川辺川の流水型ダム、蒲島知事「異存なし」 国の球磨川整備計画案に回答、流域住民反発

 1997年の河川法改正により、河川管理者は今後30年間の具体的な治水対策を位置づける河川整備計画の策定を義務づけられました。計画策定に当たっては、国や県などの河川管理者と流域住民が協働で計画をつくり、流域住民の意見は公聴会やパブリックコメントを通して計画に反映されるという説明がなされました。
 しかし、改正河川法の趣旨は2000年代に入ると空洞化していき、ダムなどの大型公共事業の見直しにつながる流域住民の意見は、河川管理者が「聞き置く」だけとなってしまいました。
 2009年に一旦は川辺川ダム中止が決まった球磨川水系は、国が管理する全国の1級河川109水系で唯一、河川整備計画が未策定でした。2020年の球磨川水害後、かつては川辺川ダムの白紙撤回を表明した蒲島郁夫・熊本県知事がダム建設推進に転じたことから、国交省は川辺川ダムを位置づけた球磨川水系河川整備計画の策定作業を進めています。

 7月28日、蒲島知事が予定通り、国の原案に「異存ない」と回答したことで、川辺川ダム建設がまた一歩近づくことになりました。流域住民らからは、当然ながら抗議の声が上がっています。

◆2022年7月28日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/740207
ー川辺川の流水型ダム、蒲島知事「異存なし」 国の球磨川整備計画案に回答へー

 川辺川の流水型ダム建設を柱に球磨川水系の河川整備計画案をまとめた国土交通省に対し、蒲島郁夫知事が「異存はない」と近く回答する方向で最終調整していることが27日、関係者への取材で分かった。知事への意見聴取は同計画策定の最終的な手続きの一つで、決定すれば今後20~30年間にわたる球磨川の治水対策が固まることになる。

 国交省は今月1日に同計画案を公表し、知事に意見を求めた。ダム建設には住民らの反対意見もあるが、知事は2020年7月豪雨で甚大な被害が出た球磨川流域で「命と環境の両立」を図るには、自ら提唱した流水型ダムが最適との考えを維持する方針。

 関係者によると、蒲島知事は回答に当たり、環境に最大限配慮するなど計画が住民に理解されるような取り組みや、ダム建設で影響を受ける五木村や相良村の振興も国に求める考えだ。

 県は、国の意見聴取を受けて流域12市町村の首長にも見解を求めたが、計画案に大きな異論はなかったという。

 市町村の主な意見では、豪雨被害の大きかった人吉市が、流水型ダム建設をはじめとする治水対策で早期に住民の安全・安心を確保するよう要望。住民への十分な説明や河川環境の保全にも努めるよう強調した。

 旧中心部の一時的な水没が想定される五木村はダム建設の是非を明言せず、旧川辺川ダム計画以来の混迷を踏まえ、国と県が一体で村の振興に取り組むよう強く求めた。建設予定地の相良村もダムの賛否には触れず、計画に盛り込まれる河道掘削などの治水対策や地域振興策の推進を訴えた。

 球磨川水系の河川整備計画案は、人吉市の基準点で「50年に1度」規模の大雨を安全に流すことが目標。新たな流水型ダムを軸に、遊水地の整備や河道掘削、既存の市房ダム(水上村)の再開発などを盛り込んでいる。(内田裕之、中村勝洋、川野千尋)

◇河川整備計画 洪水時の想定流量などを定めた河川整備基本方針に沿って、おおむね20~30年間に取り組む具体的な工事(ダム、せき、堤防など)や河川維持(土砂しゅんせつなど)の内容を定めた計画。河川法に基づき、国などの河川管理者には計画の策定段階から地域住民や学識経験者の意見を聴くことが求められ、案が固まった段階で都道府県知事ら関係自治体の長の意見を聴く必要がある。

◆2022年7月30日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/742672
ー川辺川の流水型ダム建設案、蒲島知事が同意 国に「異存なし」と回答ー

