八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場 観光船の委託先変更

 今朝の地元紙に、ダム湖観光に関する記事が2本掲載されていました。

ほぼ満水の八ッ場ダム貯水池。2021年12月4日

 八ッ場ダムの貯水池では昨(2020)年夏から水陸両用バスが運行されていますが、今秋には新たに観光船2艇が営業を開始することになっていました。けれども今朝の一面の記事によれば、長野原町からの委託先が「道の駅・八ッ場ふるさと館」から東京の日本水陸両用車協会に変更されたことにより、開始予定は来年1月1日に変更されたとのことです。
 水陸両用バスも観光船も八ッ場ダム3事業の一つで、水没地域の地域振興等を目的とする利根川・荒川水源地域対策基金事業(178億円)が諸設備の費用を負担しますが、維持管理費用は地元自治体である長野原町が負担しなければなりません。基金事業は八ッ場ダムの水源開発により水道用水の供給を受ける利根川流域一都四県(八ッ場ダム事業に参画した6都県のうち、「治水」のみ参加の栃木県を除く、東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、群馬県)が負担しました。

湖の駅丸岩

 観光船の発着所は、水陸両用バスと同様、「湖の駅・丸岩」となります。この施設は、道の駅・八ッ場ふるさと館の上流側に架かる湖面橋・丸岩大橋の右岸側のたもとに位置しています。水陸両用バスは観光客が多い道の駅・八ッ場ふるさと館でも乗降できますが、観光船は「湖の駅・丸岩」のみの乗降となります。水陸両用バスが運行を休止する冬場のオフシーズンの営業、どうなるでしょうか。

 今朝のもう一つの記事は、水陸両用バスの自動運転の実証実験に関するものです。
 「八ッ場ダムで世界初の水陸両用バスの自動運転」の実現を目指すとのことですが、基金事業の本来の目的は雇用の創出でした。観光船の委託先も、地元から東京へ移り、本来の目的から離れてきています。

◆2021年12月8日 上毛新聞(紙面記事より転載)
ー八ツ場観光船の委託先変更 長野原町 営業開始1カ月遅れー

 八ツ場ダム湖「八ツ場あがつま湖」の冬観光の目玉として運航を予定する観光船に関して、長野原町が運航業務の委託先を当初計画から変更し、発着場所も同町林地区から同町横壁地区に移したことが7日、分かった。委託先の変更により、営業開始は想定より約1カ月遅れの来年1月にずれ込む見通し。

 当初は、道の駅を運営する八ッ場ふるさと館(同町林、篠原茂社長)を委託先とし、今秋にも営業を始める予定だった。観光船は旅客定員32人で2隻あり、今年5月には、発着予定地の八ッ場林ふるさと公園の船着き場で進水式も行っていた。

 八ッ場ふるさと館によると、使用する桟橋が湖面水位に合わせて日常的に付け替える必要のある形態だったため、作業費がかさんで赤字になることが見込まれたという。町に対して、付け替え作業を町で行うよう求めるなどしたが、折り合わず、11月下旬に観光船事業から撤退した。
 町は新たな委託先として、同湖で水陸両用バスを運行する日本水陸両用車協会(東京都港区、須知裕曠理事長)を選定。発着地点は水陸両用バスと同じ同町横壁の「八ッ場湖の駅丸岩」とすることで合意している。

 同協会は今シーズンを試験運行期間と位置付ける。水陸両用バスが湖への進入で使っているスロープ(道路)を活用して桟橋を整備するほか、チケット販売業務や運航に携わる人員などを一元化し「知恵と工夫でコストを削減する。面白い企画を考え、お客さまを楽しませたい」としている。
 同協会は運航に関わる国の検査や船長の訓練などを経て、来年1月1日の営業開始を目指す。

 観光船事業はダム建設に伴う生活再建の一環で、船着き場の桟橋や艇庫も含め、利根川・荒川水源地域対策基金4億3千万円を充てた。町は「運航自体を取りやめたわけではなく、運航者がかわっただけで問題はない」と説明している。

◆2021年12月8日 上毛新聞
ー八ッ場の水陸両用バス 籠島塗装(高崎)、埼工大 自動運航で協定ー

 本年度まで実施する八ッ場ダム(長野原町)の水陸両用バスの自動運転・運航の実証実験を加速するため、実験に加わる埼玉工業大(埼玉県深谷市、内山俊一学長)は7日、群馬ボートライセンススクールを運営する籠島塗装(高崎市新町、籠島真二社長)と、船の自動運航技術の開発協力に関する協定を結んだ。

 車の自動運転で実績がある同大は昨年度から、八ッ場ダムでも水陸両用無人運転技術の開発に携わる5社・団体でつくるコンソーシアム(共同事業体)の一角を担っている。車に比べて船はハンドルを切ってからの方向転換が遅いなど、水上ならではの難しさがあり、小型船舶操縦の教育を行う同社に協力を求めた。
 両者は既に1月から、群馬、埼玉県境にある神流湖で、定員5人の小型船で障害物回避などの自動運航の実験を開始。協定によって八ッ場での技術開発を加速させる。

 前橋市内で同日開かれた調印式で、内山学長は「水陸両用の無人運転を目指す中で、小型船舶の自動運転の開発は大きな一里塚だ」とし、籠島社長は「八ッ場ダムで世界初の水陸両用バスの自動運転が実現できるよう最大の協力をする」と意気込みを語った。(関坂典生)

—転載終わり—

群馬県ホームページより「八ッ場ダム周辺の地域振興施設」
 観光船は当初計画の八ッ場林ふるさと公園に図示されているが、図の左下の「湖の駅・丸岩」より発着することになる。
地域振興施設のサムネイル

写真=横壁地区の住民が株式会社方式で運営する「湖の駅・丸岩」。店内には、横壁の沢で栽培される採れたてワサビや住民の手芸品なども並ぶ。