国交省がが正式に提示、川辺川ダム完成予定は2035年度、球磨川の治水対策4336億円

 さる3月28日、国土交通省九州地方整備局は、熊本県を流れる球磨川の治水対策に関する有識者懇談会を開催しました。
 この会議で、同局は2020年7月の球磨川水害を機に復活させた川辺川ダム計画を2035年度までに完成させる予定であることを初めて正式に発表しました。国土交通省は専門家や流域住民の意見を踏まえて球磨川の河川整備計画を策定することになっていますが、報道でも伝えられているように、国交省が選別した専門家からは国交省の方針に反する意見は出ず、流域住民の意見は形式的に聞くだけですから、何か特別なことがなければ国交省の提示する方針通りに治水対策が実施されることになります。

 以下の九州地方整備局八代河川国道事務所のホームページに大部の配布資料が掲載されています。
 http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/river/gakusiki_kondankai/index.html

 球磨川水系学識者懇談会
 開催資料 [ PDFファイル]
 令和3年度 第4回 球磨川水系学識者懇談会 令和 4年 3月28日開催
 【議事次第、委員名簿、座席表、設立趣旨、規約、公開方法、資料1(1/3)、資料1(2/3)、資料1(3/3)、資料2、資料3、資料4(1/5)、資料4(2/5)、資料4(3/5)、資料4(4/5)、資料4(5/5)、資料5(1/4)、資料5(2/4)、資料5(3/4)、資料5(4/4)、資料6、資料7、参考資料】

 関連報道の数字を見ると、ダムの事業費は概算でおよそ2700億円です。旧計画による川辺川ダム事業の中で、すでに用地買収や住民の移転補償におよそ2200億円が投じられているため、全体でおよそ4900億円のダム事業になる見込みです(NHK)。
 共同通信は国土交通省が、2020年7月と同程度の雨が降った場合、全治水策が完了していれば人吉市街部で浸水範囲を約83%減らせるという見積もりを示したと伝えています。

 球磨川では、ダム以外の河川事業に約1,636億円の費用がかけられることになっています。

 球磨川水系河川整備基本方針の変更に係る説明資料(令和3年12月)
 17ページ「河川対策 (約1,636億円」)

 川辺川ダム計画と合わせると、これから1636億円+2700億円=4336億円が球磨川に投じられることになります。けれども、球磨川流域で最も大きな都市である人吉市の市街部では、これだけの税金を投じても、2020年7月と同程度の雨が降った場合、浸水範囲が約17%残るというのです。それも、ダムが完成するのは順調に進んだとしても今から10年以上先の2035年度です。
 巨額な税金を費やす治水対策として、何かおかしくありませんか。治水対策の進め方に根本的な誤りがあるように思えてなりません。

 関連記事を紹介します。

◆2022年3月28日 共同通信
https://nordot.app/881105966159724544?c=39546741839462401
ー川辺川のダム、35年度完成へ 全治水策の整備で浸水83%減ー

 2020年7月の豪雨で氾濫した熊本県の球磨川の治水策として、支流・川辺川で建設が計画されている「流水型ダム」の完成時期に関し、国土交通省は28日、専門家との会合で、35年度を予定していると明らかにした。22年度に環境に与える影響を調べる作業に着手し、27年度の本体工事開始を見込む。

 国交省によると、ダム完成後も上流部の河道掘削や、下流部の高潮対策といった工事を継続。計画する全ての治水策を整備するまでに約30年かかるという。20年7月と同程度の雨が降った場合、全治水策が完了していれば、人吉市街部で浸水範囲を約83%減らせるとの見積もりも示した。
 

◆2022年3月28日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/604629
ー川辺川の新ダム、国交省「35年度完成めざす」 近く河川整備計画原案作成ー

 国土交通省は28日、2020年7月豪雨で氾濫した球磨川水系の治水策を議論する学識者懇談会を熊本市で開き、支流の川辺川に建設する治水専用の流水型ダムについて35年度の完成を目指すと明らかにした。環境影響評価(アセスメント)や調査設計、関係者との調整に今後5年程度をかけ、27年度のダム本体着工を見込む。

 国交省と熊本県は、新たな流水型ダムを柱とする球磨川水系の河川整備計画の原案を近く作成し、4月にも地元住民の意見聴取を始める。河川法に基づく手続きで、流域12市町村で公聴会を開くほかパブリックコメントも実施。ダムに対して賛否両論がある流域住民が、国や県の治水プランをどのように受け止めるかが焦点となる。

 今後30年程度の治水策を盛り込む河川整備計画では、人吉市で「50年に1度」の大雨を安全に流すことを目標にする。新たな流水型ダムを軸に、既存の市房ダム(水上村)の再開発や複数の遊水地の整備、河道掘削などを推進。対応可能な流量を、現状の約2倍の毎秒7600トンまで引き上げる。