 熊本県は29日、2020年7月豪雨で氾濫した球磨川の治水策として、支流の川辺川に流水型ダムを建設する国の河川整備計画案に対し、蒲島郁夫知事が「異存なし」との意見を国土交通省に伝えたと発表した。知事の同意を受け、国交省九州地方整備局は「なるべく早く対応したい」と計画の策定・公表を急ぐ方針だ。

 知事への意見聴取は河川法が定める河川整備計画策定の最終手続きで、28日に回答した。県河川課によると、球磨川流域12市町村から計画の変更を求める意見はなく、被災地の復旧・復興や「命と環境の両立」を重視する県の方向性とも一致すると判断した。

 知事から国への意見では、治水の柱となる流水型ダムの早期完成を改めて要望。ほかに市房ダム(水上村)の洪水調節機能を高める調査検討、清流を守るための「極限の配慮」と住民の理解促進、ダム建設で影響を受ける五木村や相良村の振興支援など、全7項目の取り組みを求めた。

 流域12市町村から寄せられた意見では、八代市や人吉市など10市町村が計画案に沿って事業を推進するよう要望。五木村と相良村はいずれもダムの賛否に触れず、地域振興や住民への説明と合意形成を求めた。

 蒲島知事は29日、豪雨による甚大な被害を踏まえ、「球磨川流域では今なお多くの方が仮設住宅での暮らしを余儀なくされている。迅速かつ丁寧な計画策定は被災者の生活再建を力強く後押しする」とのコメントを出した。

 球磨川水系の河川整備計画案には、新たな流水型ダムを軸に、遊水地の整備や河道掘削、市房ダムの再開発など、おおむね30年間の具体策を盛り込んでいる。流水型ダムは2035年度の完成予定。(内田裕之)

◆2022年7月28日 熊本日日新聞
ー疑問点が置き去りにー

 川辺川への流水型ダム建設を含む球磨川水系の河川整備計画原案について、国土交通省と県が4~5月に行ったパブリックコメント(意見公募)に、住民から455件の意見が寄せられた。
 公開された説明資料によると、流水型ダムに対する疑問や不安が多数を占めた。市民団体は、ダムに反対する意見が70%を超えたと分析している。旧川辺川ダム時代から続く事業への不信感の根深さが改めて浮き彫りになったと言えそうだ。
 国交省と県は6月末の学識者懇談会で、寄せられた意見に対する考え方を示した。アユの生息環境確保や森林の再生などは計画に反映させるとしたが、ダムを疑問視する声には「流水型ダムを含むメニューが最も適切」「環境影響評価手続きを丁寧に進める」などの説明に終始。パブリックコメントについての手続きは、この1回の説明で終了した。
 7月1日には原案を手直しした河川整備計画案を公表。流水型ダムを整備すると明記した。蒲島郁夫知事は、公聴会なども含め「話を聞く機会は十分設けた。十分な合意を基に計画案を作った」との認識を示した。計画案に関する住民説明会も開かない方針だ。
 パブリックコメントは公共事業の立案過程で意見を募り、事業に反映させることを目的としている。ただ、意見をどう反映させるかは事業者次第だ。流水型ダムは河川整備計画の柱となる存在なのに、疑問点が置き去りにされた形だ。十分な合意が得られたとは言いがたい。
 旧ダム計画は流域住民の合意が得られない中で頓挫した。合意の重要性は、2008年にいったん計画を白紙撤回した知事が誰よりも分かっているはずだ。
 治水対策を着実に進めるためにも、住民の疑問に対して説明責任を果たし、丁寧に合意形成を図っていくべきではないか。(木村彰宏)

◆2022年8月4日 NHK熊本放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20220804/5000016532.html
ー流水型ダムに同意の知事意見に反発 八代市の住民団体が抗議文ー

 おととしの豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として「流水型ダム」を建設するとした国の計画案に対し、蒲島知事が「異存なし」と回答したことを受けて、八代市の住民で作る団体は4日、知事宛の抗議文を提出しました。

おととしの豪雨災害を受けた球磨川の治水対策として、国は、支流の川辺川に「流水型ダム」の建設を柱とする河川整備計画の案をまとめたのに対し、蒲島知事は先月、「異存はない」などと回答していました。

