2年遅れの八ッ場ダム完成記念式典

 八ッ場ダムは2020年3月に完成しましたが、コロナ感染拡大により、通常であれば行われる完成式典や竣工式がないまま2年余が経過しました。
 このほど、ようやくコロナ禍が一段落したことを受け、先に地元の長野原町がイベント開催を企画し、それに応じて国土交通省が地元に感謝する式典を開催する運びとなりました。

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 祝賀行事であるからか、ボリュームがある割には表面的な報道が多いように思われますが、毎日新聞はどれほど町や県、国が持ち上げても変わらない水没住民の冷めた視線を、住民の声として次のように伝えています。

「多くの住民はダム湖を目玉に観光客が集まると思い描いていたが、今はそうなっていない。区切りとしての式典は必要だろうが、生活は何も変わらない」

◆2022年5月29日 上毛新聞紙面より転載
ー八ッ場ダム完成記念式典 地元協力に感謝 国交省 コロナ影響、2年遅れでー

 八ッ場ダム(長野原町)の完成を記念する、国土交通省関東地方整備局主催の記念式典「感謝のつどい」がが28日、同町のダム管理支所内駐車場の特設会場で開かれた。ダムは2020年3月に完成。竣工後の式典は新型コロナウイルス下で2年間見送られ、地元住民ら関係者に感謝を伝える催しとして企画された。

 式典で斎藤鉄夫国土交通相は、ダム建設のために土地を提供した町民ら関係者の協力に感謝した。19年の台風19号でダムが利根川の水位低下に役立ったことに触れ、「今後もダムが流域の安全確保や生活基盤の安定に貢献し、観光資源として地域の活性化に寄与することを願う」と期待した。山本一太知事は「何世代にもわたり苦労した地元の理解があってこその事業で、生活支援に引き続き取り組む」と強調した。

 長野原町の萩原睦男町長は「完成までの68年という長い時の中で生まれたつながりを大切にしたい」とあいさつ。高山欣也前町長は「今後は住民とともに、にぎわいの八ッ場あがつま湖となるよう努めたい」と述べた。

 地元代表者のほか、長野原、東吾妻両町や、県、下流都県の関係者、国会議員ら約300人が出席。セレモニーでは、斎藤国交相や山本知事らがダムの点検放流のボタンを押したほか、くす玉割りやテープカットで完成を祝った。

 終了後、ダム周辺では長野原町主催の町民限定イベント「八ッ場ダムフェスタ」が開かれた。

特別な放流に歓声 長野原町民限定フェスタ

 八ッ場ダム(長野原町)の完成記念式典に合わせ、町主催の町民限定イベント「八ッ場ダムフェスタ」が28日、ダム直下のスペースで開かれた。町民400人がダム最上部にある非常用の放流設備「クレストゲート」からの点検放流や、ステージの演目を楽しんだ。

ー八ッ場完成式典に合わせ 音楽やダンス ステージ多彩ー
 クレストゲートは大雨でダムが満水になって緊急放流をする際に使い、点検以外で開けることはめったにない。国土交通省の協力で八ッ場ダムでは初めて放流を一般向けに公開した。

 カウントダウンに合わせて4門のゲートが開くと、大量の水が大きな音と共に堤体を白く染めながら約100㍍流れ落ちた。町民は歓声を上げ、最上部からの放流の迫力をスマートフォンやカメラを向けて映像に収めていた。
 
 ステージでは、群馬オペラ協会が自然と人間との共生をテーマにした本県初の歌劇「みづち」の楽曲などを披露。地元の上州應桑関所太鼓や長野原ジュニアダンスクラブが出演したほか、町が2019年に作成したダムのPR動画で、「故郷」をうたったシンガー・ソングライターの奇妙礼太郎さんが弾き語りをした。

 家族3人で訪れた鈴木希資さん(30)=同町大津=は「ダムの下に来たのは初めて。大勢で集まる機会がなかったので、こういうイベントは楽しい」と笑顔。金子和代さん(60)=同町川原湯=は、「多くの人の苦労の末に完成したダムを見ることができた。記念イベントができたこともうれしいし、安心した」と話した。

