長野原で地域つなぐ蜂蜜酒製造、八ッ場ダムめぐる対立消え 

 八ッ場ダムが建設された長野原町には、吾妻川沿いの古くからの集落と、浅間山麓の高原地帯の開拓地や別荘地があります。この二つの地域は、風土がはっきりと違うだけでなく、ダムを巡って立場が違うことから、同じ町内でも繋がりが薄いと言われてきました。
 八ッ場ダムは吾妻川沿いの集落の多くを水没させたため、かつて町の中心だった川沿いの地域では人口が大幅に減少。一方、浅間山麓の高原地帯では開発が進み、町内での存在感も増しています。現在の町長は浅間山麓の集落の支持を受けて当選しました。ダムが完成し、ダムの是非を議論する段階は過ぎ、ダムを巡る対立も過去のものとなっています。
 ダムを抱える地域を発展させるには、八ッ場ダムによって分断されてきた二つの地域を結束させることが不可欠との認識から、両地域の代表的な実業家が連携してつくった製品売り出しが紙面で取り上げられています。
 吾妻川沿いのダム建設地の上流側で酒造業を営んできた「浅間酒造」は、ダム反対闘争が激しかった昭和40年代、八ッ場ダムを推進した桜井町長の出た家で、地元住民が組織した八ッ場ダム対策委員会の最後の委員長もこの家のご当主でした。一方、浅間高原地帯で観光業等を営む「きたもっく」は、自然環境を生かした様々な事業をアピールしており、八ッ場ダム事業とは距離を置いてきました。
 長野原町内で最も温暖で、花木も多かった吾妻川沿いの広大な地域が失われた中で、地元企業の挑戦が始まっています。

◆2022年1月18日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC11AHA0R10C22A1000000/?unlock=1
ー八ツ場ダムの群馬・長野原、「蜂蜜酒」が地域つなぐー

 群馬県の観光名所、草津温泉に東京方面からアクセスする際の玄関口となる同県長野原町。長野県の軽井沢にも隣接し、八ツ場ダムという存在があるとはいえ、知名度はそれほど高くない。そんな人口5300人ほどの小さな町の異業種2社が協力し、蜂蜜酒の商品化を通じて地域をつなぎ、盛り上げようしている。

 昨年11月、同町内でキャンプ場を手掛けるきたもっくと浅間酒造が共同で蜂蜜酒(ミード)を開発した。養蜂業にも取り組むきたもっくが八ツ場ダムのほとりで採取した蜂蜜を提供し、浅間酒造が酒に仕立てている。

 蜂蜜酒は人類最古の酒とされる。町を二分するほどの論争のもととなった八ツ場ダムが2020年4月に稼働し、長野原町に新たな景色を生み出した。「八ツ場の新しい風景とそこに住む人が長い関係作りをできるように」(きたもっくの日月悠太氏)という願いを込め、共同開発した蜂蜜酒に「八百(やお)」と名付けた。

 八百は水と蜂蜜と日本酒の酵母のみで醸造しており、限りなく無色に近い、透き通った蜂蜜色だ。アルコール度数は6度だが、蜂蜜のすっきりとした甘みも感じられ、アルコールが得意でない人にも飲みやすくなっている。価格は300ミリリットル入りで2695円。

 2019年から養蜂業を始めたきたもっくは、北軽井沢地域を中心に巣箱を移動させたり、季節ごとに分けたりして採蜜する方法が特徴だ。手間はかかるが、蜂蜜をその土地のその季節のものとしてブランド化できる。「百蜜(ももみつ)」の名で販売し、他の企業とコラボして万能だれやビールにも加工している。

 浅間酒造は蜂蜜酒をつくるのが初めてだった。そこで、全国有数の酒どころである福島県に桜井武社長自ら足を運び、日本酒づくりで有名な鈴木賢二氏からノウハウを教わった。コンセプトであるきれいな酒を実現すべく、にごりを抑えることに時間をかけたという。

 両社が手を組む意味は、単なる農商工連携にとどまらない。浅間酒造の桜井社長によれば、「(八ツ場ダムの)水没地区と北軽井沢地区で分断みたいなものがある」。水没地区に近い東部は古くから栄える宿場町、西部は移住者が開拓した浅間山麓で、成り立ちに違いがある。さらには八ツ場ダム建設における論争もあり、町には一体感が欠けていたとの指摘もある。

 東部で長く商売を営み浅間酒造観光センターを運営する浅間酒造と、西南部の北軽井沢地区でキャンプ場運営と林業や養蜂業などで6次産業化を進めるきたもっく。両地域に根ざし、個性の違う両者が連携して新たな商品を開発することで、町の雰囲気を変える流れを生み出すことにもつなげたい考えだ。

 今後、きたもっくが提供する梅と蜂蜜を使った梅酒を開発する構想もある。桜井社長は「長野原でしか作り出せないものを作っていきたい」と意気込んでいる。(田原悠太郎)

◆2022年1月25日 上毛新聞
https://nordot.app/858497346347040768
ー蜂蜜の高級酒を八ツ場の名産に きたもっく✕浅間酒造ー

 群馬県の八ツ場ダム周辺の新しいご当地商品を目指し、キャンプ場運営や蜂蜜製造などを手掛けるきたもっく(長野原町北軽井沢、福嶋明美社長)は、浅間酒造(同町長野原、桜井武社長)と蜂蜜酒を共同開発した。同ダム周辺のトチの花などから集めた蜂蜜をたっぷり入れ、高級酒に仕上げた。

 商品名は「八百 YAO」。ダム湖が見える場所に巣箱を設置して採れた無添加蜂蜜を原料に、水と日本酒の酵母で醸造した。

 アルコール度数6度。1本(300ミリリットル)2695円。400本醸造した。きたもっくの担当者は「癖のない甘さが楽しめる。お酒をあまり飲まない人でも飲みやすい」と話している。

 きたもっくが運営するルオムの森(同町北軽井沢)やルオムの森オンラインストア、浅間酒造観光センター(同町長野原)で販売している。

 問い合わせはルオムの森(電話0279-84-1733)へ。