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東京都昭島市の水道水は、深層地下水100%

 東京都の昭島市は、水道水源の100%が深層地下水です。昭島市の住民が美味しくて安全な地下水を水道水として享受していることが報道されています。

◆2021年10月18日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211017-OYT1T50126/
ー都内で「水がおいしい」市、調べたら…唯一の「深層地下水100%」ー

 「水がおいしい」。今年3月まで東京都昭島市を担当した前任記者からの引き継ぎ書類には、一言そう記されていた。「水の味なんて、どこでも同じなのでは」と思ったが、調べていくうちに、その言葉の意味がわかった。(柳沼晃太朗)

地下水を無料でくむことができる給水スポット。上部には市の公式キャラクター「ちかっぱー」が座る(昭島市のJR昭島駅前で)
 今年7月、昭島市内を通るJR青梅線の拝島駅、昭島駅、中神駅、東中神駅の駅前にひときわ目立つ黄緑色の無料給水スポットが登場した。そこから出てくるのは、地下深くからくみ上げられた市自慢の「深層地下水」。供給している水は、山に降った雨や雪が約30年かけて 濾過ろか されたもので、ミネラル成分が豊富なのが特徴だという。

 4か所の給水スポットの利用回数は、8月までの2か月間で計4万4894回に上り、「予想以上の盛況ぶり」(市担当者)。昭島駅前でよく水をくむ、市内のパート従業員の女性(39)は「市販のミネラルウォーターより口当たりが優しい気がする」と話した。

 周辺自治体との違いはあるのか。「深層地下水」のおいしさの理由に迫るべく、市役所を訪ねると、市環境課の橘達哉さん(40)が「カギは分厚い砂利層にある」と教えてくれた。

 砂利層は地下水が流れる地層で、川の流れによって作られる。昭島市の南側には多摩川が流れており、その恩恵で分厚い砂利層が形成されたとみられている。例えば市東部の地質は、表面の関東ローム層や粘土層などが連続した後、深さ80メートル付近から約50メートルに及ぶ砂利層がある。橘さんは「地下水の量は砂利層の厚さに左右される。水源が豊富な地理的条件に恵まれた」と話す。

 周辺自治体もかつては地下水を水源にし、水道事業も独自に行っていた。だが、高度経済成長期以降の人口急増で水の使用量が増えると、水源は乏しくなり、23区同様、ほぼ河川水を使う都営の水道事業に統合された。昭島市は、水道法で義務付けられた最低限の塩素処理をするのみで、河川水を使う都営が行っている浄化処理はしておらず、天然に近い水を供給している。

 多摩地区では現在、昭島市以外にも武蔵野、羽村の両市と檜原村が独自に水道事業を行っている。ただ、3市村とも河川水を混ぜるなどしており、「深層地下水100%」を供給しているのは昭島市だけの状況だ。

 水を生かした街おこしを主導するのは、「拝島駅前商店会」の岡部恒男会長(68)。同商店会は昨年、深層地下水で作る「拝島ハイボール」を開発した。日本酒風味の「白」と、黒ビールの麦汁を使った「黒」の2種類を、居酒屋やバーなど16店舗で提供している。

 今年は新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が発令された影響で、せっかく生み出した名物も提供できない日々が続いた。ようやく緊急事態宣言が解除され、今月1日からほぼ全ての店舗で拝島ハイボールの提供を再開することができた。「貴重な水を持つ昭島だからこそ味わえる名物。コロナで苦しむ街を盛り上げる起爆剤になれば」と岡部会長は願う。

 2色の拝島ハイボールを特別に作ってもらった。まろやかな飲み口はもちろん、地域の恵みを大切にする昭島の人々の思いも、おいしさを際立たせている気がして、何度もグラスを傾けた。

—転載終わり—

 都内の多摩地域では、昭島市のほかにも、地下水を水道に利用している自治体がいくつもあります。多摩地域全体の地下水揚水量は1日平均約37万㎥と、水道水源の約3割は地下水です。しかし都は、この地下水を正式な保有水源とは認めていません。東京都が八ッ場ダム事業に参画し、長年、国と利根川流域の他県とともに八ッ場ダム事業を推進してきた理由の一つは、自己水源である地下水の使用を削減することでした。現時点では、これまで通り地下水が利用されていますが、今後どうなるかは不透明です。

 以下のページに掲載している解説が参考になります。

 「東京の地下水問題の経過」(八ッ場ダム計画との繋がり)
 https://yamba-net.org/15116/