを撤去し、計68万立方メートル(国50万立方メートル、県18万立方メートル)が着手済み。撤去分は全体の6・5%にとどまるという。

 協議会では、県が支流対策を説明。上流部については、山田川や万江川などで起きたバックウオーター現象を分析。本流との合流地点で越水したとして、堤防をかさ上げし、河道掘削などで本流の水位を下げる。球磨川本流の左岸には遊水地を検討。最大支流の川辺川には、築堤や堤防かさ上げを実施する。

 一方、川内川などがある山間狭窄(きょうさく)部の中流部では、バックウオーター現象に加えて、土砂や流木が堆積して広範囲で氾濫したことから、砂防えん堤や流木止めを整備し、遊砂地を検討するとした。

 流域の首長からは早期実施を求める意見が多く挙がった。人吉市の松岡隼人市長は「一日も早くやってほしい。次の出水期に向け不安がある」と発言。竹崎一成芦北町長も「梅雨期まであと半年。河道掘削など短期的な策を集中的にやってほしい」と話した。

 五木村の木下丈二村長は可動式ゲートを設けて洪水時の放流量を調整できる「新たな流水型ダム」を川辺川に建設する案について「全容を住民に示せるようスピードを上げてほしい」と述べ、村の振興策を求めた。

 今回提示した治水対策のメニューについて、国と県は23日、河川工学などの専門家に意見を聞く。 (綾部庸介)