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佐世保市水道の給水量、渇水年との比較からわかる石木ダムの不要性

 長崎県川棚町では、治水利水の両面で必要性がない石木ダムの建設を阻止するために、ダム予定地の住民13世帯の闘いが続いています。
 石木ダムは佐世保市の水道用水の供給(利水)と川棚川の洪水調節(治水)を目的として、半世紀以上前に計画された事業です。このほど、水源開発問題全国連絡会(水源連)共同代表の嶋津暉之さんが利水に関する最新資料(2020年度のデータ)を入手し、分析・検討した結果をネット上に公開しました。
 以下の分析結果を見ると、利水面における石木ダムの不要性は水需要の減少という時代状況により、ますます顕著になっています。ここでは「利水」のみが取り上げられていますが、石木ダムは治水効果が低く、川棚川の洪水調節という点でも不要です。

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★水源開発問題全国連絡会ホームページより
 http://suigenren.jp/news/2021/04/27/14562/

 図1は佐世保市水道(佐世保地区)の一日最大給水量の実績と市の予測です。実績は2000年代に入ってから減り続け、最近20年間で3割近く減り、2020年度は71927㎥/日になりました。しかし、市予測では一日最大給水量が106549㎥/日まで増えることになっています。架空予測であることは明白です。

 給水量の減少が続いてきたことにより、最近20年間で最大の渇水年「2007年度」と2020年度の毎日の給水量を比較すると、図2の通り、2020年度は2007年度をかなり下回っています。2007年度は10年に1回程度の渇水年とされていますが、その程度の渇水が再来しても特段の対応は必要ありません。

 過去最大の渇水年とされているのが1994年度です。西日本で最大の渇水年でした。その1994年度と2020年度を比較したのが図3です。1994年度の水道給水量は月単位の数字しか残っていないので、月平均値の比較になります。1994年度の最も厳しい渇水月でも2020年度の給水量はほぼ同程度です。
 1994年度渇水は市の対応がお粗末で、長時間の断水が行われましたが、今ならば、給水量が大きく減少していますので、断水になることはありません。多少の減圧給水で十分に対応できると思われます。

 最近は給水量の年間変動が小さくなっています。かつては見られた季節変動がかなり小さくなっているのです。
 図4の通り、2020年度は一日平均給水量66134㎥/日に対して、一日最大給水量は71927㎥/日で、最大/平均は1.09にとどまっています。しかし、佐世保市の給水量の予測では最大/平均が1.25です。これが将来の一日最大給水量予測値をひどく大きくする予測テクニックの一つになっています。

 佐世保市水道の保有水源を正しく評価すれば、日量10万㎥以上ありますので、給水量の最近の動向を見れば、石木ダムの新規水源が不要であることがわかります。