国内最大の治水ダム建設へ 川辺川の従来計画地に流水型 国と熊本県が現地で表明

 八ッ場ダムと併称されてきた国の川辺川ダム計画は、流域の反対運動が盛り上がった2000年代に一旦中止が決まりましたが、昨夏の水害を機に蘇りました。国はこの間、ダムによらない治水対策を熊本県と流域自治体と協議する場を設けてきましたが、対策はほとんど具体化しないまま大洪水を迎えました。新たな計画では、球磨川支流の川辺川に国内最大規模の治水ダムが建設されるとのことですが、国土交通省の説明によれば、そのような大規模なダムを造っても水害を防ぐことはできないとのことです。また、流域の市民団体や専門家が昨夏の水害犠牲者50人の調査を行ったところ、仮に巨大ダムがすでにあったとしても、支流や球磨川中下流域における治水効果は限定的で、犠牲者のほとんどは助からなかったということです。

 このほど、国交省の担当者と熊本県知事が水没予定地の五木村とダム建設地の相良村を訪れ、従来の予定地でダム建設を行うことを表明しました。長年ダムに翻弄されてきた五木村では、この十年余は熊本県主導で水没予定地の利活用なども進めて観光客が増加してきました。国と県の説明は僅か30分であったということで、地元のやりきれない思いが報道からも伝わってきます。

 川辺川ダムの反対運動の最も大きな理由は、清流が台無しになることへの懸念です。国交省と熊本県知事は、新たなダム計画はこれまでの多目的ダム計画とは異なり、治水専用の流水型で普段は貯水しないため、河川環境には問題ないとアピールしています。しかし、穴あきダムとしてはわが国最大規模になるとのことで、巨大なダム堤が川の遮蔽物になることによる河川環境への影響は未知数です。流域の漁業、観光業への影響も大いに心配されるところです。

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◆2021年12月9日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/492602
ー川辺川ダム新方針 住民不安払拭できるのかー

 国土交通省が7日、球磨川支流の川辺川に計画する流水型ダムの概要を発表した。相良村四浦の旧川辺川ダム計画予定地に、旧計画と同規模のダムを建設する方針だ。完成すれば総貯水容量で国内最大の治水ダムとなる。

 ダムの規模が明らかになったことで、計画は一歩前進した。今後は建設の是非や環境への影響について、より活発な議論が交わされることになろう。国とダム建設を要請した県は、住民の不安や疑問に真摯に向き合い、情報を積極的に開示するべきだ。

 新たなダムは、高さ107・5メートル、総貯水容量約1億3千万トン。構造は「アーチ式」から、ダム本体の重量で水圧を支える「重力式」に変更する。治水専用のため、多目的ダムだった旧計画より大きな洪水調節能力を備えることになる。

 昨年7月の豪雨は、球磨川流域だけで50人が亡くなるなど甚大な被害をもたらした。国交省が最大限の治水効果を狙い、旧計画の規模を維持するとしたのもそのためだ。ただ、新たなダムに流水型という構造を採用する点に関しては、その規模も念頭に置いて妥当性を議論する必要がある。

 水を常時ためる貯留型の旧計画とは異なり、流水型ダムには普段は水をためない。川底付近のダム本体に設けた穴から水を流し、洪水時だけ水をためる仕組みだ。そのため、流水型は貯留型に比べ、環境への負荷が小さいとされる。

 しかし、国内の流水型ダムはいずれも規模が小さい。国内最大の流水型ダムとして建設中の足羽川[あすわがわ]ダム(福井県)も、総貯水容量は約2870万トンだ。川辺川新ダムの総貯水容量はその約4・5倍。巨大な流水型ダムは前例がなく、環境への影響は未知数と言わざるを得ない。

 流水型という構造が、建設予定地や水没予定地を抱える相良村や五木村の村づくりの足かせとなる可能性もある。普段は水に漬からない土地をどう利用するのか。穴あき構造はアユをはじめとする魚の遡上[そじょう]などにどんな影響を及ぼすのか。土砂の堆積はどの程度生じるのか。住民が抱く疑問や不安に丁寧に答えない限り、「日本一の清流」を守りたいとする住民の不安は払拭できまい。

 長年、ダムに翻弄された五木村の振興策も道筋は見えていない。住民約500世帯が村内外に移転するなど人口減少が加速し、村の人口は千人を切った。「国や県に振り回され、疲弊する一方だ」という村民の思いは重く、合意形成は容易ではなかろう。

