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川上ダム、本体打設完了

 一旦は中止されながら復活した川上ダムが本体打設完了と報道されています。
 淀川水系では、川上ダムの後を追って復活した大戸川ダム(滋賀県)が控えています。いずれのダムも地方版でしか取り上げられませんので、他の地域の人々には殆ど知られていませんが、大戸川ダムは国土交通省近畿地方整備局、川上ダムは独立行政法人・水資源機構と起業者は異なりますが、いずれも国の事業です。
 水資源機構の事業は本来、水資源開発を目的として計画されますが、水あまりの状況を反映して、川上ダム事業では当初は参画していた奈良市と西宮市が撤退し、残っているのはダム建設地である伊賀市の水道用水の供給のみです。
右画像=独立行政法人・水資源機構 川上ダムホームページより

 伊賀市も水余りの状況は同様で、事業からの撤退を模索しながら、できなかったという経緯があります。
 川上ダムには河川環境の破壊など、ほかにも様々な問題がありますが、本来の目的を喪失しながら強行されているという一点をとっても、大きな矛盾を孕んでいることがわかります。けれども、最近は自然をコントロールするとされるダムの力強さに惹かれるのか、建設中のダムは人気を呼んでおり、川上ダムのホームページには工事見学会の特設ページがもうけられています。
右写真=川上ダムホームページ 「工事現場見学会」より

 関連工事を転載します。

◆2021年4月21日 毎日新聞三重版
https://mainichi.jp/articles/20210421/ddl/k24/040/231000c
ー川上ダム「打設」完了 秋以降に試験湛水実施へ 23年3月の運用開始目指すー

 伊賀市青山羽根などで水資源機構が建設を進めている川上ダムで20日、水をせき止める本体(堤体(ていたい))にコンクリートを流し込む「打設(だせつ)」の完了式が、工事関係者約60人が出席してあった。2019年9月の初打設から19カ月で、本体工事はほぼ終了した。今後は、ダムを制御する管理施設や放水を知らせる警報装置などの工事を行い、22年度中に完成、23年3月の運用開始を目指す。【山中尚登】

 川上ダムは、重力式コンクリートダム。高さ84メートル、堤頂部は長さ334メートル。堤体を45万立方メートルのコンクリートで築き上げている。

 この日は、工事関係者が見守る中、最後の打設作業として4・5立方メートルのコンクリートが入ったバケットを操作台までの高さが76メートルのクレーンでつり上げ、深さ約50センチ、3メートル四方の基底部に流し込むと、水資源機構川上ダム建設所の松村貴義副所長の発声で、工事関係者全員が万歳をした。

 完了式で、川上ダム建設所の津久井正明所長は「打設を無事完了することができた。今後は、(貯水してダムに問題がないかを確かめる)試験湛水(たんすい)に向け、管理施設等の工事を進め、安全で確実な試験湛水を実施する」とあいさつした。

 ダムは完成すると、総貯水容量は約3100万立方メートル。伊賀市の水道用水として1日最大約3万900立方メートルの取水を可能にする。水資源機構は、試験湛水は秋以降になる見通しという。〔伊賀版〕

◆2021年4月21日 中日新聞
https://www.chunichi.co.jp/article/240214?rct=mie
ー川上ダム、本体部分の打設完了 伊賀南部で建設中ー

 伊賀市南部で建設中の川上ダムで二十日、ダムの堤体を形作るコンクリート打設が完了し、本体部分の工事をほぼ終えた。年内には水をためて強度を確かめる試験に入る。二〇二三年三月の完成を目指す。

 堤体は高さ八十四メートル、最上部の長さ三百三十四メートル、厚さは最大六十四メートル。一九年九月から一年七カ月をかけ、四十五万立方メートルのコンクリートを積み上げた。

 節目となるこの日は、工事関係者ら約六十人が集まった。タワークレーンを使い、巨大なバケツ(バケット)に入ったコンクリート四・五立方メートルを堤体に開いた最後の穴に流し込んだ。専用の機械で締め固め、万歳三唱をして祝った。

 今後は管理棟の設備やダム操作を制御するシステムの構築に取り組む。同ダム建設所の津久井正明所長は「地元住民や関係自治体のおかげで打設を無事完了することができた。管理に必要な整備を進め、安全で確実な試験を迎えたい」とあいさつした。

 ダムは独立行政法人「水資源機構」が市の新規利水や流域の洪水調節を目的に建設。総貯水容量は三千百万立方メートルで、総工費は千百八十億円。(河野晴気)