相良村の遊水池計画と川漁師の記者会見など

 熊本県の相良村は、従来の川辺川ダム計画の建設予定地であり、ダム直下となります。
 この相良村では、ダム建設によって清流が大きなダメージを受けることを懸念する住民が多いということですが、このほど村内3地区の農地を「遊水地」の候補
地として提案することになったと、報道されています。
 洪水であふれた川の水を受け止める遊水池は、平野部から遠い山間に造られるダムよりはるかに治水効果が高いと言われます。球磨川の本川、支川の河床を掘削し、堤防を整備して、流域の各地にこのような遊水地を数多く設置すれば、今年7月の規模の豪雨が再来したとしても対応できるようになるのではないでしょうか。

 7月の豪雨の際、川辺川上流の雨量はさほどではなく、ダム建設予定地周辺の吊り橋は無事であったとのことです。相良村で川漁師をしている方が、川辺川ダムがあったとしても球磨川水害を防ぐことができなかったことを訴える記者会見を行いました。

 一方、かつて相良村長として川辺川ダム計画に反対した立憲民主党の矢上雅義衆院議員は、朝日新聞のインタビューにこたえて、川辺川ダムを中止した2008年以降、ダムによらない治水を追求できなかった責任は、熊本県知事だけでなく、流域市町村にもあったとの見解を示しています。
 しかし、流域市町村がダム計画に反対できないのは、「ダムに頼らずに流域治水ができることを示すと、流域市町村長としては国交省に弓を引くことになる」という内情も語っています。川辺川ダム計画は国策であり、流域市町村が抵抗しづらいのであれば国の問題として取り組まなければならないはずですが、自民党一強の時代ではどうにもならないと諦めているからなのか、「立憲民主党としては地域や地元行政の意向を尊重することになっています。今回の問題に党として介入することはない」としています。

◆2020年12月22日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/news/id34902
ー相良村が遊水地検討 農地3カ所、球磨川流域の治水策提案へー

 熊本県相良村が、村内3地区の農地を水害時に水を逃がす「遊水地」の候補地として検討していることが22日、分かった。村は、7月豪雨を受けて国と県、球磨川流域の市町村が検討を進めている流域治水策の一部として提案する予定。球磨川流域の治水策を巡り、遊水地整備への動きが具体化するのは初めて。

 蒲島郁夫知事が2008年、同村に建設を予定していた川辺川ダム計画の白紙撤回を表明して以降、国と県、流域市町村は、川辺川を含む球磨川水系でダムによらない治水策の一つとして遊水地整備を検討。17カ所が候補となったが、農地が犠牲になることへの懸念などから、1カ所も整備できていなかった。

 7月豪雨を受け、国と県、流域市町村は流水型(穴あき)ダムを含む新たな治水計画「球磨川流域治水プロジェクト」を本年度中にまとめる方針。遊水地も検討対象で、国土交通省は18日に県庁で開かれた協議会で、平常時は農地として活用する「地役権補償方式」と、地盤を掘り下げて貯水容量を確保する「掘り込み方式」を市町村長らに提示。7月豪雨の人吉地点のピーク流量毎秒7900トン(推計)のうち、遊水地で300トンを削減する試算を示した。

 相良村の候補地は、川辺川沿いの同村柳瀬の中洲地区9ヘクタール、深水の下鶴地区6ヘクタール、川辺の蜻木[へぼのき]地区11ヘクタールで、水稲やタバコを生産する田畑が大部分を占める。ダムによらない治水の候補地17カ所とは別の場所だが、同プロジェクトの遊水地整備対象地域内。

 一帯は7月豪雨の川辺川氾濫で、土砂の流入や農地の流失などの被害を受けた。過去にもたびたび浸水しており、一部の所有者から行政の買い上げなどによって治水に活用するよう求める声が村に寄せられていた。

 村は今後、遊水地の方式や合意形成の方法などについて所有者らと協議を進める。洪水調節効果などはまだ試算していないという。

 一方、国交省は「これまでのダムによらない治水の議論や土地の利用状況、洪水調節効果などを総合的に評価し、遊水地の効果的な配置を検討する」としている。(隅川俊彦、小山智史)
 

