国土交通省は球磨川水系において、川辺川ダムを治水対策の中心に据えた河川整備計画の策定手続きを急ピッチで進めています。
熊本県は2008年には川辺川ダム計画の白紙撤回を表明しましたが、2020年の水害発生後、方針を180度転換し、国交省と共に川辺川ダム推進となりました。
流域住民の中にはダム計画に反対する意見が多いことは、公聴会やパブリックコメントでも明らかでしたが、国も熊本県も住民の意見を聴きおくだけです。流域の市民団体は今月4日、熊本県知事に河川整備計画についての住民説明会を開くよう要請し、直接の意見交換を求めましたが、蒲島知事は「スピード感が求められている」ことを理由に、要請されたその日に即座にこれを拒否しました。現時点での国の説明によれば、川辺川ダムの完成は2035年度です。
2年前の水害を機に蘇った川辺川ダム計画。ダム推進側は川辺川ダムを造らなかったから大水害になったとのキャンペーンを張り、ダム反対運動を攻撃してきましたが、専門家や市民団体の丹念な調査の結果、50人の水害犠牲者のほとんどは仮に川辺川ダムができていたとしても助からなかったことが明らかになっています。
〈参考ページ〉国交省、川辺川の新ダム計画盛り込む球磨川水系河川整備計画(案)公表
関連記事を紹介します。
◆2022年7月4日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASQ747JC3Q74TLVB007.html?pn=3
ー熊本県知事、河川整備計画の説明会予定せず「スピード感求められる」ー
2020年7月の豪雨で氾濫(はんらん)した球磨川水系の治水対策を定める河川整備計画の策定について、熊本県の蒲島郁夫知事は4日の記者会見で、市民団体が求めていた住民説明会を行わない考えを明らかにした。住民との対話は続けていくとした上で、「スピード感が求められている」と述べた。
河川整備計画は、球磨川の支流・川辺川に建設を計画している流水型ダムを核とするもので、国と県が今年4月に原案を作成し、公聴会などを経て今月1日に計画案を公表した。
これに対し、流域住民らでつくる6団体は、ダム反対の声が根強くあるのに計画の住民説明会が開かれていないとして、計画決定前の開催を要望していた。蒲島知事は4日の会見で、原案の作成前に住民との意見交換会を190回ほど開いたことを強調し、「それに沿って計画案が作られた。説明会をやることはない」と述べた。
国と県は今後、流域市町村長の意見を聞いて計画を策定する予定だが、市民団体側は「原案作成前の説明だけでは意味がない。計画案を住民にきちんと説明して意見を聞いた上で策定すべきだ」としている。(長妻昭明)
◆2022年7月5日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/714048
ー治水「住民と議論を」、ダム反対3団体訴えー
「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」など3団体が4日、県庁で記者会見を開き、2020年7月の熊本豪雨の被災地で国と県が進める川辺川への流水型ダム建設を軸とした治水対策について、「効果の根拠が乏しく、住民を含めた議論が必要」と訴えた。
人吉市内で調査した洪水犠牲者の行動や近隣住民への聞き取り結果を踏まえ、「球磨川の支流の氾濫で被害が発生しており、本流の水位低下が目的のダムでは被害は防げなかった」と主張した。
県民の会の中島康代表は「この2年間で県に再三、被害状況の共同検証や住民を交えた議論の場を要望してきたがほとんど返事がない。今後も粘り強く求めていく」と話した。(堀江利雅)
◆2022年7月5日 熊本日日新聞
ー球磨川水系の河川整備計画案、住民説明会「開く予定ない」【県政記者席】ー
https://kumanichi.com/articles/714043
2020年7月の熊本豪雨に関し、県と国が1日に公表した球磨川水系の河川整備計画案について、蒲島郁夫知事は4日の記者会見で「計画案に関する住民説明会を開く予定はない」と述べた。これまでに「話を聞く機会を十分設けてきた」との認識を示した格好だ。
蒲島知事は20年11月に「命と清流を守る」との考えから流水型ダム建設の推進を表明した。豪雨から約4カ月間で住民との意見交換会に30回以上出席し、延べ900人以上と向き合った。今年4月に公聴会で流域住民らの意見を聞いたほか、学識者の見解も集めており、知事は「十分な合意を基に計画案を作った」と説明した。
これに対し、流水型ダムを治水策の柱とする計画案に反対する市民団体「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」などは「住民説明会での県との意見交換」を希望している。説明が十分かどうか。双方の捉え方は平行線をたどりそうだ。(堀江利雅)