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川辺川流水型ダム調査費に1億8千万円 21年度政府予算案、規模・候補地を検討

 7月の球磨川水害を機に、実質的に中止されていた川辺川ダム計画が復活することになり、来年度予算に調査費が計上されることになりました。

 ダム建設事業は長期にわたり、現地調査から関連工事、本体工事と各段階を経て進められます。
 国土交通省のホームページに「ダムができるまでの流れ」の図が示されています。➡https://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/dam/gaiyou/panf/dam2007/pdf/4.pdf

 従来の川辺川ダム計画は、本体工事の直前まで進んでいましたが、洪水時だけ貯水する流水型ダムに変更されることで、ダム計画を根本から作り直さなければなりません。規模や建設地もこれから詰めていくことになるようで、ダム完成までに少なくとも10年以上かかると言われています。
 次の洪水に備えるには河床掘削など短期間で確実に治水効果が見込める対策に早急に取り掛かる必要があり、流域住民もこのことを強く求めています。

◆2020年12月22日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/theme/kawabegawa/id34259
ー川辺川流水型ダム調査費に1億8千万円 21年度政府予算案、規模・候補地を検討ー

 国土交通省は、7月熊本豪雨で氾濫した球磨川の支流・川辺川に新設する流水型ダムの調査費を盛り込んだ。2009年に民主党政権が建設中止した後も毎年確保してきた川辺川ダム事業関連費を21年度は5億5500万円とし、このうち流水型の調査に1億8千万円を充てる。

 現行計画に基づく川辺川ダム事業関連費は、建設予定地の相良村にある砂防事務所の維持管理がメインだった。同関連費は20年度当初予算から1億2300万円の増額。

 流水型ダムの調査費は、ダム本体の大きさや高さ、総貯水量といった規模や構造、建設候補地の検討に充てるほか、候補地周辺の環境調査も実施する。

 7月豪雨関連ではこのほか、球磨川流域治水の推進費などに1719億円を計上。同省や県、流域市町村でつくる球磨川流域治水協議会が本年度中にまとめる治水メニューを踏まえて事業内容を決める。協議会では、流水型ダムのほか、遊水地整備や河床掘削、川幅を広げる引堤などの案が出ている。

 道路や橋など被災したインフラ設備の復旧関係費として502億円も盛り込んだ。

 球磨川治水対策を巡っては、蒲島郁夫知事が11月、流水型ダムを柱としたハード、ソフト対策を総動員した流域治水に取り組むよう赤羽一嘉国交相に要請。これを踏まえ、同省は洪水調節が効率的にできるゲート付き流水型ダムの検討を進めている。(嶋田昇平)

◆2020年12月22日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20201222/ddp/041/040/013000c?pid=14613
ー熊本・川辺川のダム関連で5.5億円 政府予算案ー

  政府は21日、熊本県・球磨川水系の川辺川でのダム建設関連費などとして5億5500万円を2021年度予算案に計上した。ダム候補地周辺の環境調査、設計に先立つ本体規模の検討費用に充てる。国土交通省は、県の意向も踏まえ、増水時だけ水をためる「流水型ダム」とする方針で、関係自治体との調整を急ぐ。

 国交省は宅地のかさ上げ、遊水地整備などダム以外の対策を組み合わせた「流域治水」を目指しており、本年度中に対応方針を決めたい考えだ。

 流域の熊本県相良村には、土砂災害対策などを目的に国交省出先機関として「川辺川ダム砂防事務所」を置いている。この管理費などとして20年度当初では4億3200万円を計上していた。21年度の具体的な配分は今後検討する。

◆2020年12月22日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/675685/
ー川辺川ダム建設関連費5億5500万円計上 政府予算案ー

  国土交通省は21日に閣議決定した2021年度政府予算案に、熊本県・球磨川水系川辺川へのダム建設関連費5億5500万円を計上した。増水時だけ水をためる「流水型ダム」の建設が決まれば、ダム構造の検討や環境調査に着手する。

