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荒川水系・入間川流域、2019年東日本台風後の緊急治水対策

 2019年10月の東日本台風豪雨では、首都圏の荒川水系・入間川水系で被害がありました。入間川流域では、越辺(おっぺ)川や都幾(とき)川など計6カ所で越水により堤防が決壊し、東京のベッドタウンである東松山、川越、坂戸などで水害が発生しました。その後、ただちに「入間川流域緊急治水対策プロジェクト」が策定され、2024年度までの期間を目標として氾濫対策工事が進められてきました。

★国土交通省関東地方整備局 荒川上流河川事務所ホームページより
 「入間川流域緊急治水対策プロジェクト」
 https://www.ktr.mlit.go.jp/arajo/arajo00886.html

 荒川の上流にはいくつもの巨大ダムが建設されていますが、水害が発生した平野部では上流ダムの治水効果は期待できません。対象地域は人口が多く、早期の水害対策が必要なところでした。氾濫が起きると予算がつきやすくなるようで、国土交通省の対応が早くなりました。

 関連記事を紹介します。

◆2021年9月17日 毎日新聞埼玉版
https://mainichi.jp/articles/20210917/ddl/k11/040/083000c
ー台風19号2年、入間川流域 水害対策、多方面から 河道掘削や堤防・遊水地・高台の整備…ー

 県内で死傷者37人、7000棟以上の住宅が被災するなど大きな被害が出た2019年10月の台風19号から間もなく2年。堤防決壊によって広範囲で氾濫が発生した荒川水系入間川流域では「入間川流域緊急治水対策プロジェクト」に基づき、国土交通省などが河道内の土砂掘削や樹木伐採、堤防整備など多方面のハード対策を進めている。【坂本高志】

 台風19号で入間川流域では、越辺(おっぺ)川や都幾(とき)川など計6カ所で越水により堤防が決壊し、東松山市、川越市、坂戸市を中心に被害が及んだ。各自治体と国、県で構成する「荒川水系(埼玉県域)大規模氾濫にかかる減災対策協議会 入間川流域部会」では20年1月、同プロジェクトを策定し公表した。

 策定に向けた議論の中で、越辺川や都幾川には国直轄ダムや遊水地がなく、「これまでの河道内の対策だけでは今回と同程度の洪水に対して安全を確保することが困難」との課題が挙げられた。そのため同プロジェクトでは「地域が連携した多重防御治水」を打ち出した。具体的には、以前から実施している河道の掘削や掘削土を活用した堤防整備((1))のほか、(2)遊水地の整備(3)災害危険区域の指定や家屋移転、高台整備など土地利用や住まい方の工夫――などを組み合わせた治水対策だ。現在、24年度までを目標に、台風19号規模の洪水が発生しても堤防からあふれさせない整備を進めている。県や市町を除く国の事業費は約318億円を見込む。

 川島町釘無地区では(1)の河道掘削対策が進む。また、町内では(3)として避難場所となる高台整備の検討も進められている。東松山市のあずま町地区では(1)の堤防整備が進行中で、川越市平塚新田地区をはじめとする堤防決壊6カ所の復旧対策は20年9月までに全て完了した。

 (2)は越辺川の坂戸市に1カ所、越辺川と都幾川が合流する付近の東松山市に1カ所を計画する。いずれも地形的に水が集まりやすいエリアで、水田の周囲に堤防を築き、大雨の際に一時的に洪水を貯留させ河川の水位を下げるのが狙いだ。

 国土交通省荒川上流河川事務所の担当者は「『入間川プロジェクト』は2年前の台風を受けて取り組んでいる緊急的措置。気候変動などにより、関東地方でも前例のない大雨が降るようになっている。他の支川や荒川本川でも水害への備えも必要だ」と指摘する。

 その上で「ハード対策の整備にはどうしても一定の時間がかかる。そのため、日常的な防災知識の普及、広域避難計画の作成・運用、防災メールなどでの早期避難の情報提供などソフト面の対策強化も各自治体と連携していく」としている。