 国交省は週明けにも有識者委員会の会合を開き、新ダム建設の法的根拠となる球磨川水系の河川整備計画の議論を本格化する予定だ。ダムは緊急放流という不安要素も併せ持つ。雨がどの程度降ったら緊急放流が必要となり、その際にダム管理者はどう対応するのか。協議の場では、ダム建設が住民にとってマイナスになるケースも明示し、住民の理解が深まるまで議論を重ねてもらいたい。

◆2021年12月7日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/491695
ー国内最大の治水ダム建設へ 川辺川の従来計画地に流水型 国と熊本県が現地で表明ー

 昨年7月の豪雨災害を受け、国が熊本県の球磨川支流の川辺川に計画する流水型ダムについて、国土交通省は7日、従来の川辺川ダム計画と同じ相良村四浦に建設する方針を正式表明した。新たなダムは高さ107・5メートル、総貯水容量約1億3千万トンで、従来計画と同規模。完成すれば本体の高さと貯水量のいずれも国内最大の治水専用ダムとなる。

 新たなダムは普段は水を流し続けるが、大雨時には上流の五木村まで水をためて洪水をカットする。地域に大きな影響を与えるため、国交省九州地方整備局の藤巻浩之局長と蒲島郁夫知事が7日、両村を訪れ、村長らに直接方針を伝えた。

 従来の計画は多目的ダムで、夏場の洪水調節容量8400万トン、農業用などの利水容量2200万トン、堆砂容量2700万トンだった。両村への説明によると、新たなダムの洪水調節容量は検討中。ただ、不要になった利水分も治水に活用できるため、より大きな洪水調節能力を備える見通しだ。

 過去最大級の被害が出た昨年の豪雨を踏まえ、最大限の治水効果を狙って従来計画の規模を維持した。貯水量は国内最大の治水ダムとして建設中の足羽川[あすわがわ]ダム(福井県)の約4・5倍となる。

 藤巻局長はダムの建設場所の理由として、こうした治水効果に加え、既に用地買収や付け替え道路の整備が進んでいる点などを挙げた。構造は「アーチ式」から、ダム本体の重量で水圧を支える「重力式」のコンクリートダムに変更する。

 一方、球磨川のダムによらない治水方針を転換した蒲島知事は、多くの住民が水没予定地から移転した五木村で「長年翻弄[ほんろう]され続けていることを再度おわび申し上げる」と陳謝。両村の振興に「不退転の決意で取り組む」と力を込めた。

 これに対し、五木村の木下丈二村長は「流水型ダムが村に与える影響が分からない。今日が協議のスタートだ」と強調。相良村の吉松啓一村長は「まだ概要を聞いただけ。計画が二転三転しており、村民は不安を抱えている」と指摘した。両村長はいずれもダムに対する態度を保留した。

 国交省は、新たなダム建設の根拠になる球磨川水系の河川整備計画の策定を進めている。(内田裕之、潮崎知博)

 ◇流水型ダム 普段は川底付近のダム本体に設けた穴から水が流れ、洪水時だけ水をためる治水専用ダム。穴を流れきれない水が自然にたまる構造が多いが、福井県で国土交通省が建設中の足羽川ダムはゲート付きの計画だ。国内初の本格的な流水型ダムとされる島根県営益田川ダムでも運用開始は2006年と比較的歴史は浅い。国交省が22年度中の完成を目指して白川上流で建設中の立野ダム(南阿蘇村、大津町)も流水型。

◆2021年12月7日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASPD76SDXPD6TLVB00S.html?ref=tw_asahi
ー川辺川ダムの従来計画地に同規模で建設方針 流水型ダムめぐり国交省ー

 昨年7月の記録的豪雨で氾濫(はんらん)した球磨(くま)川(熊本県)支流の川辺川で国が整備を検討している治水専用の流水型ダムについて、国土交通省は7日、従来の川辺川ダム計画と同じ同県相良村の予定地に、従来計画と同規模の貯水容量で建設する方針を明らかにした。

 国交省九州地方整備局の藤巻浩之局長と蒲島郁夫知事が7日、従来のダム計画で一部が水没予定地となっている五木村と、相良村を訪れ、村長らに説明した。

 国交省によると、検討中の案では、総貯水容量は「治水計画上の必要な洪水調節機能を確保する」として約1億3千万トンで従来計画と同規模を維持する。完成すれば治水専用ダムとしては総貯水容量は国内最大となる。多目的ダムだった従来計画で農業用水や発電の利水容量としていた2200万トンも、洪水調節容量として使用する方針。従来計画では洪水調節容量は8400万トンだった。ダム高は従来計画と同じ107・5メートルにする。従来計画は「アーチ式」だが、流水型ダムは本体のコンクリートの重量で水圧を支える「重力式」で建設する。

