川辺川流水型ダム計画で環境影響調査審査会、現地視察

 球磨川支流の川辺川に新たに計画された流水型ダム。この新・川辺川ダムの環境への影響を評価する熊本県の審査会の初会合が4月21日に開かれ、会のメンバーによる現地視察が行われました。

 流水型ダムは、ダム堤に穴があり、洪水の時以外は川の水が流れますので、通常の貯水型ダムより河川環境への影響が少ないことが期待されています。かつてのダム計画では、建設の主目的が都市用水、農業用水の供給や発電など、貯水を必要とする利水目的が多かったのですが、近年のダムは利水目的がない治水専用ダムが増えています。このため、洪水時のみ貯水する「流水型」が増えているのですが、川辺川ダムは以下の記事に書かれているように、これまでわが国でつくられてきた流水型ダムよりはるかにスケールが大きいものとなります。(既設の流水型ダムで最大なのは益田川ダム、貯水容量675万㎥)

「国内最大の流水型ダムとして建設中の足羽川[あすわがわ]ダム(福井県)も、総貯水容量は約2870万トンだ。川辺川新ダムの総貯水容量はその約4・5倍。巨大な流水型ダムは前例がなく、環境への影響は未知数と言わざるを得ない。」(熊本日日新聞、2021年12月9日)

 既設の流水型ダムは、「水がたまっていないので、イノシシなどの運動場になっている」(4/20付け佐賀新聞「城原川ダム「貯水型」へ変更模索 神埼市長に当選の内川氏意向」)という指摘もあるように、私たちの身近な自然とは異なるものになっているようです。

 流水型ダムではダム完成後は、土砂の堆積という重大な問題が生じます。大きな洪水が来るたびに、水没地に大量の土砂、土石が上流から流れ込み、堆積して、水没地の状況が大きく変化していきます。 川辺川で巨大な流水型ダムがつくられることによって川の自然環境がどうなっていくのか、審査会の委員たちが思考できる範囲を超えているのではないでしょうか。

 川辺川の流水型ダムの完成予定は13年後の2035年度ですが、ダム事業は大抵遅れるものですから、完成はさらに後になるでしょう。審査会の委員たちの中で、完成後の状況変化を確認して責任をとれる人がいるでしょうか? 巨額の河川予算を得ること自体を目的にした問題先送りの巨大公共事業がまかり通っているように思われてなりません。

 関連記事を転載します。

◆2022年4月21日 NHK熊本放送局
ー流水型ダム計画で専門家が現地視察 環境への影響調査ー

 おととし7月の豪雨で氾濫した熊本県の球磨川の治水対策の柱のひとつで、支流の川辺川に建設される予定の新たな流水型ダムについて、環境への影響を調べるため専
門家らの現地視察が行われました。

 おととし7月の豪雨を受けて、国は従来の川辺川ダムの予定地だった相良村に、令和17年度の完成を目指して新たな流水型ダムを建設する計画で、蒲島知事の意
見も踏まえて環境アセスメントと同様の手順で、周辺環境への影響調査や評価を行う予定です。

 21日は、生態系や水質に詳しい専門家ら13人が、ダムの建設で一部が水没する予定の五木村を訪れて、周辺の環境などを視察しました。

 午後からは人吉市で審査会が開かれ、国がまとめた「環境配慮レポート」には、流水型ダムは平常時は水が流れるものの洪水時に水をためるため、川底から浮上し
た濁りで下流の環境に影響を及ぼす可能性があるという説明がありました。

 これについて委員などからは、魚の生態系が変化する可能性もあるので注意をして調査すべきとか、ダムが完成して試験的に水をためる際に、コウモリなどが生息す
る五木村の洞窟、九折瀬洞では生物の逃げ道を設けるなど対策を考えてほしいなどの意見が出されていました。

