八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

川上ダム試験湛水今月16日開始へ 

 三重県伊賀市の川上ダムは堤体ができあがり、試験湛水が間もなく始まります。
 水源開発が主目的の川上ダムは、事業に参画していた自治体が水需要の低迷により次々と撤退しました。2001年に国土交通省近畿地方整備局が設置した淀川水系流域委員会では、川上ダムも見直しの対象となり、一旦は中止が決まりました。しかし、その後、河川行政は時代状況に逆行し、川上ダム計画も復活しました。(独)水資源機構が事業者である川上ダムの主目的は水源開発(水道用水の供給)ですが、水道事業で川上ダム事業に最後まで参画し続けたのは、地元の伊賀市のみです。水が足りている伊賀市では、水道料金の値上げやダムによる自然破壊を問題視する反対運動が続いてきました。
 今では、他の多くの多目的ダムと同様、川上ダムの建設目的は、第一に「洪水被害の軽減」が挙げられていますが、川上ダムは水資源機構が事業者であるため、治水目的だけで継続することは不可能でした。
 川上ダムの完成予定は2023年3月末です。試験湛水は通常は一年ほどを見込みますが、水資源機構の川上ダム建設所によれば、堤体以外の工事で未完成なところが残されているため、完成予定は変わらないとのことです。

(独)水資源機構 川上ダム建設所ホームページより「川上ダムの位置」

◆2021年12月10日 伊賀タウン情報ユー
https://www.iga-younet.co.jp/2021/12/10/48644/
ー川上ダム試験湛水16日開始へ 数か月かけ満水に 伊賀市ー

 水資源機構は12月9日、三重県伊賀市川上などで建設している川上ダムの試験湛水を16日に始めると発表した。開始後、満水になるまでには数か月かかる見込み。

 同ダム建設所によると、試験湛水はダムの本格運用開始前に水を「洪水時最高水位」まで貯め、堤体や貯水池周辺の山の斜面の安全性を確認するもの。最高水位まで貯めた後は、平常時の水位まで1日に1メートル以下のペースで下げていく。

 16日午前10時ごろにダム本体の下にある「仮排水路呑口」と呼ばれるゲートを閉鎖する作業を行い、ダムに流入する前深瀬川と川上川の流れをせき止める。当日の様子は、同ダムホームページ(https://www.water.go.jp/kansai/kawakami/)でライブ配信される。悪天候などで順延する可能性もあるという。

 同ダムは重力式コンクリートダムで、総貯水容量は東京ドーム約25杯分の約3100万立方メートル。堤体は長さ334メートル、高さは宮川ダム(大台町)に次ぐ県内2番目の84メートル。洪水調整や水道用水確保などを目的に2018年9月に本体起工した。供用開始は23年4月を予定している。

◆2021年12月3日 毎日新聞
ーオピニオン 憂楽帳 ダムを考えるー

 「忍者の里」で知られる三重県伊賀市の山間部。二つの河川の合流地点に長さ334メートル、高さ84メートルの巨大なコンクリートの堤ができあがっていた。総貯水量約3100万立方メートルの川上ダム。洪水被害の軽減や水道用水の供給を担う。

 その威容を眺めながら、7年前の光景を思い出さずにはいられなかった。計画から半世紀、本格着工に向け、関係住民から意見を聞く場だった。「昔の集落はみんな仲が良かった。なぜダムで争わねばならないのだ」。こう訴えた反対派代表の男性が突然、目の前で倒れたのだ。

 集落にはかつて38世帯が暮らしていた。下流で度重なる水害の対策を求める声が強く、当時既に多くが先祖の墓と一緒に移住していた。反対派は大型公共事業による集落や自然の破壊などを問題視していたが、男性はその年に亡くなり、胸の内を聞くことはできなかった。

 ダムでは年内にも貯水の試験が始まり、集落跡地はついにダム湖の底に消える。流域で水害の不安が解消されることを願いつつ、忘れないと誓った。この場所で人々が暮らし、「公益」のために葛藤したという事実を。【行方一男】

◆2021年12月16日 毎日新聞三重版
https://mainichi.jp/articles/20211216/k00/00m/040/150000c
ー水をためてみて安全性を確認 23年運用予定の三重・川上ダムー

 三重県伊賀市阿保、青山羽根地区で川上ダムの建設を進めている水資源機構は16日、貯水してダムに問題がないかを確かめる「試験湛水(たんすい)」を始めた。川上ダム建設所・松村貴義副所長によると、試験湛水はダムの本格運用開始前に水を洪水時最高水位(満水)までためて、ダム本体の強度や貯水池周辺の山の斜面の安全性などを確認していく。最高水位までためた後は、平常時の水位まで1日1メートル以下のペースで下げていく。満水になるまでには約1年かかるという。

 この日は、午前10時からダム本体の下にある仮排水路呑口(のみくち)と呼ばれるゲートを閉鎖する作業を行い、ダムに流入する前深瀬川と川上川の流れをせき止めた。川上ダム建設所・津久井正明所長の合図で、鉄製のゲート(5メートル四方、厚さ約60センチ、重さ約17トン)がゆっくりと下がり、仮排水路呑口を塞いでいった。津久井所長は「安全で確実な管理運用を行うため、確実な試験湛水を行いたい」と話した。

 川上ダムは洪水被害の軽減や水道用水の供給を担い、2018年9月に起工。23年4月の運用開始を目指している。ダム本体の高さは84メートル、堤頂部は長さ334メートル。堤体を45万立方メートルのコンクリートで築いている。高さは大台町の宮川ダムに次いで県内2番目。総貯水容量は東京ドーム約25杯分の約3100万立方メートルとなる。

 湖底となる集落跡地には、かつて38世帯が暮らしていた。今は野生のシカが生息し、ダムの底に沈む姿を静かに見届けようとしていた。【山中尚登】