八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム参画で国認可 藤岡市に安定水利権

 群馬県藤岡市は、水道用水の約4割を地下水、約6割を市内を流れる利根川水系の神流川から取水しています。
 神流川には1968年に下久保ダム(旧鬼石町、現藤岡市、右写真=下久保ダム貯池))が建設されましたが、当時の藤岡市は地下水で足りていましたので、下久保ダム事業には参画しませんでした。その後、人口増加などで地下水だけでは賄えなくなった藤岡市は、神流川から取水できるよう国に申請しました。国は1980年、当時まだ、八ッ場ダムの水没住民がダム建設を受け入れていなかったにもかかわらず、藤岡市が八ッ場ダム事業に参画することを条件に、神流川から取水する権利を暫定水利権として認めました。藤岡市はこの暫定水利権を安定水利権に格上げしてもらうために、1986年に告示された八ッ場ダム建設事業に参画しなければなりませんでした。

★藤岡市ホームページ 「第1編 水道水源開発等整備費補助金事業評価概要 」より

 八ッ場ダム建設事業における藤岡市の負担割合は、事業費全体の0.5%と定められています。利根川水系で矢木沢ダムに次ぐ貯水容量をもつ下久保ダム(移転321戸)は、事業費が202億円でしたが、ダム建設以外の関連事業が肥大化した八ッ場ダムの事業費は5320億円にも上りました。(東京都水道局ホームページ「東京の水道水源」ー主なダム・貯水池の工期・費用等より)
 八ッ場ダムの事業費は1986年の当初計画でも2110億円と、下久保ダムの10倍以上でしたが、その後、事業費が増額されるたびに藤岡市の負担額も膨らみ、これまでに藤岡市は約32億円を負担してきたということです。

 藤岡市は安定水利権の認可申請を今年2月4日に済ませました。
 ➡「藤岡市が安定水利権 八ッ場使用権 都と水源振り替え」(2021年3月6日 上毛新聞)

 今朝の上毛新聞によれば、国交大臣が5月27日に藤岡市の安定水利権を認可したことを同省の地元事務所がようやく昨日31日に市に連絡してきたとのことです。

 藤岡市は同じ利根川水系でも吾妻川に建設された八ッ場ダムに参画しましたが、従来通り神流川から取水します。このため、「下久保ダムの使用権を持つ東京都と「水源振り替え」を行うということです。
 「水源振り替え」といっても、机上の手続きにすぎません。むろん東京都には、下久保ダムのある神流川も、八ッ場ダムが建設された吾妻川も流れていません。これらの河川が合流する利根川や、利根川から分流する江戸川、武蔵水路でつながっている荒川の下流の水が利用されるのです。

 以下の記事によれば、水源振り替えを行っても、藤岡市は八ッ場ダムの維持管理費を負担し続けるとのことです。維持管理費の負担割合も事業費と同様、全体の0.5%です。
 
◆2021年6月1日 上毛新聞
ー藤岡市に安定水利権 神流川 八ッ場参画で国認可ー

 八ッ場ダム(長野原町)建設事業への参画により取得を目指していた神流川の安定水利権について、藤岡市は31日、国の認可が下りたことを明らかにした。認可は27日付。市は水道用水の約6割を神流川から取水しているが、暫定水利権しか保有していなかった。
 新井雅博市長は「市民の生活に直結する懸案事項が解決し、ほっとしている」と話した。

 市によると、31日に国土交通省高崎河川国道事務所から連絡があった。安定水利権の確保により、1~3年ごとに行っていた水利権更新が10年ごとになる。取水量はこれまでの1日最大2万1600万立方㍍から変わらない。

 市は将来的な水道用水を地下水のみで賄えると判断し、神流川での下久保ダム建設計画に参加せず、安定水利権を取得しなかった経緯がある。その後、人口の増加により水資源の不足が懸念されたため、1985年に八ッ場ダム建設事業に参画することを決め、同ダム完成後に、下久保ダムの使用権を持つ東京都と「水源振り替え」を行うことで、神流川の安定水利権確保を目指していた。

 市がこれまでに支出した八ッ場ダム建設費負担金は総額約32億円に上る。同ダムの使用権は残り、今後も維持管理費は負担する。(後藤遼平)