立野ダム巨大な〝要塞〟 渓谷にそびえる壁、高さ87メートルに 2023年4月完成予定

 国土交通省は先月、熊本県阿蘇で建設中の立野ダムの計画変更(事業費増額、工期延長)を明らかにしました。
 https://www.qsr.mlit.go.jp/tateno/newstopics_files/20220613/zigyokeikaku.pdf

 一方で、国土交通省はマスコミ向けにダム建設現場を公開しており、記者がその迫力に圧倒されている様子を伝える記事が発信されています。わかりにくいダム計画変更より、巨大なダム堤の写真を添えた記事の方が読者の目に留まることでしょう。
 最近はダムの広報のような記事が幅を利かせています。地震多発地帯でのダム建設の危険性は、災害が発生するまで顧みられないのでしょうか。

◆2022年7月1日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/708480
ー立野ダム巨大な〝要塞〟 渓谷にそびえる壁、高さ87メートルに 2023年4月完成予定ー

 国土交通省九州地方整備局(九地整)は6月18日、白川上流で建設中の国営立野ダム(熊本県南阿蘇村、大津町)の本体工事現場を地元住民や報道関係者に公開した。ダム堤のコンクリートの積み上げは計画の半分を終え、高さは約40メートルに達した。川底から見上げた姿は、渓谷にそびえ立つ巨大な要塞[ようさい]のようだった。

 国交省によると、ダム堤の工事は、基礎掘削で川底の硬い岩盤を表出させる。そこに型枠を設置してコンクリートを流し込む作業を繰り返し、ブロック玩具のように構造物を扇形に積み上げていく。立野ダムは2020年10月、コンクリートの流し込みに着手。総勢350人が、24時間態勢で作業を担っている。

 まず上流側の展望所に案内された。この日はダム本体の幅15メートル、奥行き30メートルのエリアに、高さ2メートル分の生コンを流し込むという。両岸に渡したケーブル伝いにバケットを移動させ、目的地付近で降ろす。1回の投入量はミキサー車1台分(約4・5立方メートル)。バケットは、何度もケーブルを往復した。

国交省が企画した立野ダム工事現場の見学会に参加した地元住民ら。下流側の川床で記念撮影した
 工事の進み具合は、天候に左右される。雨が降ったり、気温が上がり過ぎたりすればコンクリートの品質が落ちるため、工事が止まる。昨年は例年に比べて夏場の気温が高く、雨の日も多かったため、今年12月を予定していた本体完成が約4カ月ずれ込んだ。九地整立野ダム工事事務所調査設計課の北嶋清課長(44)は「今年の夏も猛暑となりそうだ」と気をもむ。

 下流側からダムを見るため、川床に移動した。コンクリートの分厚い壁が目の前に迫り、三つの穴が見えた。

 立野ダムは、平常時に水をためない「流水型ダム」。通常は最も低い位置にある中央の穴から白川の水を流し、大雨時に三つの穴を流れきれない水が自動的にたまり、下流に流す量を減らす。穴は中央部分が5メートル四方。巨大なコンクリートの塊の中にあるからだろうか、「意外に狭い」と感じた。

 最終的なダム堤の高さは現在の2倍の87メートル。来年4月に完成予定で、10月の試験湛水[たんすい]を経て工事完了となる。ダムの洪水調整機能は来年の梅雨時期には発揮できるという。「60年に1度」の大雨が降った場合、流域の浸水戸数は約2万1600戸から98・6%減の300戸に抑えられると推計している。

 立野ダム建設を巡っては、反対する市民グループから、「土砂や流木が穴をふさぐため危険だ」「建設地は地盤が弱く、断層もあってダムに向かない。治水は河川改修や堤防強化で対応すべきだ」などと批判が上がる。

 これに対し国交省は「流木や巨石は、ダムの上流150メートル地点に捕捉する施設を設けて止める。穴にも柵を設置して止めるので洪水調整能力に影響はない」と強調。地震による影響については「熊本地震後の調査でも建設地に考慮すべき断層は存在しなかった」と説明する。

 北嶋課長は「学校や自治体を対象にしてきた現地見学会を今後も開き、丁寧に説明していきたい」と話した。(文・中村美弥子、写真・後藤仁孝)

 ■立野ダム 白川下流の熊本市などの洪水被害防止を目的とする治水専用の穴あきダム。1983年に事業着手し、2018年8月に本体工事が始まった。20年10月に着手した本体へのコンクリートの流し込みは今年6月時点で約20万立方メートルに達し、総量の5割を超えた。完成後の堤は高さ87メートル、長さ197メートル。総貯水量約1千万立方メートル。総事業費は約1270億円で、事業費ベースの進捗(しんちょく)率は21年度末時点で約78%。