国の肱川河川整備計画変更案、学識者会議が了承

 国土交通省四国地方整備局が計画している山鳥坂(やまとさか)ダムは、愛媛県を流れる肱川水系に建設される予定です。

 山鳥坂ダムは昨年12月に従来の計画が大きく変更されました。 写真=愛媛県大洲市を流れる肱川。

 山鳥坂ダム計画は、これまでのダム建設予定地周辺に大規模な地滑り対策が必要な岩盤があることが判明したため、建設地を約400メートル上流に変更することになりました。それに伴い、完成時期が当初予定の2026年度から32年度に変更され、総事業費が約470億円増の約1320億円に増額されました。
〈参考記事〉➡「山鳥坂ダム計画変更(工期6年延長、事業費470億円増)」

 山鳥坂ダム計画の変更により、ダム計画の上位計画である肱川河川整備計画(肱川水系における今後30年間の治水対策を具体的に定めるもの)の変更が必要になりました。国交省四国地方整備局は変更案を審議する学識者会議を4月22日に開催しましたが、形式的な審議を行っただけで変更案は了承されました。

 関連記事を転載します。

◆2022年4月22日 愛媛新聞
ー四国地方整備局と県 肱川河川整備計画の変更案を提出 学識者会議で了承ー

 国土交通省四国地方整備局と愛媛県は、具体化が進んだ治水対策の進捗(しんちょく)状況を反映させる目的で変更手続きを進めている肱川水系河川整備計画の変更案を作成し、22日、肱川流域学識者会議(議長・鈴木幸一愛媛大名誉教授、14人)に提示した。委員から内容への異論は出ず、変更案を了承した。

 変更案には、1月に公表した変更原案に対する住民説明会や公聴会、意見公募(パブリックコメント)などでの指摘や要望を一部反映させた。野村ダム(西予市)の改良事業における環境配慮や肱川支流・河辺川で進む山鳥坂ダム建設に伴い、ダムを活用した地域振興に努めることなどを追加で明記する。

 会議では、事務局の大洲河川国道事務所が計画の内容などに関し、流域住民から計519件の意見が寄せられたと報告。意見は要約し、対する行政側の考え方を委員らに説明した。委員からは、住民理解を十分に得るため、資料など必要な情報の徹底開示やダムの効果を表す試算などにおける前提条件を強調することを求める声が挙がった。

 大洲河川国道事務所によると今後、住民の意見に対する国や県の返答のほか、山鳥坂ダムの建設予定地変更の経緯や河川整備計画の目標流量の検討方法などよくある質問について、ホームページで閲覧できるようにする。

—-転載終わり—

 肱川水系にはすでに国直轄ダムとして、野村ダムと鹿野川ダムがあります。両ダムは2018年の西日本豪雨の際に、短時間に満水となって緊急放流を行った結果、ダム下流の水位が急上昇、流域に甚大な被害をもたらしました。近年、集中豪雨が多発する中で、ダムによる洪水調節の難しさを示す災害でした。
 肱川水系では山鳥坂ダム事業が推進される一方で、河川改修などの地道な治水対策が疎かになっていました。肱川の大水害は治水対策を見直す好機でしたが、国は事業費が膨らみ、完成に時間がかかる第三のダム建設に邁進しています。
写真右=野村ダム貯水池

 山鳥坂ダムは2000年に自民党・公明党・保守党の与党3党が中止を勧告したものの、ダム建設を推進する加戸守行愛媛県知事(当時、故人)らの巻き返しにより継続が決まった、いわくつきのダムです。治水効果が期待できないだけでなく、ダム偏重の河川水害を拡大させる危険性が懸念されています
 
 国交省四国地方整備局が学識者会議に提出した一連の資料は、同局大洲河川国道事務所のホームページに掲載されています。今回の整備計画の変更にあたり、パブリックコメントを行い、公聴会を開いて住民の意見を聞いたことになっていますが、その結果(参考資料1,2)を見ると、ダム行政の推進を求める意見が並んでいます。
 肱川水系では、山鳥坂ダムの中止を求める市民団体や、肱川水害訴訟原告団(2018年7月の西日本豪雨の野村ダム・鹿野川ダムの緊急放流の被災者)があり、山鳥坂ダム計画に対して根強い反対の声がありますが、パブリックコメントや公聴会がセレモニーにすぎない実態を反映して、多くの住民は行政任せになっているのでしょうか。

〇国土交通省四国地方整備局大洲河川国道事務所ホームページより
 肱川流域学識者会議  第7回 (令和4年4月22日開催)

資料-1 議事次第等

資料-2 学識者及び関係住民の意見とその対応について 
      及び肱川水系河川整備計画(変更案)について

資料-3 肱川水系河川整備計画変更案(事業再評価) 
      山鳥坂ダム建設事業

資料-4 よく頂く質問・意見に対する回答について

参考資料1 R4.1.20公表 「肱川水系河川整備計画【中下流圏域】(変更原案)」対する意見とその対応

参考資料2 関係住民の意見 

参考資料3 肱川水系河川整備計画(変更案)

参考資料4 対比表 変更原案vs変更案(修正箇所抜粋)

参考資料5 山鳥坂ダム建設事業 事業再評価


写真=野村ダム。2022年4月11日撮影。

写真=野村ダムの緊急放流後、ダム下流の野村町が大水害となった。4/11撮影。