 建設予定地は、ダム本体の工事を除き用地取得や家屋移転などがほぼ完了し、付け替え道路などの関連工事も進んでいること、本体工事に先立ち一時的に川の流れを切り替える仮排水トンネルが完成していることなどを踏まえて判断したという。

 2008年に川辺川ダム計画の「白紙撤回」を表明した蒲島知事は、昨年の豪雨災害を受けて方針転換し、治水専用の流水型ダム建設を国に求めた。国交省は球磨川水系の長期的な整備方針を定める河川整備基本方針の変更に着手し、専門家委員会は今月2日までに、ダム整備も想定した基本方針を承認していた。

 国交省は今後、河川法に基づき策定する河川整備計画に、流水型ダムの予定地や貯水規模などを盛り込む方針。整備計画の原案を有識者や流域住民、熊本県知事に示し、意見を聴いてまとめる。河川整備計画は20~30年後の整備目標を定めるが、球磨川水系では未策定だった。流域住民の意見聴取は公聴会などが想定されるが、現時点では未定という。

 国は、流水型ダムの環境影響評価(アセスメント)を今年度から始めており、河川整備計画の策定と並行して進める。九州地方整備局によると、計画の策定後、従来の川辺川ダム計画は廃止される見通し。

 国は流水型ダムの整備期間や完成時期を示していない。一方で国や県、流域市町村などでつくる協議会が今年3月に策定した球磨川水系の治水対策の全体構想では、完成時期を「2030年以降」としている。

 7日に説明を受けた五木村の木下丈二村長は記者団に「流水型ダムの村への影響が明らかになっていない。住民の理解を得た上で判断する」と述べ、現時点での賛否を明らかにしなかった。(伊藤秀樹)

◆2021年12月7日 毎日新聞
http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20211207k0000m040258000c?fm=twitter
ー川辺川ダム、旧計画と同規模で建設 国交省と熊本県が2村に説明ー

 2020年7月の九州豪雨で氾濫した熊本県の球磨川の治水対策として、国土交通省が最大の支流・川辺川に建設すると決めた流水型のダムについて、同省は7日、旧民主党政権が09年に中止した計画と同規模で、旧計画と同じ場所に建設する方針を地元に伝えた。新たなダム建設の決定後、国が予定地や規模を正式に示すのは初めて。

 国交省九州地方整備局の藤巻浩之局長と蒲島郁夫知事が、建設予定地の熊本県相良(さがら)村と、貯水時に水没する上流の同県五木村を訪れ、村長と村議会議長らに説明した。

 国交省は新たなダムについて、いずれも旧計画と同じ▽高さ107・5メートル▽幅約300メートル▽洪水時最高水位まで水をためた時の水面面積(たん水面積)3・91平方キロ▽総貯水容量約1億3000万トン――で建設する方針を示した。旧計画は常時水をためる一般的な貯水型ダムだったが、環境への配慮を求める蒲島知事の要請を受け、国は大雨時だけ水をためて平時は水を流し、貯水型よりも環境影響が小さいとされる流水型で建設する。完成すれば、国内最大の流水型ダムとなる。

 国交省は地元に対し、旧計画の中止前に水没予定地からの家屋移転や付け替え道路の工事などがほとんど終了している点を踏まえ、「ダムの位置や高さ、たん水範囲は従来と同じにする」と説明した。

 九州豪雨後、国交省は気候変動などを踏まえて球磨川で想定される洪水時のピーク流量(熊本県人吉市)を従来の1・17倍に引き上げた。その上で、ダムなどの治水対策をしても九州豪雨と同規模の雨が降れば、球磨川中下流域では安全に水を流せる水位を超えるとの想定を提示した。旧計画には農業と発電用にためる2200万〜5300万トン分が含まれていたが、国交省は規模を維持することでこの分も洪水調節に充てられるようになるとしている。

 国交省からの提示に対し、五木村議会の岡本精二議長は流水型ダムへの転換に関する説明がないとして「現時点では村への影響が分からず、到底容認できない」と不快感を示し、更なる説明を求めた。相良村側からも十分な説明を求める声が上がった。【吉川雄策、城島勇人】

◆2021年12月8日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/843546/
ー流水型ダム整備方針、国が五木村と相良村に説明 川辺川ー

