八ッ場ダム運用一年、ダム観光の現状を伝える記事

 昨年3月末に完成した八ッ場ダムは、運用開始から一年が経過しました。
 水没による犠牲を補い、さらに地域を発展させる起爆剤となると宣伝されてきたダム観光の現状について、指標となる数字をまじえつつ具体的に伝える記事が上毛新聞の社会面に掲載されました。
 読売新聞も群馬版で取り上げていますので、紙面より転載します。現地の状況について、これまでより厳しい見方をしています。

 ダム観光の目玉は水陸両用バスと観光船です。水陸両用バスは車体の左右に窓がないため、春から秋の観光シーズンに運航し、冬場は観光船を運航する計画でしたが、ダム湖の水位が低く、すでに2隻用意してある観光船の運行の見通しが立っていないとのことです。読売新聞の記事によれば、観光船と桟橋の整備費用は2億5000万円、水陸両用バスは昨年3/28付の上毛新聞の記事によれば1億3000万円で、いずれも東京など水道用水の供給を受ける利根川下流1都4県が利根川荒川基金として負担しています。
写真右=観光船の発着所となる「八ッ場林ふるさと公園」より「天明泥流ミュージアム」を望む。丸岩がよく見える。

◆2021年4月2日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/284682
ー八ツ場運用1年、ダム本体上が通行可に 水陸バス人気、22万人来訪 周遊観光促進に期待ー

 八ツ場ダム(群馬県長野原町)の運用開始から1日で1年となった。建設を巡る歴史や経緯が注目された全国区の知名度を背景に、これまでに約22万人が来訪。水陸両用バスなど新たな観光資源が加わり、一大観光地に生まれ変わった。一方、コロナ禍や相次ぐ計画遅れの事業が誘客に影響している。同日はダム本体の上部通路の規制が解除され、左岸から右岸へ徒歩で通り抜けができるようになり、一体感のある周遊観光の促進に期待する声が上がっている。

 建設計画から68年の歳月をかけ、昨年3月末に完成し翌日から運用を開始。新型コロナウイルス感染症対策のためダム本体の開放は昨年7月7日に始まり、本格的な観光ができるようになった。国土交通省利根川ダム統合管理事務所によると、見学開始から今年3月末までのダム本体来訪者の自動カウントでは約22万人が訪れた。コロナ感染が落ち着き、紅葉が見頃となった秋が多かった。

 町が業者に委託して約4カ月間運行した水陸両用バスの利用客は延べ約1万4000人、乗車率は約70%だった。町の担当者は「コロナ対策で人数制限をした割には乗車率が高く人気があった」とみる。

 一方で、計画が遅れている事業もある。林地区の公園を発着点として冬を中心にダム湖を周遊する観光船(乗客32人)2隻を用意しているが、営業開始の見通しが立たっていない。今冬に航路を試験する計画だったが、ダムの水位低下が響いた。発着地点に近い道の駅「八ツ場ふるさと館」の篠原茂社長は「冬の観光に期待していたのに」と残念がる。

 水陸両用バスの発着地点として当初計画されていた吾妻川右岸の「八ツ場湖の駅丸岩」も、工事が遅れて昨年11月にようやく開業した。

 工事遅れや感染症対策で通行止めが続いたため、吾妻川右岸側の川原湯地区への往来はこれまで限られてきた。1日にダム本体上の通行規制が解除されたことで人の流れが活発になるとして、川原湯温泉協会の樋田省三会長は「ダムの両側から行き来できるようになり、本当の完成だという気持ちだ。川原湯を訪れる人も増えるだろう」と期待する。

 ダムの下流に位置する東吾妻町は、ダム工事のために線路を変えた旧JR吾妻線を使った事業「自転車型トロッコ」を昨年7~12月に実施。約3100人が利用したという。東吾妻町の担当者は「長野原町と周遊してもらえれば観光客が増える」と説明。ダム本体上から下流のダム下まで通じるエレベーターの早期開放を待ち望む。(関坂典生)

◆2021年4月3日 読売新聞群馬版
ー八ッ場ダム1年 観光船就航めど立たず 利水放流で水位低下ー

 長野原町の八ッ場ダムが、4月で本格運用から1年を迎えた。首都圏の「水がめ」として機能する一方、利水放流による水位低下でダム湖の観光船が就航できないなど、地域振興に課題も出ている。(石川祐司)

地域振興 苦戦続く
「水の供給が八ッ場の使命だから仕方ないが……」。ダム建設で水没した地区の住民が運営する「道の駅八ッ場ふるさと館」の篠原茂社長(70)は、複雑な心境を語る。

 町は観光船を集客の目玉にしようと、2億5000万円を投じて観光船2隻と桟橋を整備。同社従業員5人が小型船舶免許を取得しており、昨年12月に運航を開始する予定だった。

 しかし、昨年は雨量が少なく、夏場に下流の利水目的で放流が行われた結果、ダム湖の水位が低下し、運航開始は先送りされた。十分な水位が確保できるかは不明で、国土交通省利根川ダム統合管理事務所は「地域振興には協力したいが、利水が優先」と説明する。

 ダムの受益者となる東京や埼玉など1都4県は、水没地区への補償として、計1175億円を負担し、ダム周辺に宿泊やレジャー施設の整備など84事業を実施してきた。雇用を生み出す効果はあったが、集客は頭打ちになっている。

 3日には、1783年の浅間山噴火の被害を伝える町営「やんば天明泥流ミュージアム」も開館するが、新型コロナウイルスの影響で入場制限を予定しており、年間入館者6万人という目標の達成は難しい状況だという。

 町の財政状況が厳しい中、萩原睦男町長は「ダム建設で町外に転出した住民も多い。地元が食べていくため、各施設が連携して前に進むしかない。ここから正念場だ」と話している。

—転載終わり—

写真=地すべり地の林地区勝沼に整備された「八ッ場林ふるさと公園」は観光船の発着所になるという。湖畔のスロープは観光船をダム湖に浮かべるときに使うのだろうか。2021年4月19日撮影。