 同省は流域の熊本県相良村に出先機関「川辺川ダム砂防事務所」を置いており、近年はこの施設維持管理費などを川辺川ダム関連費として計上してきた。前年度当初予算は4億3200万円で、21年度はこれに1億2300万円を上積みする形とした。

 7月豪雨で甚大な被害が出た熊本県球磨川流域の治水対策で、熊本県の蒲島郁夫知事はこれまでの川辺川ダム建設反対の姿勢を転換。11月、赤羽一嘉国交相に川辺川への流水型ダム建設を要請した。国交省は地元との協議も踏まえ、本年度中に対応を決める。 (鶴加寿子)

◆2020年12月22日 人吉新聞
https://hitoyoshi-sharepla.com/entrance_news.php?news=4158
ー「流水型ダム」とは? 建設促進協主催勉強会ー

 球磨川流域12市町村でつくる川辺川ダム建設促進協議会(会長・森本完一錦町長)主催の勉強会が20日、錦町役場で開かれ、多良木町出身で北海道大学工学研究院の泉典洋教授を講師に迎え、注目されている「流水型ダム」について学んだ。

 同協議会は、7月豪雨の水害を受けて国と県にダムを含めた治水対策を要望。その後、蒲島郁夫知事が治水の方向性として「緑の流域治水」とともに「流水型ダム」の建設を表明。
 18日に県庁で開かれた球磨川流域治水協議会では、流水型ダムに開閉式ゲートの設置案も示されている。

 勉強会は、これまでの貯留型ダムとは違う流水型ダムについて理解を深めようと同協議会が呼び掛け、12市町村から首長、議会議員、職員、農業委員、区長など約80人が参加した。
 森本会長は治水協議会の内容を紹介しながら「各市町村では復旧復興プランを描いていると思うが、その根底にはダムができるかどうか。国、県には早急に造ってほしいと流域市町村は念願している。プラス河川の掘削、浚渫を進めなくてはならない」とあいさつ。

 泉教授が「令和2年7月豪雨災害を基に球磨川流域の治水を考える」と題し、球磨川水害の歴史、川辺川ダム建設計画、7月豪雨、検証委員会の検証、流水型ダム、流域治水について解説。
 流水型ダムについて「川床近くに洪水吐、土砂吐を設置することで貯水池内でも普通に近い川の状態が維持される」とし、国内外の事例を紹介。
 個人的見解として「堤高100㍍以上で総貯水量1億㌧以上の本格的な流水型ダムの実績がないため少々心配。再び大雨が降るかもしれないが、これから計画や設計を見直したり環境アセスをしている時間があるか」などと課題を挙げた。
 流域治水では「災害の激甚化で洪水を絶対にあふれさせないことは不可能。河道内だけでなく流域全体を使った治水、あふれることを考慮した治水に国土交通省もかじを切った。球磨川が氾濫する場所には住まないのが知恵だったが、堤防やダムが出来、あふれる場所に住み始めている」などと話した。

●「清流は守れるか」
 質疑では、尾鷹一範あさぎり町長から「反対する人との争点は」、吉松啓一相良村長から「相良村住民は生命財産は当然ながら、清流を守ってほしいと言っている。ゲートを付けるというが、人間の操作を信用しない。ない方がいいのでは」との問いに、「環境が守れるかが争点では。ダムの欠点は川の連続性を遮断することだが、流水型は魚が上っていける。ゲートが付いていた方が弾力的に運用できる」などと説明。

 このほか、人吉市議からは「堆積した土砂の撤去でどれだけ効果があるのか」「流水型ダムで清流が守れるのか一番関心がある」と質問が出され、「流水型は従来のダムと違う。環境は守れると考える」と述べた。

 森本会長は「今後は、流水型ダムの現地視察を考えたい」と話している。