 新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、規模を縮小して開いた。

◆2022年5月27日 朝日新聞
ー八ツ場ダム転機 翻弄された過去、完成から2年 観光地化へ「区切りに」 あす完成イベントー

 国の政策に長く翻弄(ほんろう)され、住民の賛否は二分されてきた。民主党政権下では「脱ダム」の象徴となるなど紆余(うよ)曲折の歴史もたどった。そんな八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)が計画から68年の年月をかけて完成。2年がたち「周辺を一大観光エリアにしよう」という動きが活発になっている。

 「うわー、すごい迫力だね」。大型連休の最終日だった8日。そびえるダムを見上げ、歓声を上げる大勢の観光客の姿があった。

 東京都練馬区の今井茜さん(45)は「昔、話題になったところだったので、一度来てみたかった」。息子の健朗君(9)は新緑の山に囲まれた巨大なダムの姿に「(スタジオ)ジブリの世界みたい」と喜んだ。

 ダムの総事業費は約5320億円。国内のダム史上で最高額だった。2020年3月に完成し、同7月から、見学者向けにダムの本体の一般開放が始まった。国土交通省の利根川ダム統合管理事務所(前橋市)によると、来場者は20年度が約22万人、21年度も約20万人と人気だ。

 ダム完成とともに誕生した「八ツ場あがつま湖」では湖を周遊する水陸両用バスに人気が集まる。満席になる日も少なくないという。

 ダム以外にも、ダムの水を利用する都県の基金でさまざまな施設が造られた。

 とりわけ連日にぎわっているのが、ダム完成前の13年にオープンした「道の駅 八ツ場ふるさと館」(事業費約8億円)だ。今年の大型連休の10日間(4月29日~5月8日)は、コロナ禍前の19年から143%増の約4万7千人が訪れた。近くには滑り台などがある公園もあり、子どもたちにも人気だ。

 「観光資源としての八ツ場ダムのポテンシャルは高い」

 こう語るのは、地元の川原湯温泉協会の樋田省三会長だ。理由の一つは、アクセスの良さだ。

 国道沿いにあって、全国的に人気の草津温泉が車で30分ほどだ。20年には、キャンプ場や温泉などがある「川原湯温泉あそびの基地NOA(ノア)」(約23億円)、飲食・土産店「八ツ場湖(みず)の駅 丸岩」(約10億円)、「やんば茶屋」(1億4千万円)の3施設が次々とオープンした。3施設は開業時期がコロナ禍と重なったこともあり、道の駅は年間100万人が訪れるのに対し、1万人ほどにとどまる施設もある。NOAの社長でもある樋田会長は「連携して盛り上げていきたい」と意気込む。

 今月28日には、コロナ禍で延期されていたダム完成イベントがようやく開かれる。国の式典に続き、町のイベントが開かれる予定で、和太鼓演奏やダンスなどのステージが披露される。

 ■地元、なお思い交錯
 1952年に建設計画が浮上して以来、複雑な歴史をたどってきただけに、地元ではいまなお、さまざまな思いが交錯している。60代の男性は「家がダムに沈み、元通りの生活に戻ったとは言えない。自分の中ではダム問題は終わっていない」と語る。ただ、「ダムは完成したが、節目のイベントがなく、心の整理がつかない住民がいるとの声がある。イベントを一区切りに、前に進めたい」とも地元・長野原町の関係者は話す。

 ダム完成とともに、町の行政も節目を迎えた。前身の「ダム助役」を含め、32年続いてきた「ダム担当副町長」職は5月末で廃止されることが決まった。ダム問題に長く取り組んできた「ダム対策課」もこの春、ほかの課と統合し「未来ビジョン推進課」となった。

 ダムの建設で水没した地区やその周辺の470世帯が移転対象となった。国が用意した町内の代替地に残ったのは98世帯。町外に移った人も多い。長野原町も、人口減少が進む地方の市町村と変わらない。

 4月の町長選で3選した萩原睦男町長(51)は言う。「八ツ場と言うと、これまで『問題の施設』というイメージがついて回っていた。今度のイベントは、『問題』から『観光のブランド』へ変える新たな出発点にしたい」(前田基行)

 ◆キーワード
 <八ツ場ダム> 群馬県長野原町、利根川支流の吾妻川に2020年3月に完成した総貯水量1億750万立方メートルの多目的ダム。大雨の時に水をためるほか、下流域の水道や工業用水の確保、発電にも使う。1947年のカスリーン台風で利根川の堤防が決壊したことを受けて計画が浮上し、地元で激しい反対運動が起きた。2009年には「コンクリートから人へ」を掲げた当時の民主党政権が建設中止を打ち出すなど混乱が続いた。

