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「川原湯温泉醸造舎」クラフトビール来月発売

 今朝の地元紙に、「川原湯温泉醸造舎」が来月クラフトビールを発売開始するとのニュースが掲載されていました。
 「川原湯温泉醸造舎」は八ッ場ダム事業でダム湖畔につくられた地域振興施設「川原湯温泉あそびの基地NOA」に入ったテナントで、NOAのグランピングや温泉施設も運営する東京の有限会社、イノーバー・ジャパンが立ち上げました。
 以下の記事によれば、クラフトビールの名称は「八ッ場ダム建設で湖に沈んだ二つの岩と、湖畔の山から採用」とのことです。ふたつの岩は「臥龍岩」は「がりゅういわ」、「昇龍岩」は「しょうりゅういわ」とフリガナがふられていますが、ダムに沈んだこの天然記念物(1934年指定)は、以下の文化遺産オンラインにも書かれているように「しょうりゅうがん」と「がりゅうがん」という呼び名で、合わせて「川原湯岩脈」といいます。

★文化遺産オンライン
 https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/160798

 長野原町誌によれば、この二つの岩は吾妻川の左岸に露出していたため、もとは左岸側の地名(林地区久森)をとって「林岩脈」「久森岩脈」とされていましたが、群馬県が岩脈を川原湯温泉の観光資源として活かそうと、天然記念物として指定される前に地主の浦野家の承諾を得て名称を「川原湯岩脈」に変更したということです。
 しかし、「川原湯岩脈」はダム事業が進むにつれて、いずれは沈むからと地元でも顧みられなくなりました。湖底に沈んだ今は名称すら忘れられつつあるのでしょうか。

◆2022年3月24日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/91585
ー八ツ場にクラフトビール4種 名称にゆかりの岩、山 来月発売ー

 長野原町の八ツ場あがつま湖畔にあるクラフトビール(地ビール)の醸造所「川原湯温泉醸造舎」が稼働を始めた。地元関係者向けの試飲会が23日開かれ、川原湯地区ゆかりの岩と山の名称を冠した4種類のビールが振る舞われた。4月から一般向けの試飲や販売を始める。

 ホワイトエールの「臥龍岩がりゅういわ」は小麦を使った爽やかな味わいで、バナナのような香りが特徴。ゴールデンペールエールの「昇龍岩しょうりゅういわ」はホップの香りを感じ、クラフトビールが初めての人も飲みやすい。濃色アンバーラガーの「金花山きんかざん」は焙煎ばいせん麦芽を使い、深みのある味わい。ゴールデンラガーの「金鶏山きんけいざん」はのど越しが良く、すっきりしている。

 醸造所は、湖畔の観光施設「川原湯温泉あそびの基地NOA(ノア)」内にある。川原湯温泉駅キャンプ場(新保孝三代表)を運営するイノーバー・ジャパン(東京都)が施設の一部を借り、酒類製造免許を持つアウグスビール(同)が製造する。町内の水道水は浅間山の伏流水が使われ、醸造家からも高い評価を得ており、醸造に活用した。

 名称は、八ツ場ダム建設で湖に沈んだ二つの岩と、湖畔の山から採用した。新保代表(64)は「沈んだ岩は地元の人が毎日見ていた景色だった。この次のビールにも川原湯に由来する名前を活用させてもらえたら」と話している。

 試飲会の参加者たちは4種類のビールを飲み比べ、「全部おいしい」「癖がなくて飲みやすい」などと楽しんでいた。出来栄えについて、アウグスビールの坂本健二社長(67)は「4種類ともそれぞれ味のバランスが良く、目指していたビールに仕上がった」と評した。

 1杯500円ほどの予定。醸造所のほか、川原湯地区のキャンプ場やカフェ、旅館などでも味わえる。持ち帰り用にボトルや瓶での量り売りもする。

◆2022年3月31日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC29B270Z20C22A3000000/
ー群馬・八ツ場でクラフトビール、関東の水源から新名産にー

 群馬県の八ツ場ダム周辺の活性化につなげようと、新たなクラフトビールが誕生した。同県長野原町が建設した観光施設「川原湯温泉あそびの基地NOA(ノア)」にこのほどビール醸造所が完成。4月中にオリジナルビール4種の販売を開始する。関東の水源として伏流水や地元産の原料にこだわり、名産品に育てたい考えだ。

 2020年8月に開業したノアは、JR吾妻線の川原湯温泉駅から徒歩1分程度。八ツ場ダム湖の「八ツ場あがつま湖」の湖畔に位置する。キャンプ場やバーベキュー場、日帰り温泉、カフェなどが入っており、八ツ場ダム周辺の新しい観光スポットの一つだ。

 クラフトビールの製造拠点となる醸造所「川原湯温泉醸造舎」は、ノアの建物内の空いたスペースを活用して21年12月に完成した。バーベキューやキャンプといったアウトドア事業などを手掛け、ノアのキャンプ場も運営しているイノーバー・ジャパン(東京・台東)が醸造所の運営を担う。ビールの生産はアウグスビール(東京・文京)の醸造家に委託する。

 21年12月に300リットルの発酵タンク2基などを設置し、1月から醸造を開始。第1弾としてエールビール2種、ラガービール2種の計4種のクラフトビールを造った。

 エールの名称は「臥龍岩(がりゅういわ)」と「昇龍岩(しょうりゅういわ)」、ラガーの名称は「金花山(きんかざん)」と「金鶏山(きんけいざん)」。八ツ場ダムの建設で湖に沈んだ岩と川原湯温泉の周辺にそびえる山から取った。

 初年度から年間1万リットルの生産を計画しており、4月中にはノアで試飲や販売を始める予定。併設するキャンプ場やバーベキュー場での提供や川原湯温泉の旅館・飲食店でも取り扱ってもらう方針で、将来は瓶詰めして土産としても展開を予定する。

 八ツ場ダムは建設過程における大きな論争で注目を集めた。ただ知人の紹介でノアの建設・運営に携わるようになったイノーバー・ジャパンの新保孝三会長は、同町に足を運ぶ間に周辺の自然や生活環境に魅了されたという。「目の前にある(湖の)水は、関東の水源。ビールで川原湯温泉に目を向けてもらえるようなきっかけをつくりたかった」と話す。

 ビールは川原湯温泉エリアの伏流水を使うなどこだわる。アウグスビールの坂本健二社長は「天然の良い水が使えるというのは、(ビールづくりにとって)とても大きな要素」と話す。

 今後は地元で採れたホップや牛乳などの原料を使って、この地ならではの新たなビールの製造も計画している。新保会長は「長野原の新しい名産になれば」と意気込む。川原湯温泉協会の樋田省三会長は「川原湯温泉だけではなく、ダム湖一帯の名脇役になって欲しい」と期待感を示す。

—転載終わり—

写真=吾妻川に横たわる龍のようだった臥龍岩。国道の久森隧道のかなたに、山懐の川原湯温泉街があった。2014年11月18日。水没地の国道はこの日に閉鎖された。

写真=吾妻川のこのあたりでは岩脈のほかに枕状溶岩など様々な貴重な景観を見ることができた。