さる10月11日、国土交通省の社会資本整備審議会小委員会が開かれ、昨年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川水系の長期的な治水対策を定めた新たな河川整備基本方針案をまとめました。この小委員会の小池俊雄委員長は、国土交通省関東地方整備局が八ッ場ダムを明記した利根川の河川整備計画を策定した2012~13年の利根川有識者会議の座長を務めています。
河川整備基本方針は長期的な目標値を定めるもので、ダム名は書かれませんが、この基本方針はダム計画を想定した目標値を採用しており、国土交通省はこの基本方針を上位計画として新たに策定する河川整備計画に川辺川のダム名を明記すると予想されます。約20年間凍結されてきた川辺川ダムの建設を推進するため、急ピッチの動きですが、ダムが建設されても洪水を防げるという保証はどこにもなく、被災した流域住民は生活再建もままならない中、治水対策の議論から排除されています。
◆2021年10月12日 熊本日日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/f0c27ca7c2ddc9e772f9f53aec7831fd1cd9b588
ー流水ダム想定、方針まとまる 国交省、球磨川治水でー
国土交通省の社会資本整備審議会小委員会は11日、昨年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川水系の長期的な治水対策を定めた新たな河川整備基本方針案をまとめた。今年7月に始まった小委の議論は4回で終了。基本方針案は支流・川辺川での流水型ダム建設も想定している。
球磨川水系の基本方針は2007年に策定されているが、温暖化に伴う降水量の増加を踏まえ再検討。新たな基本方針案では、洪水の想定最大流量「基本高水ピーク流量」を基準地点の人吉(人吉市)で毎秒7千トンから8200トンに、下流の横石(八代市)では9900トンを1万1500トンにそれぞれ引き上げた。
ただ、昨年7月と同規模の豪雨が降った場合、試算では流水型ダムなどの洪水調節施設が機能しても、多くの区間で安全に水を流せる水位を超える。
そのため、基本方針案は想定を超す洪水に対し、避難などのソフト対策も含め、流域全体で被害の最小化を目指すとした。具体的には、下流の堤防で湾曲部の安全を確保し、自治体による土地利用の規制などを進める。流木や過剰な土砂の流出の抑制、水田に雨水をためる「田んぼダム」の普及も進める。
基本方針案は大きな変更はないとみられ、河川分科会の審議を経て、年内にも決定する見通し。このまま具体的な河川整備計画が策定されれば、流水型ダムなどの治水対策は河川法上の決定となる。小委メンバーの蒲島郁夫知事は「命と清流を守る緑の流域治水の理念をしっかり盛り込んでもらった」と小委の議論を評価した。(隅川俊彦)
◆2021年10月12日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASPBC725PPBCTLVB006.html
ー球磨川治水、基本方針案を了承 国交省検討小委員会ー
【熊本】球磨川水系の中長期的な治水方針について、国土交通省の小委員会(委員長=小池俊雄・土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長)は11日、昨年7月の記録的な豪雨を踏まえて同省が示した河川整備基本方針案の審議を終え、了承した。今後、国交相が正式に策定する。
小委員会の臨時委員を務める蒲島郁夫知事は会合後に記者団に対し、「堤防やダムなどハードで守る治水のあり方が大きく変わり、流域全部で命と環境を守る方向に変わった」などと評価した。今後は、球磨川水系で未策定だった河川整備計画をつくる作業へ移る。整備計画では支流の川辺川に設置が検討されている流水型ダムの詳細などが盛り込まれる。
基本方針案では、河川整備だけでなく集水域や氾濫(はんらん)域を含む流域全体であらゆる関係者が協働して水害を軽減させる「流域治水」の推進を明記。昨年の洪水が現行の基本方針を上回る規模の洪水だったことを踏まえ、昨年の洪水やそれを上回る規模の洪水に対し、被害の最小化を目指す方針を明示した。
洪水時の最大流量は、人吉市で80年に1度の規模の洪水に対応する従来目標は維持しつつ、温暖化で増加する降水量を踏まえ、毎秒7千トンから同8200トンに変更。昨年7月の豪雨と同規模の洪水が起きた場合でも、安全に流せる「計画高水位」は最大約1メートル超えるが、堤防天端は超えないという。(伊藤秀樹)