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熊本豪雨1年 川辺川の流水型ダム計画、法アセス省略はなぜ?

 川辺川ダム計画が新たな流水型ダムとして復活しようとしています。
 新しいダム計画なのですから、環境影響評価法に基づいて環境アセスを行わなければならないはずですが、環境省は国土交通省からの照会に対して「貴見のとおり」とし
て環境影響評価法に基づく環境アセスをしなくてよいとしました。

 この記事で、国交省が法アセスと同等の調査を実施するから問題なしとしていますが、単なる調査と法アセスの調査は根本から違います。法アセスの場合は調査の結果
によっては事業が進まなくなる可能性があります。

 嶋津暉之さんは(水源開発問題全国連絡会共同代表、当会運営委員)は情報公開請求により、環境省環境影響評価課の担当者に対して安易な回答を出した理由を記した起案文書を明らかにすることを求めているとのことです。

◆2021年7月5日 熊本日日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/e86685efe4ccfca9273b0ac5a009c220ae972adf
ー熊本豪雨1年 流水型ダム、環境評価へ 規模、構造これからー

 空前の被害をもたらした大洪水によって、熊本県南の球磨川流域では治水対策とインフラ復旧が大きな課題になっている。中止となった川辺川のダム計画が新たな流水型ダムとして“復活”し、ダム以外の対策も総動員する「流域治水」の取り組みがスタート。不通となった鉄路は、くま川鉄道が11月にも部分再開するのに対し、JR肥薩線は復旧の可否も不透明なままで、再建への歩みは対照的だ。

 国や県が流域治水の要と位置付ける支流・川辺川への流水型ダム建設は、ダム事業が周辺環境に与える影響を調べる「法と同等」の環境影響評価(アセスメント)が始まった。治水専用として流水型ダムを河川法上に位置付ける法手続きも始まる。ただ規模や構造はこれからで、完成時期の見通しも示されていない。

 「(従来計画の)貯留型よりも流水型ダムの方がアセスは難しい。質的に他のモデルとなるようなものにしてほしい」

 6月16日に開かれた環境アセスに意見する初の専門家会合後、九州大名誉教授の楠田哲也委員長は国土交通省にこう注文した。流水型は時間によって水位が大きく変化するためで、法と同等をうたいながら「『法アセスではないから質が低い』では通用しない」(楠田委員長)からだ。アセスは当面、従来計画と同じ場所や規模を想定して進められる。

 蒲島郁夫知事が従来の方針を転換し、流水型ダムの建設を国交省に要請したのは2020年11月。流域住民にダムへの賛否両論がある中、環境面への配慮の担保となるアセスは、蒲島知事が掲げる「命と環境の両立」の生命線とも言える。

 赤羽一嘉国交相は5月21日、法と同等の調査を実施すると表明。国交省幹部は「法アセスと呼ばないだけで事実上、同じ事をする」と強調する。一方、ダム反対派は法に基づかない調査の効力を疑問視しており、アセスを巡る両者の溝は深い。

 国交省は環境アセスを進めるのと並行して近く、球磨川の河川整備基本方針の見直しにも着手する。現在の治水の長期目標は、人吉地点のピーク流量で毎秒7千トン。7月豪雨時の試算流量の毎秒約7900トンを下回っており、治水目標のピーク流量をどの程度上げるか注目される。

 その後、球磨川では未策定の河川整備計画作りへと移り、同計画の中にダムや遊水地など具体的な洪水調節施設の場所や能力を明記する。国交省の試算では、昨年7月豪雨と同様の雨が降った場合、ダムなしでは浸水被害が発生するという。

 一方、既存のダムを生かした対策も検討されている。球磨川本流の上流にある市房ダムはかさ上げや放流設備の改造による治水能力アップを検討。本・支流にある六つの利水ダムでは、大雨の前に水位を下げる事前放流で流量カットを狙う。(太路秀紀)