◆球磨川で川漁を営んでいる、相良村の田副雄一さんの記者会見YouTube
 https://www.youtube.com/watch?v=EJVuiyQmono&feature=youtu.be
 -川辺川 奇跡の二つの吊り橋 田副雄一さん記者会見ー

 2020年7月熊本豪雨による球磨川水害。
 国や県はもし川辺川ダムが在ったとした場合、人吉地区の浸水を6割減らす事が出来たとしているが、それが全く事実と異なってデタラメであることを、ダム建設予定地の上・下流に掛る二つの吊り橋が示している。
 被災地域相良村在住の川漁師田副雄一さんが記者会見で表明。

◆2020年12月22日 熊本朝日放送
https://www.kab.co.jp/news/?NewsData=202012221759.php&path=video/202012221759.mp4&mode=1
ー市民団体や漁師「ダムで豪雨被害は防げない」ー

 ダムがあっても豪雨被害は防げなかったと市民団体や地元の漁師が訴えました。
 川漁師の田副雄一さんが豪雨後、球磨川と川辺川で吊り橋を撮影したところ、球磨川のつり橋は流木などで大きく損壊したのに対し川辺川のつり橋は損壊していないと主張。7月豪雨では川辺川流域で被害につながるような雨は降っておらず川辺川にダムを整備しても治水効果は発揮しないのではないかと訴えました。
 また、ダム建設予定地はアユやヤマメの良好な漁場でもあり、ダム建設には反対するとしました。
 球磨川の治水対策をめぐっては国と熊本県は「流水型のダム」を含めた計画を検討していて、県は23日学識経験者から意見を聴く会を実施します。

◆2020年12月23日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASNDQ6TLZNDDTLVB004.html
ー流水型ダムに「一定の理解」 矢上雅義衆院議員ー

 【熊本】――蒲島郁夫知事は11月19日、川辺川に治水専用の流水型ダムを整備することを軸とした「緑の流域治水」を打ち出しました。2008年には相良村が建設予定地である川辺川ダム計画の「白紙撤回」を表明しています。どう受け止めましたか。

 「私も相良村長時代にダムによらない治水を求め、蒲島知事と同じ立場でした。そもそも多目的ダムとしての川辺川ダム計画は利水訴訟福岡高裁での国の逆転敗訴(03年)や電源開発の発電事業からの撤退(07年)で事実上、法的に崩壊していました」

 「蒲島知事が初当選したのは08年で、知事に責任はありません。知事がダムを止めたわけではなく、後処理をしただけ。知事がダムを止めたから洪水が起きたという批判はでたらめだ」

 「私は相良村長になる前の1997年、多目的ダムの限界が見えていたことから川辺川ダムは治水専用ダムにした方がいいと建設省に申し入れた。流水型ダムを含めた蒲島知事の苦渋の決断は、一定の理解を示せる。ただ、大きく基本方針が変わった以上は、県民から誤解を受けることがないように流水型ダムの具体的な治水効果や球磨川に与える環境影響を丁寧に検証し、情報公開に全力を尽くしてほしい」

 ――蒲島知事の「白紙撤回」以降、国や県、流域市町村はダムによらない治水の検討を続けてきましたが、抜本的な治水策を実施できませんでした。

 「知事だけの責任ではない。知事だけの努力不足ではない。理由は簡単です。ダムによらない流域治水を確立することは国土交通省を全否定することになります。ダムに頼らずに流域治水ができることを示すと、流域市町村長としては国交省に弓を引くことになる」

 「市町村長がダムによらない治水対策で知事が何もしてくれなかったと言うのは本末転倒です。責任は市町村長にもある。市町村長が本気になれば、調整池や遊水地、堤防をひくといったことができたはずです」

 ――川辺川ダム計画は民主党政権時代に計画が中止された。立憲民主党としては。

 「民主党ではダム事業の見直しというのが以前あったが、立憲民主党としては地域や地元行政の意向を尊重することになっています。今回の問題に党として介入することはない」(伊藤秀樹)

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 やがみ・まさよし 1960年、相良村出身。衆院議員(比例九州ブロック、立憲)。93年に日本新党から衆院旧熊本2区で初当選、新進党に参加し96年衆院選で再選。2001年~08年に相良村長。17年の衆院熊本4区で比例復活当選。