 家屋への浸水を防ぐ輪中堤の整備や宅地かさ上げは、球磨川中流域にある球磨村、芦北町、八代市坂本町の計6地区で実施。さらに五木村を含む13支川の流域でも取り組む。

 国交省九州地方整備局によると、球磨川流域では流水型ダムが完成した後も水害リスクが残るため、治水策の進展に応じて浸水想定範囲を示す自治体マップを作成する。例えば、人吉市では緊急対策事業が完了する29年度時点でも「10年に1回」の大雨で約100ヘクタールが浸水する恐れがあり、避難の迅速化などソフト対策も強化する。(内田裕之)

◆2022年3月28日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASQ3X6T45Q3XTIPE02F.html?iref=pc_ss_date
ー川辺川の流水型ダム、2035年度完成見込み、委員から前倒し望む声ー

 2020年7月の記録的豪雨で氾濫(はんらん)した球磨(くま)川(熊本県)流域の治水対策について、国土交通省は28日、今後30年間かけて進める治水対策案を明らかにした。支流の川辺川に治水専用の流水型ダムを35年度の完成を目指して建設するほか、遊水地の造成や河道掘削などが含まれる。

 熊本市であった専門家委員会で説明し、承認された。流水型ダムは22年度から5年間で環境影響評価(アセスメント)や漁協との調整を終え、27年度から4年間で掘削工事、31年度から5年間でダム本体工事の完了を見込む。

 こうした対策案について、小松利光委員長(九州大名誉教授)は「球磨川の治水対策はダムが肝。この10年で気温が上がり、大型の線状降水帯が球磨川を襲う可能性があるため、できるだけ前倒しでお願いしたい」と国に要望した。

 流水型ダムを含む治水対策について、国と県は4月初旬に球磨川流域の市町村のホームページなどで公表する予定。その後、パブリックコメントや公聴会などを経て修正し、河川整備計画を策定するという。(長妻昭明)

◆2022年3月28日 NHK熊本放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/k/kumamoto/20220328/5000015132.html
ー「流水型ダム」令和17年度完成目指す 国が正式に提示ー

 おととし7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策のもとになる河川整備計画の策定に向け専門家から意見を聞く会が開かれ、治水対策の柱のひとつとして計画されている「流水型ダム」について、国は、令和17年度の完成を目指すことを正式に示しました。
 国や県は、おととし7月の豪雨を受けて球磨川流域での治水対策のもとになる河川整備計画の策定を進めていて、28日は熊本市で土木工学や環境などが専門の学識経験者ら11人から意見を聞きました。

 このなかで、国は、球磨川流域での治水対策の柱のひとつとして、従来の川辺川ダムの予定地だった相良村に建設する計画の「流水型ダム」について、令和17年度の完
成を目指すことを正式に示しました。
 具体的には、来年度からの5年間で環境影響評価などの調査やダムの設計などを行い、その後、9年かけてダム本体の工事を行うということです。
 またダムには開閉式の「可動ゲート」を設け環境への負荷を軽減する構造とすることや、河川の掘削や遊水地の整備も実施することなどを盛り込んだ治水対策のもとになる、河川整備計画の素案も示されました。

 こうした対策によって、おととしの豪雨と同じ規模の雨が降ったとしても、下流の人吉市で水が堤防を越えないことを想定しているということです。
 専門家からは、「球磨川流域の安全安心のため流水型ダムの計画はできるだけ前倒しで進めてほしい」などの意見が出されていました。

 国は、専門家や住民などの意見を聞いたうえで、流水型ダムや遊水地の整備などを進める河川整備計画を今後、策定することにしています。

 球磨川の治水対策として支流の川辺川で検討されている「流水型ダム」は、国が従来の川辺川ダム計画の予定地の相良村に整備する方針です。
 高さは107.5メートル、総貯水容量はおよそ1億3000万トンで治水専用のダムとしては国内最大規模となります。
 ダムの下部と中間部には開閉式の「可動ゲート」が設けられていて、ふだんは川の流れをとめないようにダムの下部に開いた穴から水を流しますが、大雨の際には下部のゲートを閉めて水をため、中間部のゲートを操作して放流する水量を調節します。
 ふだんは川の水が流れているため環境への影響は小さいとされています。

 ダムの事業費は概算でおよそ2700億円で、すでに用地買収や住民の移転補償におよそ2200億円が投じられているため全体でおよそ4900億円のダム事業になる見込みです。

 球磨川の治水対策の柱のひとつとして検討が進められている「流水型ダム」の完成時期が提示されたことについて、球磨村の仮設住宅に住む60代の男性は「環境影響評
価や地権者の了解などが必要だと思うので、14年かかるのもしかたがないと思う。完成までのめどがわかり、少しは励みにもなったしそれまでは頑張ろうと思う」と話
していました。

 また、80代の女性は「14年は長いと感じる。私たちは高齢なので、もういないかもしれないし、それまでに発生する災害をどう防ぐのか、対策を進めてほしい」と話
していました。
 一方、70代の女性は、「ダムがあったとしても水害を防くことはできないと思うので、ダムは必要ないと思う」と話していました。