これを受けて、豪雨で甚大な被害を受けた八代市坂本町の住民など5人が、八代市の県南広域本部を訪れ、蒲島知事宛ての抗議文を手渡しました。

抗議文では、想定を超える洪水が発生すれば、ダムは水で満杯になり洪水調節が機能しないほか、貯水型ダムと比べて流水型は環境への影響が少ないとされているが、ダムを造れば清流は守れない、国と県が行ったパブリックコメントでも、7割以上がダムの建設に反対か疑問があると回答し、流域住民の意見が反映されていないなどと指摘しています。

県南広域本部の馬場幸一総務部長は「抗議の内容については県庁の所管する課に伝えたい」と応えていました。

抗議文を提出した南由穂美さん(70)は「私たちの疑問について、これまで知事は何ひとつ答えていない。県は説明会を開き、住民の声を聞くべきだ」と話していました。

◆2022年8月5日 NHK熊本放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20220805/5000016544.html
ーダム建設の国計画案に知事が「異存なし」 住民団体が抗議文ー

 おととしの豪雨で氾濫した熊本県の球磨川の治水対策として「流水型ダム」を建設するとした国の計画案に対し、蒲島知事が「異存なし」と回答したことを受け、6つの住民団体が県に抗議文を提出しました。

おととしの豪雨災害を受けた球磨川の治水対策として国が支流の川辺川での「流水型ダム」の建設を柱とする河川整備計画の案をまとめたのに対し、熊本県の蒲島知事は先月、「異存はない」などと回答していました。

これを受け、豪雨で甚大な被害を受けた地域の住民などでつくる6つの団体は5日、県に抗議文を提出し、記者会見しました。

抗議文では、整備計画の原案に対するパブリックコメントで7割以上がダムに反対したほか、流域で開催された公聴会でも7割を超える住民が反対したとして、「異存はない」とした知事の回答の撤回を求めています。

会見で、代表の中島康さんは「寄せられた多くの反対意見が無視され、危険な状態だと感じて今回の抗議に至った。県には説明の場を設けてほしい」と話していました。

提出を受けた県河川課は「抗議文で撤回が求められていることは知事に報告し、流域の住民に対しては今後も理解が深まるようコミュニケーションに努めたい」としています。

 

◆嘉田由紀子参院議員フェイスブック
https://kadayukiko.jp/archive/archive-17331/
ー2022年7月28日は、「平成河川法の魂が殺された日」と日本の河川政策史に刻まれる悲しい記念日となるでしょう。ー

2022年7月28日は、「平成河川法の魂が殺された日」と日本の河川政策史に刻まれる悲しい記念日となるでしょう。残念です。日本の河川政策史上、流水型(穴あき)ダムとしては前例のない最大規模の川辺川ダム(球磨川上流)を含む河川整備計画を、蒲島熊本県知事長が「異存なし」と表明。これで一気に河川整備の建設事業が進むことになる。蒲島知事は「命と環境を守るために川辺川ダムが必要」と繰り返し主張。本当に「命と環境を守ることができるのか?」。河川空間に100メートルもの高さがある大きなコンクリート壁をつくり、数メートル四方の穴をあけて水流を担保するという穴あきダムでいかにして「15年連続水質日本一」「清流アユが誇り」の川辺川の水質、生態系、環境を守ることができるのか。7月30日。また長いです(2000文字)。

