球磨川上流、市房ダムの緊急放流をめぐる記者発表とNHKニュース

 9月中旬に襲来した台風14号は各地に大きな被害をもたらしています。球磨川上流の市房ダムも満杯となり、緊急放流が行われましたが、今回は緊急放流を行った時点で豪雨がピークを越えており、大事には至りませんでした。
 この市房ダムの緊急放流について、昨日、NHK熊本放送局が報道しました。
 (記事本文はこのページの末尾に)

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◆2022年9月29日 NHK熊本放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/k/kumamoto/20220929/5000017111.html
ー球磨川上流の市房ダム 緊急放流遅らせ下流の水位上昇抑えるー
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 この記事の情報源は、昨日、国土交通省八代河川国道事務所と熊本県が行った以下の記者発表です。
 
 ★台風第14号洪水における市房ダムの効果について《速報値》 
  http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/news/r4/20220929kisya.pdf
 (右下の画像をクリックすると全ページが拡大表示されます。)20220929kisyaのサムネイル

 記者発表の要点は以下の通りです。
・大型の台風14号は9月18日夜から19日朝にかけて熊本県に接近した。市房ダムでは当初、19日午前2時に緊急放流を予定していたが、ダムへの流入量や空き容量、下流の水位の上昇などを検討し、緊急放流の開始時刻を午前3時へ1時間遅らせた。
・市房ダムに最も近い多良木町の観測所では、球磨川の最高水位は午前5時時点の3.60メートルであった。仮に午前2時に緊急放流を行った場合、最高水位は午前4時時点の3.98メートルとなり、氾濫危険水位を超えていたと推定。

 

 球磨川流域では、2020年の熊本豪雨をきっかけに、球磨川支流の川辺川に国が半世紀以上前に計画した巨大ダムが建設されることになりましたが、河川環境の破壊、緊急放流の危険性などを危惧する流域住民の間では、ダム行政への不信が渦巻いています。国土交通省と熊本県は、こうした状況に対応する必要があったのでしょう。実際、NHKの記事タイトルを見ると、市房ダムのおかげで水害が防げたようにも受け取れます。

 しかし、果たしてどうでしょうか。

 水源開発問題全国連絡会共同代表の嶋津暉之さんの見解を紹介します。

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 下記のグラフは国交省と熊本県のデータを使って、多良木、人吉の当日の水位、および市房ダムの流入量・放流量の時間変化を見たものです。、
 市房ダムより約9㎞下流の球磨川・多良木地点では、緊急放流の影響で5時頃に水位が少し上がっただけでした。
 中流の人吉地点では、緊急放流の影響は明確ではなく、球磨川流域の降雨によって、水位がかなり上昇しました。

 流域面積が小さい市房ダムの治水効果は元々小さなものであって、人吉あたりではほとんど期待できません。市房ダムはむしろ、緊急放流時のダム直下での氾濫が心配されるダムです。
 ダムを前提としない河道整備をきちんと行うことに力を注ぐべきです。

2022年9月18~19日の球磨川の観測水位と市房ダムの流入・放流量の時間変化 (国交省と熊本県のデータを使って作成)

  流域面積 市房ダム158㎢  多良木250㎢  人吉1137㎢  (市房ダムは河口から約93㎞)

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 ダムが建設される川では、ダムによる治水効果を前提として築堤などの河道整備が行われます。このため、豪雨のさなかにダムが治水機能を失って緊急放流を行うと、「想定外」の洪水が起こり、水害を拡大させる危険性が高まります。今回は雨の降り方が幸いしましたが、今後も安全という保証はありません。豪雨が頻発する昨今、ダム依存の治水の限界を示す緊急放流において、たとえダムを運用する職員が最善を尽くしたとしても、危険を回避できない事態は起こり得ます。

◆2022年9月29日 NHK熊本放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/k/kumamoto/20220929/5000017111.html
ー球磨川上流の市房ダム 緊急放流遅らせ下流の水位上昇抑えるー

 今月中旬に熊本県に接近した台風14号に伴う大雨を受け、球磨川の上流にある市房ダムで行われた「緊急放流」について、国などが分析したところ、県が当初の予定よりも1時間放流を遅らせたことで、氾濫危険水位を超えることなく下流の水位を抑えられたことがわかりました。
 今月18日から19日にかけて熊本県に接近した台風14号の影響で、球磨川上流にある水上村の市房ダム周辺では、おととしの記録的な豪雨を上回る雨が降って大量の水がダムに流れ込み、27年ぶりに緊急放流が行われました。
 緊急放流は、放流を段階的に増やし、最終的にはダムに流入する水と同じ程度の量を流す緊急的な操作で、たまった水を一気に流すわけではありませんが、下流の水位が増すため、雨量などに応じた調整が必要とされます。
 県は当初、市房ダムの緊急放流について今月19日の午前2時から行う予定でしたが、下流の水位が上昇していたことなどから、1時間遅らせて午前3時に放流を始めました。
 この判断について、国と県が分析したところ、市房ダムに最も近い多良木町の観測所では、緊急放流を当初の予定通りに実施していた場合、氾濫危険水位を38センチ上回る3メートル98センチまで水位が上昇したとみられるということです。
 緊急放流を1時間遅らせた結果、観測所の水位は氾濫危険水位を超えず、水位の抑制につながったとみられるということです。

ー球磨川上流の市房ダム 27年ぶりの「緊急放流」 決断の背景ー
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20220929/5000017120.html