「八ッ場ダム周辺施設開業1年」(上毛新聞)

 今朝の地元紙の社説が八ッ場ダム周辺の「地域振興施設」を取り上げています。
 昨年開業した「川原湯温泉あそびの基地NOA(ノア)」など3施設の昨年度の決算は、いずれも赤字であったということです。記事では赤字の原因を、コロナ禍で観光客が少なかったことと説明しており、確かにその通りなのですが、オープン時はマスコミでたびたび取り上げられ、昨年度は条件が悪いばかりではありませんでした。目新しさが薄れる来年以降、コロナ禍が収まったとしても、前途は厳しいと考える関係者が多いのではないでしょうか。

 「地域振興施設」の建設費は、ダム事業で水道用水の供給を受ける利根川流域一都四県(東京・埼玉・千葉・茨城・群馬)が負担しました。潤沢な事業費で豪華な施設が建設される一方で、施設完成後の運営は地元がすべて負担しなければならないことが当初から先行きが不安視されてきました。
 1980年代から1990年代にかけて、地元が苦渋の決断でダムを受け入れる過程で、群馬県はダム完成後、地域振興施設は一都四県が負担する「水源地域振興公社」(仮称)が運営し、水没住民を約200人雇用すると約束していました。しかし、2007年になって、約束は群馬県から反故にされ、他都県は関知していなかったという経緯があります。

 記事によれば、長野原町は修学旅行の誘致を目指しているとのことです。修学旅行と言えば宿泊施設が重要ですが、水没地からダム湖畔に移転した川原湯温泉には大規模な旅館はありません。長野原町の町外に宿泊することになるのでしょうか。

◆2021年10月7日 上毛新聞「論説」
ー八ッ場ダム周辺施設開業1年 魅力磨いて周遊促進をー

 八ッ場ダム(長野原町)建設に伴う地域振興施設が、ダム湖「八ッ場あがつま湖」周辺に相次いで開業し、約1年が経過した。多くの施設が新型コロナウイルス感染症の影響を受け、赤字となる厳しい船出となった。そんな中、ダム建設中から営業する道の駅「八ッ場ふるさと館」は黒字を確保し、コロナ下でも明暗を分けた。地域全体で周遊を促す仕組みづくりや施設それぞれの魅力向上が課題となっている。ダム完成ブーム後の安定した集客策として、町は教育旅行の誘致を掲げる。誘致活動を積極的に仕掛けてほしい。

 昨年は8月に開業した川原湯地区のアウトドア活動拠点「川原湯温泉あそびの基地NOA(ノア)」を皮切りに、10月の川原畑地区の飲食・土産店「やんば茶屋」、11月の横壁地区の飲食・土産店「八ッ場湖(みず)の駅丸岩」の3施設は、地区住民が立ち上げた企業が町の指定管理を受けて営業している。各施設の2020年度の決算が先月出そろい、通年の決算ではないが全3施設が赤字を計上した。各施設の入り込み客数は6600~1万6800人だった。

 一方、13年設立の林地区地域振興施設、道の駅「八ッ場ふるさと館」は成功事例として注目される。20年度の入り込み客数はコロナ禍で前年度16%の減少だったが、42万8千人が利用し、決算で黒字を確保した。ダム周辺を訪れる人を同館だけでなく、各施設に周遊させることが新たな課題になる。

 施設間の連携では、住民らでつくる実行委員会(委員長・樋田省三川原湯温泉協会長)が毎年8月8日を「八ッ場の日」と定め、「八ッ場あがつま湖グリーンフェスティバル」を初めて実施した。各施設を巡るスタンプラリーを企画し、夢中になる観光客や地元住民も多かった。仕掛けがあれば、客に周遊を促せることを証明できた。新設企業の経営体力は十分ではなく、イベントを何度も開催するのは難しい。ダム建設の歴史を考えれば、軌道に乗るまでは行政の支援も必要だろう。

 各施設は徐々に個性を出し始めている。「やんば茶屋」は地域色の濃い土産物を充実させ、地元客を想定して町のラーメン店を意識した店づくりをしている。「八ッ場湖の駅丸岩」は丸岩城があったことを踏まえた御朱印販売のコーナーを増やした。道の駅は独自に開発したパンをはじめとする食品、地元の農産物を豊富に扱うなどして固定客を獲得している。

 集客対策も課題だ。4月には町営の「やんば天明泥流ミュージアム」が開館した。国土交通省八ッ場ダム管理支所にはダム解説施設「なるほど!やんば資料館」がある。萩原睦男町長は「教育旅行を誘致したい」との考えを示している。水源や昨春完成までのダム建設の歴史、活火山の浅間山など幅広く学習でき、水陸両用バスやキャンプ、カヌー体験も提供できる。

 コロナ後の集客を見据え、全国各地で修学旅行の誘致が白熱する可能性が高い。具体的な誘致活動が急がれる。

—転載終わり—

〈参考ページ〉「長野原町、過疎法対象指定でダムや自然生かした発展計画」

写真=横壁地区の地域振興施設「湖の駅丸岩」の建物と水陸両用バス。2021年10月2日撮影。

写真=夏場は観光シーズンだが、八ッ場ダムは洪水に備えて7月1日から10月5日まで水位を下げなければならない。水深の浅いダム湖の上流方面では、堆積した土砂を掘削する作業が行われていた。2021年8月27日撮影。

写真=「川原湯温泉あそびの基地NOA」のダム湖畔のキャンプ場。夜はライトアップで幻想的な光景。2021年10月2日撮影。