八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

群馬県、八ッ場発電所で映像展示、広告関連会社に制作委託

 昨日の地元紙の経済面に、八ッ場ダムがらみのPR記事が二つ、カラー写真を添えて掲載されていました。
 一つは群馬県が県議会で発表したもので、ダム直下の県営発電所のPRです。もう一つは、地元の酒造会社が、ダム堤の脇のリムトンネルで貯蔵した日本酒を、『八ッ場の風」として販売していることをPRした記事です。この日本酒のPR記事は繰り返しマスコミに取り上げられています。ダム堤の両側にあるリムトンネルは、周辺の亀裂をグラウチング(薬液注入)で地盤強化する作業に使われました。

〈参考記事〉「八ッ場ダムのリムトンネル貯蔵の酒、予約販売」

 一つ目の以下の記事を読むと、児童が社会科見学で訪れる施設づくりのようです。東京では小河内ダム、神奈川では宮ヶ瀬ダムというように、全国各地でダムは社会科見学の対象施設です。

 八ッ場ダムが建設された吾妻川では、昭和初期から水力発電が行われてきました。しかし、八ッ場ダムに貯留するためには、ダム直下の既存の東京電力の水力発電所は取水量を減らさなければならず、国は東京電力の損失を補うために八ッ場ダム事業から減電補償金を支払いました。現在、八ッ場ダムの下流側では、減電量を少しでも減らすために、ダムの放流水を東京電力の発電所へ運ぶ導水管を建設中です。
 群馬県営八ッ場発電所が生み出す発電量は、失われた東京電力の発電量より少ないとされますが、さらに導水管の工事費用が必要になっています。しかし、国土交通省は減電補償額を今も明らかにしていません。

 社会科見学で八ッ場発電所を訪れる児童がこうした事実を教わることはないでしょう。事実の歪曲、隠蔽は、”モリカケ桜”だけではありません。

〈参考ページ〉
「八ッ場ダムと発電」
「明電舎、八ッ場発電所竣工」

 
◆2021年10月5日 上毛新聞 (ネット記事は紙面記事の冒頭部分です。)
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/330427
ー八ツ場発電所の働きを映像投映 全国初、水車や発電機にー

 水力発電をPRしようと、県企業局は年度内にも八ツ場ダム(群馬県長野原町)直下の八ツ場発電所で、プロジェクションマッピングによる映像展示を始める。発電所内の水車や発電機、壁面に映像を投映し、発電の仕組みを学んでもらうとともに観光振興に役立てる。企業局によると、水車や発電機を活用したプロジェクションマッピングは全国初だという。
 4日の県議会産経土木常任委員会で明らかにした。

 主要設備を収めた地下3階の水車発電機室で、水車などの設備と幅20メートル、高さ8メートルの壁に5分間の映像を投映する。CG(コンピューターグラフィックス)で水や電気の流れを示し、水車で水の位置エネルギーが回転に変換され、発電機で電気に変わる過程を視覚的に伝える。

 静岡県内の広告関連会社に制作を委託し、5月に完成した。事業費は約1500万円。解説員の配置や安全対策などの準備が整い次第、一般公開する。

 発電所の概要や建設記録をまとめた10分間のビデオと説明用パネルも同時に作製した。プロジェクションマッピングを見る前にこれらで予備知識を付けてもらい、より深い学習としてもらう。

 同発電所は、4月に運転を開始した。年間発電電力量は一般家庭1万2千世帯分に相当する4200万㌔㍗で、年間10億円の売電収入を見込む。

 周辺では、自転車型トロッコや水陸両用バスなど観光資源の整備が進む。4月には、八ッ場ダムの上部と発電所のあるダム下をつなぐエレベーターの一般開放が始まった。企業局は「地方自治体と連携して観光振興につなげるとともに、小学生らの学習にも役立てたい」とした。(丸山卓郎)

◆2021年10月6日
https://www.yomiuri.co.jp/local/gunma/news/20211005-OYTNT50152/
ー水車、発電機に映像 八ッ場発電所ー

 県は今年度、長野原町の八ッ場ダムからの放流水を活用する「八ッ場発電所」の設備に、映像を投影するプロジェクションマッピングを始める。水車や発電機に投影するのは、全国的にも珍しいという。

 県企業局によると、八ッ場ダムの直下にある発電所は今年4月から稼働。100メートル以上の落差を利用して水車を回し、年間に一般家庭約1万2000世帯分の電力を発電できる。

 プロジェクションマッピングは、水力発電の仕組みを広く知ってもらうため、見学者らに披露する。雨水がダムにたまり、水車が回って電気が発生する様子、県庁から見渡す夜景などが5分ほど投影される。県企業局は「解説員の配置や安全対策を進め、観光振興にもつなげたい」としている。