◆2022年5月29日 朝日新聞
ーくす玉や放流で祝う 八ツ場ダム、2年遅れの完成イベントー

 八ツ場ダム(群馬県長野原町)の完成を祝うイベントが28日、コロナ禍のため2年遅れで現地で開かれた。

 国の式典「感謝のつどい」には、国土交通省の斉藤鉄夫大臣や山本一太知事、県選出の国会議員、下流都県の関係者、水没地区の住民代表者ら約300人が出席し、くす玉を割って完成を祝った。

 斉藤大臣は地元関係者らに「苦渋の決断によって貴重な土地を提供して頂いたた」と感謝を述べ、山本知事は「八ツ場ダムは地域住民の苦悩と葛藤の歴史だった。引き続き生活再建に取り組みたい」と話した。

 続いて長野原町の「八ツ場ダムフェスタ」が開かれ、和太鼓やダンスなどが披露された。新型コロナの感染対策のため町民限定で行われた。

 この日は、ダム最上部にある非常用の「クレストゲート」からの放流も2度行われ、流れ落ちる水の迫力に歓声が上がった。(前田基行)

◆2022年5月29日 毎日新聞群馬版
ー八ッ場ダム、苦難の70年 2年遅れで完成式典ー

 国土交通省は28日、八ッ場(やんば)ダム(長野原町)建設完成を記念した式典を開いた。地元の反対運動や民主党政権による中止宣言などを経て、計画から68年たった2020年4月に運用を開始。新型コロナウイルスの影響で式典を開けず2年遅れで開催した。

 国会議員や事業関係者など約300人が参列。テープカットと同時に、くす玉が割られた。斉藤鉄夫国交相は「貴重な土地を提供くださった地域の皆さまに心から感謝する」とあいさつした。

 洪水調節、利水、発電に対応する多目的ダムで、1947年のカスリーン台風をきっかけに国が52年、建設調査に着手、計画が動き出した。住民は激しく反対したが、湖畔の代替地に移転する案を受け入れ、94年に周辺工事が始まった。

 2000年度の完成予定が延び、総事業費は当初の2110億円から5320億円に膨らんだ。この間、脱公共事業を唱えた民主党に政権が代わり、09年に建設が中止に。事業費を負担する下流6都県が「洪水、渇水対策に不可欠」と反発、再開が決まった。

 周辺はキャンプ場や水陸両用車、道の駅などが整備され観光地化が進む。一方、移転した川原湯温泉の老舗旅館がコロナ禍で5月から休業するなど、集客に影が差す。

 代替地に住む会社役員の男性(70)は「多くの住民はダム湖を目玉に観光客が集まると思い描いていたが、今はそうなっていない。区切りとしての式典は必要だろうが、生活は何も変わらない」と淡々と話した。

◆2022年5月29日 読売新聞群馬版
ー八ッ場ダム完成祝う…オペラや和太鼓演奏ー

 八ッ場ダム(長野原町)の完成記念行事が28日、ダム本体の周辺で行われ、ダム建設関係者や町民らが完成を祝った。2年前に完成したが、コロナ禍で先延ばしにされていた。

 ダムを所管する国土交通省主催の完成式典には、ダム建設で水没した5地区の住民でつくるダム対策委員会や、水道水の供給を受ける下流5都県などの代表ら約300人が出席した。

 斉藤鉄夫国交相が「苦渋の決断で土地を提供した住民をはじめ協力いただいた方々に感謝申し上げる」と祝辞を述べ、長野原町の萩原睦男町長は「八ッ場ダムをブランドとして情報発信し、未来につなげたい」と語り、テープカットやくす玉割りをして祝った。

 町主催の記念行事では、ダム本体下の広場でオペラや地元の和太鼓演奏が行われたほか、本体最上部にキッチンカーが並び、町民らが楽しんでいた。

 29日には、水没5地区のうち長野原地区のダム対策委員会が記念碑を設置して解散し、5地区全ての対策委がなくなる。桜井芳樹委員長(72)は「コロナ禍で難しい状況が続くが、町民が手を携えて盛り上げていかなくては」と話した。