流域治水関連法、参議院で可決・成立

 流域治水関連法が昨日(4月28日)、参院本会議で可決、成立しました。この流域治水関連法が実際にどこまで有効に機能する法律になるのかはまだわかりま
せん。
 流域治水の推進において重視されるべきは計画策定への流域住民の参画であり、流域住民の合意ですが、成立した法律を見ると、流域住民の参画がはっきりしません。八ッ場ダムをはじめとする巨大ダムの建設は、河川環境の悪化、ダムの不要性などにより、流域住民の賛同を得にくくなっています。このため、流域住民を計画策定に参画させていては、ダム事業を推し進めることができません。しかし、これではいつになっても「流域治水」は絵に描いた餅にすぎません。

 流域治水関連法案の内容は、下記の国土交通省のホームページに掲載されています。 
 https://www.mlit.go.jp/river/kasen/ryuiki_hoan/20210202.html

 関連記事を転載します。

◆2021年4月28日 日本経済新聞
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA274BS0X20C21A4000000/
 ー浸水防止区域を創設、住宅移転を促す 関連法成立ー

 大規模な水災にハード・ソフト一体で備えるための流域治水関連法が28日の参院本会議で可決、成立した。浸水の危険が高い地区を対象にした浸水被害防止区域を創設し、住宅や高齢者施設などの開発を制限する。安全な地区への移転も促し、災害に遭っても被害を軽減できるようにする。

 河川法など9つの改正法が年内に施行する。気候変動の影響などで豪雨や洪水による被害が大きくなっていることを受け、堤防などのハード整備だけでなく、まちづくりや住民移転などを組み合わせて被害を軽減する「流域治水」を進める。

 ソフト面では、都道府県が数十年に1度の豪雨を想定した浸水被害防止区域を新たに指定できるようにする。住宅や高齢者施設などの建築を許可制とし、安全基準を満たさない開発を抑える。集団移転を促す対象にも加え、安全な地区に居住者を誘導する。

 氾濫が増える中小河川対策も強化し、管理する自治体に浸水想定区域の指定を義務づける。これまでは水害の危険があるのに住民に周知されていないケースがあった。

 ハード対策では堤防などに加え、河川流域で雨水をためる土地や貯留施設などの整備を加速する。こうした施設の固定資産税を軽減したり、補助金を活用したりする。

◆2021年4月28日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20210428/k00/00m/040/271000c
ー「流域治水」関連法が成立 河川沿いを「貯留機能保全区域」にー

  自治体や企業、住民が協働して河川の流域全体で治水の実効性を高める流域治水関連法が28日、参院本会議で可決、成立した。浸水被害の危険がある地区の開発規制や避難対策が柱。今年11月までに順次施行する。

 気候変動で降雨量が増加し、従来の堤防やダムで対応しきれない水害が多発していることから、河川法など関係する法律9本を一括で改正して抜本的な対策を講じる。河川の氾濫をできるだけ防ぎ、被害を最小限に抑えるなどの方策を充実させる。豪雨で氾濫するリスクが高い河川流域で貯水機能を持つ場所を整備し、住宅や福祉施設の建築を許可制とするなどの対策を進める。

 貯水対策では、農地など河川沿いの低地を「貯留機能保全区域」に指定。盛り土などの開発行為は事前の届け出を義務づける。氾濫が起きやすい河川の周辺地域に住宅や高齢者福祉施設などを建てる際は許可制とし、都道府県などが居室に浸水深以上の高さがあるかや洪水で倒壊しない強度かを確認する。

 高齢者福祉施設で適切な避難計画が策定され、訓練が行われているかを市区町村が確認し、施設管理者に助言、勧告することができる。民間ビルの地下に貯水施設を整備した場合に固定資産税を減免する規定も設けた。現在は大規模河川について市区町村が作成しているハザードマップを中小河川にも拡大する。国土交通省は2025年度までに1万7000の河川で作成することを目指す。【岩崎邦宏】

 ◇台風19号で氾濫免れた鶴見川の流域治水
 2019年の台風19号では100人超が死亡し、多くの河川が氾濫して被害が出た。だが、東京都町田市から横浜市鶴見区の東京湾に流れる1級河川の鶴見川流域は氾濫を免れた。背景には、関係者が流域治水の実現に向けて準備を重ねたことがある。

 国土交通省京浜河川事務所によると、鶴見川は全長42・5キロ、流域人口は約200万人。かつては流域で堤防の決壊が度々起こり、1958年の狩野川台風の際は約2万戸超が浸水した。被害を教訓に、国や地元自治体は堤防を整備し、遊水地の設置や水はけの良い緑地の保全を進めた。

