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石木ダム住民、長崎県の話し合い申し入れに、「工事の中断」が条件と回答 

 住民の協力を得られない石木ダム事業は、これまでに工期を5回延長しました。当初の完成予定は1979年度でしたが、現在の予定年度は2025年度です。しかし、それも実現不可能であることは明らかです。石木ダムに反対する13世帯の住民は、2019年に長崎県が土地の権利を法律上強制的に奪った後も、立ち退く意思はありません。
 長崎県は膠着した状況を打開すべく、5月21日に住民と知事との対話に向けた事前協議を申し入れ、住民は期限の6月4日に回答を中村知事に直接送付しました。報道によれば、住民らは長崎県が進めている県道の付け替え工事の中断が協議の前提条件であると回答したとのことです。
 長崎県の中村法道知事は2019年9月に住民らと対面しましたが、一方的にダム事業を推進したい旨を述べるのみで、事業者と住民との溝がさらに深まっただけで終わりました。その後も長崎県は、住民の工事現場での座り込みによる抵抗を力でねじ伏せようとするかのように、ダム関連の県道付け替え工事を強引に進めてきました。長崎県の市民団体によれば、住民と支援者の皆さんは毎日8時から18時まで現場で座り込んでおられるそうです。

 関連記事を転載します。
 

◆2021年6月5日 長崎新聞
https://nordot.app/773721424026484736?c=174761113988793844
ー石木ダム建設事前協議 反対住民が回答送付ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、水没予定地の反対住民13世帯でつくる「石木ダム絶対反対同盟」は4日、対話に向けた事前協議を提案した県の文書に対し、中村法道知事宛てで回答を送付した。内容は明らかにしていない。
 県は、中村知事が住民と対話するための条件面を詰める事前協議を6月上旬に設けたい考え。その趣旨の文書を5月21日付で13世帯に送付した。住民は事前協議に応じるかを検討していた。
 県は、4日までに県石木ダム建設事務所に回答するように求めていたが、住民は工事の進め方に強い不信感があり、中村知事に直接送ったという。

◆2021年6月7日 長崎新聞
https://nordot.app/774446696736718848
ー長崎県の対話申し入れ 反対住民「工事中断して話し合いできる環境を」ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、県が水没予定地の反対住民13世帯に対話に向けた事前協議を申し入れた文書に対し、住民側の回答内容が6日、分かった。県への強い不信感を表明した上で、関連工事の中断を求め「穏やかな環境で話し合いに臨みたい」としている。
 回答文書は中村法道知事宛て。「現場では工事の強行が常態化し、夜間や早朝の工事でトラブルも発生している」と指摘。県が事前協議を申し入れた後も、新たな箇所での工事や重機の搬入など「話し合いを呼び掛けているとは思えない行動をとってきた」と批判し、「知事が本当に話し合いを望むなら、工事を即時中断して話し合いできる環境を作って」と呼び掛けた。事前協議に応じるかの言及はなく、工事の中断を前提条件としているとみられる。
 県は5月21日付で、知事と住民の対話に向け条件面を詰める事前協議を6月上旬に設けたいとする文書を13世帯に送付した。住民は、県が回答期限に指定した4日に、知事宛ての回答文書を郵送。7日にも県庁に届くとみられる。
 知事と住民の対話は一昨年9月以来、実現していない。

◆2021年6月8日 毎日新聞長崎版
https://mainichi.jp/articles/20210608/ddl/k42/040/362000c
ー石木ダム水没予定地反対住民 「工事中断すれば応じる」 知事との事前協議提案に回答ー

 県と佐世保市が川棚町に進める石木ダムの建設計画を巡り、県は水没予定地の反対住民に対し、知事と住民の事前協議の場を設けるよう提案した。これに対し、反対住民でつくる「石木ダム建設絶対反対同盟」は7日、工事を中断するなら話し合いに応じるとする文書を送ったことを明らかにした。

 文書は「工事を中断すればいつでも話し合いに応じると県に伝えてきたのに、工事の強行が常態化し、夜間や早朝の工事も強行されている」と指摘し、「知事が本当に話し合いを望むなら、工事を即時中断して話し合いができる環境を作ってほしい」と求めている。【綿貫洋】

◆2021年6月8日 長崎新聞
https://nordot.app/774830063301115904?c=39546741839462401
ー石木ダム 住民回答「工事中断 話し合いを」 長崎県は対応を検討ー

