八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム ”生活再建事業最後の橋”開通

 八ッ場ダム上流の吾妻川に架かる長栄橋が開通したとのニュースが流れています。
 ダム事業で32もの橋が建設される中、町道に架かる長栄橋の開通がニュースとなったのは、八ッ場ダムの生活再建事業の最後の事業であるからということです。長栄橋は以前からありましたが、老朽化したため八ッ場ダムに関連づけて古い橋の横に新しい橋が架けられました。
 長栄橋はダム湖の上流端であるJR長野原草津口駅から1.5キロほど上流にあり、八ッ場ダムのバックウォーターはこのあたりまで影響を及ぼすといわれます。2019年の東日本台風の豪雨の際、長栄橋の工事現場は被災し、完成が遅れていました。

写真=右側に新しく建設された長栄橋。左側に解体される旧橋。右側に流れ下る吾妻川の先に八ッ場ダム。

 関連記事を転載します。

◆2021年11月2日 上毛新聞 (紙面記事より)
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/337150
ー生活再建事業が終結 長栄橋(長野原)開通で八ツ場ー

 八ツ場ダム(群馬県長野原町)建設に伴う関連工事で整備をしてきた町道「長栄橋」が1日開通し、同町は町民の生活再建に関わる事業が終結したと明らかにした。工事用進入路の設置を皮切りに、住宅の代替地整備、観光施設の建設など約27年をかけた一連の事業が完了し、水没5地区の生活基盤がようやく整った。

 長栄橋はダム湖の末端近くに架かり、同町長野原と同町与喜屋を結ぶ。長さ62メートル、幅員7メートル。国が事業費約9億4000万円をかけ、吾妻川改修の付帯工事として施工した。当初は2020年3月のダム完成時にできる予定だったが、19年10月の台風19号の被害復旧に伴う工事や、新型コロナウイルス感染症などの影響で遅れていた。

 橋の建設は、八ッ場大橋や不動大橋など国と県、町の管理道路を合わせて32ヵ所目。同日開かれた開通式で地区住民らがテープカットをした。萩原睦男町長は長栄橋の名前に触れ、「最後を飾る事業としてふさわしく、町全体が生き生きと長く栄えるようにしたい」と話した。

 生活再建事業はダム受益者の下流1都4県(群馬、茨城、埼玉、千葉、東京)が負担金を拠出する水源地域対策特別措置法(水特法)事業が約997億円で62事業、利根川・荒川水源地域対策基金事業が約178億円で27事業を実施したほか、国の各種事業が行われてきた。

 水没地区の産業や雇用創出を目的とした道の駅「八ッ場ふるさと館」をはじめ地元住民が運営する地域振興施設も建設し、これまでに八ッ場の観光拠点が相次いで開設された。

 事業を後押ししてきたのは、対象地域の町民でつくる八ッ場ダム水没5地区の各ダム対策委員会。既に4地区が解散し、長栄橋の完成に伴い長野原地区八ッ場ダム対策委の活動も本年度で終え、来年5月の総会で正式に解散する予定だ。同委員長を務める桜井芳樹さん(72)は「生活再建事業が長い時間を費やして完了した。ほっとしている」と話した。(関坂典生)

◆2021年11月2日 読売新聞群馬版
https://www.yomiuri.co.jp/local/gunma/news/20211101-OYTNT50122/
ー建設事業最後の橋完成 長栄橋開通式 「買い物楽になる」ー

 長野原町の吾妻川に架かる橋で、長野原、与喜屋両地区を結ぶ町道「長栄橋」の開通式が1日に行われ、関係者がテープカットなどで祝った。

 昨年4月から運用されている八ッ場ダムの建設に伴う事業で、最後に完成した橋(長さ62メートル、幅員7メートル)となる。1968年に完成した橋が老朽化したため、国が川の改修付帯工事として架け替えた。事業費は約9億4000万円で、ダム関連の橋の整備では32か所目。

 初めて橋を渡った長野原地区の住民の黒岩つね子さん(71)は「これで買い物も楽になる」と喜んだ。

 萩原睦男町長は「八ッ場ダム関連の補助事業がおおむね終了し、今後は原点に戻り、地域の振興策を進めたい」と気を引き締めた。

—転載終わり—

 八ッ場ダム事業にはダム建設事業のほかに、水源地域対策特別措置法の事業(約997億円)と利根川荒川水源地域対策基金事業(約178億円)があります。これら2事業は生活再建事業と呼ばれましたが、生活再建事業の中にはダム建設事業に含まれている事業もありました。ダム完成を間近に控えた一昨年の上毛新聞の記事によれば、生活再建関連事業は100事業に上り、そのうち43事業が2年前の記事掲載の時点で未完了でした。
 https://yamba-net.org/49805/
 「八ッ場ダム生活再建事業、完成遅れ22事業」

 2事業の具体的なメニューは、以下のページをご参照ください。道路、上下水道、土地改良、治山治水、公営住宅、地域振興施設、保育所、老人施設などさまざまな事業があることがわかります。
https://yamba-net.org/genjou/budget/budget2015/

生活再建事業の中で最も事業費が大きかったのは、700億円以上が費やされた国道の付け替え事業で、ダム建設事業と水源地域対策特別措置法の事業と両方から支出されました。
 ダム建設事業の具体的な中身については、こちらのページをご参照ください。
 https://yamba-net.org/genjou/budget/budget2019/

 八ッ場ダム周辺では、今も様々な工事が続けられていますが、これらは利根川ダム統合管理事務所が発注しています。
 長栄橋の脇に立っている工事看板も発注者は利根川ダム統合管理事務所となっており、工期が2022年3月末までとなっています。

写真下=長栄橋のすぐ上流側には、東京電力が水力発電のために吾妻川から取水する長野原取水堰があり、水門が見える。
 

写真下=右が新橋、左が旧橋。長栄橋周辺の吾妻川には、2019年の東日本台風の際、流れてきた土砂や流木が残っている。八ッ場ダム貯水池上流の河川敷では、堆砂を軽減するため土砂の掘削作業が行われている。

 
写真下=長栄橋の下を流れる吾妻川。水の色が濁っている。