 台風19号の際は、鶴見川に隣接する多目的遊水地(横浜市港北区)に約94万立方メートルの水が流れ、川の水位を約30センチ下げる効果があった。この遊水地は最大390万立方メートルの水をためられる。国交省幹部は「遊水地がなければ氾濫危険水位を超えていた恐れがある」と指摘する。流域にはこのほか、商業施設の地下やテニスコートに雨水をためる調整池が約5000カ所あり、300万立方メートル超の水がためられる。

 熊本県立大の島谷幸宏特別教授(河川工学)は「河川に水を集めないよう、特に都市部ではあらゆる場所に小さな貯水施設を分散して造る必要がある。国は河川流域の全員が参加する治水の実現に向けた方策を考えるべきだ」と指摘する。【岩崎邦宏】

◆2021年4月28日 中日新聞
https://www.chunichi.co.jp/article/244877
ー浸水危険地での建築に許可制 「流域治水」関連法成立ー

 まち全体で水害を防ぐ「流域治水」関連法が二十八日、参院本会議で可決、成立した。浸水被害の危険が著しく高いエリアは許可なく住宅建築などができないようにする。ハザードマップ(避難地図)を大きな川だけでなく中小河川でも作成し、リスクを事前に周知。雨水を一時的にためる川沿いの低地を保全する仕組みも設ける。一部を除き十月末までに施行する。
 気候変動でダムや堤防の能力を超える大雨が降るようになり、大規模な浸水被害が多発。河川法など九本の関係法律を一括で改正、開発規制や避難対策などを総動員、被害を最小限に抑えるまちづくりを目指す。
 建築許可制とするのは、川幅が狭いなど氾濫が起きやすい河川の周辺。都道府県知事が区域指定し、住宅や病院、高齢者・障害者向け施設は、居室の高さや強度を確認した上で許可する。最近の豪雨は住宅で多くの死者が出ており、浸水や倒壊のリスクを減らす。
 川沿いの水田などに雨水をためれば河川への流入量を減らせるため、指定エリアの開発行為は届け出制にする。民間ビルの地下に雨水貯留施設を設ける場合、費用を補助したり、税制面で優遇したりする。

◆2021年4月30日 信濃毎日新聞
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021043000156
ー〈社説〉流域治水法成立 住民の理解が欠かせないー

  ダムや堤防だけではなく、まち全体で水害を防ぐことを目的にした「流域治水」関連法が参院本会議で可決、成立した。

 被害が起きやすい地域の住宅や病院などの建設を許可制にするほか、川沿いの低地を保全する仕組みをつくる。高齢者施設の避難体制も自治体がチェックしていく。

 県内に大きな被害をもたらした2019年10月の台風19号災害など、気候変動でダムや堤防の能力を超える大雨が降るケースが目に見えて増加している。

 既存の治水対策は限界にきている。上下流に関係なく、流域全体で川への流出量を抑制することが欠かせない。洪水に備え、被害を最小限にする方策も必要である。

 流域治水の必要性は、数十年前から指摘されていた。それなのに、国や自治体は被害が顕在化するまでダムや堤防に頼った治水を続け、真剣に取り組んでこなかった。被害拡大に伴い、ようやく実現した政策の大転換である。

 ただし、流域治水を進めるには課題が少なくない。

 県内では田中康夫元知事の「脱ダム」宣言後に、ダムが計画されていた流域ごとに、自治体や住民が対策を議論した経緯がある。それでも前に進まなかった。

 長野市の浅川流域では、必要とされた遊水地が確保できず、雨水を各家庭でためる貯留タンクの設置の補助制度も利用がなかなか伸びなかった。住民理解を得るのが簡単ではないからだ。

 今回の関連法では、氾濫しやすい河川の周辺地域を知事が指定し、住宅などの新築時に居室の高さや強度をチェックする。浸水被害軽減に役立つ低地の水田などは開発を届け出制にする。対象地区では、住民の負担が増え、経済行為も自由にできなくなる。

 台風19号災害を受け、国や県が遊水地整備を進めている千曲川流域では、優良な農地を失うことに抵抗感を示す地権者が少なくないという。地権者が100人以上となる計画地もあり、多くは今後の見通しが立っていない。

 必要なことは、流域の住民や事業者、自治体が一体となって治水に取り組む環境をつくることだ。従来政策の限界を説明し、住民の財産と命を守るために何が必要なのか、自治体は丁寧に説明し、住民合意を得なければならない。

 住民負担を資金面や税制面で軽減する対策も考えていく必要がある。遊水地の整備では、地権者が納得できる補償や代替地の確保も欠かせない。