 この4月に公表された河川整備計画には、川辺川ダムでいかに命を守り、環境を守るのか、具体的に何の記述もなく抽象的に「命と環境を守る」というスローガンだけで、2700憶円もの予算を必要とする川辺川ダム計画が公的に決められることになる。しかもこれまでに投下した2200憶円をあわせて4900憶円のダム建設では、費用対効果は0.4と、税金を投入する公共事業の目安となる1.0をはるかに下回っている。財務省は、岸田政権は、これほど費用対効果が低い公共事業に税金を入れる事を認めるのか?国家としての財政規律の本質的問題であろう。「税金無駄遣い、もったいない!」。秋からはじまる臨時国会で、私自身、国会議員としても財政規律の問題を糺していきたい。
さらに、川辺川ダム建設で本当に流域住民の命を守ることができるのか。2020年7月4日の水害直後から、私たちは地元の被災者の皆さんといっしょに、「何が生死を分けたのか?」という疑問をもって、50名の溺死者お一人おひとりの溺死場所を訪問し溺死時間や、洪水はどこから来たのか等、緻密に聞き取り調査を重ねてきた。300人以上の地元住民の方の証言を得て、もし川辺川ダムが完成していたとしても、2020年7月4日の降雨パターンでは50名の溺死者のうち48名の命は救えていないという調査結果を得た。

 この結果は調査した私たちにも驚きだった。球磨川水害溺死者といえば、球磨川の本流が溢れて溺死したのだと思いがちだ。それゆえ本流の水位を上流部で下げる治水ダムは、溺死者を減らすために有効だろうと思っていた。しかし、ひとりずつ調べれば調べるほど、本流が溢れる前に、人吉市なら山田川や万江川、御溝川という支流や町中水路が溢れて、その水に呑まれて亡くなった人たちが圧倒的に多いことがわかってきた。ではなぜ支流が先にあふれたのか。1000メートル級の山やまに降った線状降水帯の豪雨は、人工林の皆伐やシカ害で荒れ果てた山地から一気に濁流となって人吉市内を襲ったのだ。。

 下流部の球磨村の渓流部では山岳部から直接球磨川の水位があがり溺死者を出した。球磨村からはるか50-80キロ上流の川辺川ダム。ダムの水位低下効果がでるはるか前、早朝に下流部でも溺死者がふえた。

 川辺川ダムが完成していたとしても、溺死者の数はほとんど減らない、という結果を樺島知事と、国土交通省の担当局長に提示してきた。もし疑問があるなら、溺死者の原因究明を行ってほしい、と昨年春以降、繰り返しくりかえし、熊本県と国土交通省に要望してきた。しかし県は「検証の必要はない」、国は黙殺のまま、川辺川ダム建設を含む河川整備計画が正式に策定されることになります。この点も国会で問題提起したい。

 治水だけを目的とした明治時代の河川法、昭和30年代の高度経済成長期に利水が追加された昭和河川法。川の水を使いたい放題、利水や電力需要にまわし、コンクリート化した河川から、生き物の姿が消え、そこで遊ぶ子どもたちの姿も消えた。そこで1990年代から河川法の目的に「環境保全」を明示し、整備計画決定のプロセスで「住民意見の反映」という項目が追加された。1997年の「平成河川法」は、地球規模での環境問題に対処する、日本の河川政策史での画期的な改善だった。

 今回の、川辺川ダム建設を含む球磨川流域河川整備計画は、平成河川法の目的や精神を全く無視したものとなってしまった。平成河川法づくりに、河川研究者としての魂を燃やしておられた故高橋裕東京大学名誉教授や、河川法改正時の河川局長でおられた尾田栄章さんや多くの河川政策官の皆さんは、今回の球磨川河川整備計画づくりのプロセスをみてどう思われるだろうか。直接意見が聴きたいです。

 また何よりも、2020年洪水で命を失った50名の溺死者の皆さんの犠牲を無にしないためにも、「山地破壊の影響」「シカ害を減らす」「支川氾濫の減少」「土地利用の配慮」「平屋の危険性」「高齢孤独者の避難支援づくり」など、ダム建設の前にすすめるべき、心のこもった流域洪水対策が必要だ、ということを今後とも発信し続けたいです。

 今後の期待は、建設地である相良村長とダム水没予定の五木村長はダム計画に言及せず、地域振興や河川整備への要望にとどめていることです。かろうじて、今後の議論の余地が残されたとみるべきでしょうか。パブリックコメント455件の7割以上が流水型ダム反対意見。4月に開催された公聴会公述人33人も、同じく7割以上が流水型ダム反対でした。清流川辺川を愛する熊本県民の想いを今度とも発信しつづけてほしいです。国会議員の立場から応援していきたいです。