  長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、県が水没予定地に暮らす13世帯の反対住民に対話に向けた事前協議を申し入れた文書への回答が7日、県庁に届いた。住民側は回答で「工事を即時中断して話し合いができる環境を」と求めているが、中断期間などについて具体的な言及はなく、県河川課は「工事中断について疑問点がいくつかある」として対応を検討している。

 住民側はこれまで中村法道知事との対話の条件として工事中断を求めてきた。一方、県側には「いったん工事を止めると、合意がなければ再開できないのではないか」など中断に慎重な意見もある。

 県は仮に中断する場合の期間なども含めた条件面を詰める事前協議の場を設けたいとして、5月21日付で13世帯に文書を送付。事前協議に出席する住民を5人程度選んで回答するよう申し入れた。住民側は回答で事前協議に応じるかには触れておらず、県が申し入れ後も新たな箇所での工事や重機の搬入を強行していると批判している。

 一方、佐世保市の朝長則男市長は工事中断の可否について、7日の定例記者会見で「市は県に(工事を)委任しており、県がどうするかという話。県に(意見を)求められれば検討する」と強調。「必要性の問題は法的に決着がついている。生活再建や今後の地域振興について協議するのであればいつでも出て行きたい」と述べた。

◆2021年6月9日 テレビ長崎
https://nordot.app/775200909904396288
ー石木ダム反対住民「長崎県との話し合いは工事の中断」が条件と返答ー

 東彼杵郡川棚町で進む石木ダムの関連工事をめぐり、反対する住民たちが協議の場を模索する長崎県に対し、「工事の中断」を条件とする回答を送りました。
 長崎県は5月、石木ダムの建設に反対する住民に、話し合いの実現に向け協議の場を設けるよう求める文書を送りました。
 これに対し、住民側は6月4日付けで、知事に「工事を即時中断し、話し合いのできる環境を」と返答しました。
 事前協議を申し入れた後に、長崎県が新たな場所での工事を発注し重機を搬入したとして、住民側は不信感をあらわにしています。
 長崎県は「重機は工事ではなく、あくまで地質調査のために入れた」と説明し、今後の対応を検討しています。
 中村 知事は、6月12日から始まる長崎県議会の前に協議を行いたい考えでしたが、困難な状況です。
 住民との話し合いは2019年9月以降、実現していません。

◆2021年6月8日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/751491/
ー石木ダム緊迫感増す最前線 長崎県と住民にらみ合い11年、迫る工期ー

 長崎県川棚町の県営石木ダム建設へ向けた県道付け替え工事を巡り、11年にわたる県と反対派住民のにらみ合いが危うい局面を迎えている。工期期限が今月末に迫り、県は協議を申し入れたが、住民側は7日、「工事の中断が先だ」と拒否する姿勢を文書で表明した。県は今年に入って、住民の阻止行動で中断されていた区間(約140メートル)の工事を進めるなど姿勢を強めており、現場の緊迫感は増している。

 県はこれまでに住民の反対で5度の工期延長を余儀なくされた。住民側の協議拒否に対し、県は「早急に対応を検討する」(河川課)としているが、県幹部は「業者をいつまでも張り付かせるわけにはいかない」と、6回目の延長には慎重だ。強硬手段には否定的だが、1982年には座り込む住民を強制排除したこともある。

 ダム完成後に水没する県道の付け替えは2010年3月に着工。直後に住民の阻止行動が始まり、中断と再開を繰り返してきた。今年初めの再開後は、住民が座り込む区間の一部を土のうや柵で囲い込み、住民のいない夜間や早朝に土砂の搬入を続けている。盛り土は住民側が陣取るテントの数メートル先まで迫り、住民や支援者は移動を余儀なくされた。

 一方、ダム本体着工に向け、地質調査のための作業道路整備も進む。県は5月25日、石木川に土管を並べて埋め立て、工事を本格化。住民らが現場で座り込むと、別の場所で作業を始める。住民らは作業道路現場にもテントを設け、2カ所に計約30人が交代で詰めるようになった。

 住民側は県に対し、工事の中断を協議の前提条件と伝えているが、7日も現場では重機やトラックが行き交った。「県は最初から話し合うつもりなかっちゃろ」。座り込みを続ける住民の岩下和雄さん(74)は語気を強めた。 (岩佐遼介、泉修平)