 昨年7月の熊本豪雨で氾濫した熊本県南部の球磨川流域の治水策として、国土交通省九州地方整備局は7日、最大支流川辺川に計画する流水型ダムについて、2009年に国が中止した旧川辺川ダム計画の予定地に旧計画と同規模で整備する方針を正式に発表した。完成すれば国内最大の治水専用ダムとなる。

 蒲島郁夫知事と九地整の藤巻浩之局長が同日、水没予定地がある同県五木村と、建設予定地の同県相良村で両村長らにダムの位置や規模を初めて説明した。13日に学識者に示し、議論を本格化させる。

 新ダムは旧計画予定地の相良村四浦の峡谷に建設し、高さ107・5メートル、幅約300メートル。構造は「アーチ式」からダム本体の重さで水圧を受け止める「重力式」に変更した。

 総貯水容量は約1億3千万トン、湛水(たんすい)面積は3・91平方キロで旧計画と同規模。旧計画は、常に水をためて利水も行う貯留型だったが、新ダムは治水専用のため洪水調節能力は上がる。蒲島知事から「命と環境の両立」を要望され、環境への配慮から平時はゲートを開放して水を流す。大きな洪水時にはゲートを閉めて貯水するため、旧計画同様に五木村の一部は水没する可能性がある。

 両村は説明を受け、環境保全や村の振興策の拡充を要望。藤巻局長は「国、県が連携して取り組む」とし、蒲島知事は「流水型ダムを前提とした村の新しい振興の方向性を示し、不退転の決意で取り組む」として理解を求めた。 (古川努、中村太郎)

◆2021年12月7日 テレビ熊本
https://news.yahoo.co.jp/articles/2840a561cf16a33a95295759a996fc90e5ce6852
ー流水型ダムは従来計画地に建設方針 蒲島知事が五木・相良両村長に説明ー

 去年7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策で、支流の川辺川に建設が計画されている「新たな流水型ダム」について、国は7日、従来の川辺川ダム建設予定地に整備する方針を示しました。

 蒲島知事らが国の担当者とともに、ダム建設によって大雨の時に影響を受ける上流の五木村と建設予定地の相良村を訪れ、両村長に方針を説明しました。

【九州地方整備局 藤巻 浩之局長】
「流水型ダムの位置、高さ、湛水(たんすい)範囲は従来の貯留型ダムと同じとさせていただければと考えていまして、重力式コンクリートダムの建設を考えています」

 球磨川の治水対策をめぐっては、国が「新たな流水型ダム」を盛り込んだ河川整備計画の策定に着手しています。
 来週開かれる学識者との懇談会で、この原案が示されることになります。
 それによりますと「新たな流水型ダム」は、相良村に計画されていた川辺川ダム建設予定地に治水専用のダムとして整備。
 ダムの高さは、従来と同じ107・5メートルで総貯水容量は約1億3000万トンとしています。

 五木村での説明で知事は「これまで以上の責任と覚悟を持って五木村の振興に不退転の決意で取り組む」と述べました。
 これに対し木下 丈二五木村長は、国や県に対して新たなダムの村への影響や村の振興、再建への影響について村民への丁寧な説明を求めました。

【木下 丈二五木村長】
「どれだけ村に影響があるのか、それを踏まえて五木村の振興について協議していただいて、それを明らかにした中で住民の理解をいただいて最終的な判断の時期が来る」

 国と県はダム建設予定地である相良村の吉松 啓一村長にも説明しました。

◆2021年12月8日 日テレNews
https://www.news24.jp/nnn/news100cfpc2wh0gr5e3kk2.html
ー国内最大の治水ダム・地元には不安【熊本】ー

 熊本豪雨で氾濫した球磨川の流域治水対策が動き出す。国が表明したのは国内最大の流水型ダムを設置する方針だ。
 熊本県の蒲島知事は8日「住民と確認しながら整備を進める仕組みを構築したい」と述べた。

 建設方針が示されたゲート付き流水型ダムは、2020年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川流域の治水対策の柱として掲げられている。
 建設場所はこれまでの計画と同じ相良村で、高さ107.5m、総貯水量1億3000万t、完成すれば国内最大級の治水専用ダムとなる。
 国と県は7日、水没予定地を含む五木村と建設予定地の相良村を訪れ、ダムの方針について説明。

 五木村の村長や議員からは「ダムの影響が分からない状況では容認できない」、「洪水調節については一定の理解はできるが、住民に
不安がある」などの声が上がった。
 蒲島知事は今後も村の振興を支援するととに、地元に理解を得られるよう説明を続ける方針。