 この日出された意見を踏まえて、蒲島知事が、6月末をメドに意見を提出し、国が、3年後から4年後をメドに環境影響評価の結果を公表する見通しになっています。

◆2022年4月22日 くまもと県民テレビ
ー流水型ダムの環境への影響を評価する審査会が初会合 建設予定地を現地調査ー

 川辺川に建設予定の流水型ダムの環境への影響を評価する審査会の初会合が、21日に開かれ、委員が五木村や相良村を視察した。

現地を視察したのは、環境影響評価審査会の委員15人のうちの9人と外部の有識者4人だ。

一行は、五木村の水没予定地につくられた公園五木源パークで、航空写真を見ながらダムが最も水を貯えた際の範囲や水位などについて説明を受けた。

現地視察の後の初会合では、オンライン参加の委員が加わり、国交省の担当者から周辺に生息する生物や予定される工事の環境への配慮について説明を受けた。

委員からは「ダム完成後に試験的に水をためた時に生物への悪影響はないか」、「流水型ダムのトンネルを魚が往来できるか」との疑問や「先に流水型ダムができた河川の状況を知りたい」との意見が出された。

この審査会は、環境影響評価法に基づく評価と同等の評価を望む蒲島知事の意向で開かれるもので、審査会や市町村、県の各部署から意見を集約して6月末頃、国へ提出される予定だ。

◆2022年4月24日 テレビ熊本
ー県の環境影響評価審査会は流水型ダムについて五木村で現地調査ー

 県の環境影響評価審査会は川辺川に建設が計画されている流水型ダムについて五木村で現地調査を実施しました。
 審査会は県内外の大学教授らで構成され、流水型ダムの建設で水没する予定地の五木村を視察しました。
 この後、委員らは人吉市で審査会を開き、ダムが環境に与える影響について意見を交わしました。
 委員からは「工事期間中は生物の往来は可能なのか、生物への影響も調査する必要がある」、「斜面で土砂災害が発生しないよう配慮して欲しい」など意見や要望がありました。
 県は今回の審査会を踏まえ6月下旬に国へ意見を提出する予定です。

◆2022年4月22日 人吉新聞
ー流水型ダム 環境影響は 五木村水没予定地も視察ー

 人吉球磨地域など球磨川流域に甚大な被害をもたらした「令和2年7月豪雨」の発生を受けて、相良村四浦の川辺川上流に整備が検討されている新たな流水型ダムに係る環境影響評価(環境アセスメント)の第1回審査会が21日、人吉市上青井町のホテルサン人吉で開かれ、各分野の委員は生態系など環境への影響について意見を交わした。

 流水型ダムの環境影響評価は、平成11年の環境アセス法施行前から川辺川ダム関連工事を進めているため同法の対象外となるが、国は蒲島郁夫県知事からの要望を踏まえてアセス法と同等の環境影響評価を実施すると発表。

 昨年6月、水環境や動植物等の専門家10人で構成する「流水型ダム環境保全対策検討委員会」が影響調査の手続きに入り、先月9日に環境保全対策検討委員会でアセス法の「配慮書」に相当する環境配慮レポート案を承認。25日に公表し、同日付けで蒲島知事へ意見照会を行うなど意見聴取の手続きを開始した。
 これを受けて、県は国と同様に丁寧な調査および審議を行うため、今回の審査会を実施。蒲島知事は同審査会や球磨川流域12市町村長の意見等を集約し、6月下旬に国土交通省へ意見書を提出する予定という。

 21日は午前中に五木村の現地調査が行われ、委員9人と外部有識者4人が川辺川ダムの水没予定地に建設された五木源パーク、九折瀬洞周辺、ダム提体建設予定の上流を見て回った。
 五木源パークでは、国交省川辺川ダム砂防事務所の嶋田剛士調査課長が貯留型の川辺川ダム建設に伴う水没予定地の利活用状況、新たに計画されている流水型ダムの洪水調整時に貯水した場合の状況等を説明した。

●試験湛水期間短縮を
 午後からはオンラインで参加した委員3人を加え、同ホテルで環境配慮レポートについて審議。
 ダム完成後の試験湛水に関して「期間を極力短くするよう検討を進めてほしい」といった要望があり、国交省は「計画の高さまで水位を上げて構造物や放流設備の能力のチェックなどを行う。湛水の方法や水をためる時期についてもこれからしっかりと検討し、ある程度短くする手法にしていく」と答えた。
 その他、水没予定地内にある施設の水没頻度、生物の生態、他所の流水型ダムが完成した後の生態系への影響などについて質問や意見があった。
 今後、国交省は環境影響評価の各段階で蒲島知事や流域市町村、住民等からの意見を求め、同法の「評価書」に相当する環境影響評価レポート(仮称)の作成を目指す。