八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

今秋の台風14号では9ダムが緊急放流

 今年9月の台風14号では九州地方と中国地方のダムで緊急放流が行われました。
 事前にダムの水位を下げる事前放流を行ったダムは国土交通省のHPに載っているのですが、豪雨のさなかにダムが満水となり、緊急放流を行ったダムについての情報は国土交通省本省のホームページには掲載されていません。


「台風第14号による被害状況等について(第11報)

 9/30ページ 
 ■既存ダムの洪水調節状況
  洪水調節(事前放流を含む)を実施 279ダム
  279ダムのうち、事前放流の基準に達したダム 217ダム
  事前放流を実施 128ダム(うち、利水ダム77)


以下は水源開発問題全国連絡会共同代表の嶋津暉之さんの報告です。

~~~~~
 国土交通省の河川環境課流水管理室に問い合わせたところ、緊急放流を行ったダムは次の9ダムでした。

九州地方
 市房ダム(球磨川水系、熊本県)
 松尾ダム(小丸川水系、宮崎県)
 渡川(どかわ)ダム(小丸川水系、宮崎県)
 綾北ダム(大淀川水系、宮崎県)
 立花ダム(一ツ瀬川水系、宮崎県)
 祝子(ほうり)ダム(五ヶ瀬川水系、宮崎県)
 北川ダム(五ヶ瀬川水系、大分県)

中国地方
 向道ダム(錦川水系、山口・広島県)
 小瀬川ダム(小瀬川水系、山口・広島県)

 九州地方の7ダムの緊急放流は国土交通省九州地方整備局のホームページに掲載されていましたが、中国地方のダムの緊急放流の情報は中国整備局のホームページには見当たりませんでした。 

 九州地方整備局HPより「令和4年台風第14号に伴う大雨について【速報版】 (第1報)4ページ 

 ダムの恐ろしさは計画規模を超える洪水が来ると、調節機能を失って緊急放流を行うことです。
 ダムの下流はダムの洪水調節を前提とした治水計画になっているので、緊急放流を行うと氾濫の危険性が高まります。特にダム直下の住民は緊急放流で命の危険にさらされることになります。

 2018年7月の西日本豪雨では愛媛県・肱川の野村ダムと鹿野川ダムが緊急放流を行い、深刻な洪水被害を引き起こしました。野村ダムの下流では、ダムの放流により、5人が死亡し、約650戸が浸水しました。鹿野川ダムの下流でもダムの放流により、3人が死亡し、約4600戸が浸水しました。

 今年9月の台風14号では幸いなことに9ダムの緊急放流で人の命が奪われることはなかったようですが、次のニュースはダム緊急放流の恐ろしさを伝えています。

◆テレ朝news2022/09/19 21:27
【台風14号】ダム緊急放流 住宅屋根にベランダが…落下も 厳島神社にも暴風雨

 台風14号の影響で19日、山口県内を流れる錦川の上流にあるダムで緊急放流が行われました。川に架かる観光名所「錦帯橋」のアーチ部分にも水が迫り、緊迫した状況が
続いています。

 川が増水し、止まっていた軽トラックが冠水しているのは山口県岩国市の様子です。
 周囲は水田地帯だそうですが、道路との境界線が分からなくなっていました。
 国指定の名勝「錦帯橋」がある錦川では19日朝、上流のダムで水位が上昇し緊急放流を始めました。
 錦川が増水して橋げたの一番上、アーチのすぐ下まで水が来ています。そして普段、駐車場として使われている河原も現在は完全に川の底です。
 錦帯橋の普段の美しい姿をよく知る地元住民もこれには落胆しています。

 地元の人:「今回これ以上、水が増えないのを祈るだけです」

 山口県では18日夜から暴風域に入り、最大瞬間風速が30メートルを超える非常に強い風を観測。
 吹き飛ばされ、工事現場の柵が倒れたり自転車が草むらの中に横たわったりと大荒れの様相が続いています。
 そして住宅の2階にあるベランダが大きく傾いてしまう被害も。

 近所の人:「夜中にガシャーンと何かがぶつかるような音がしました。雨風すごかった。午後10時くらいから強くなってきた」

 少しでもバランスを崩すと地面に落ちてしまう危険性もはらんでいるそうです。

 住民:「風呂に入っていたけど『ドーン』といって何かなと上がって行ったら、こうなってて…。1回(元の位置に)戻ったんですけど、もう1回また倒れて」「(Q.倒れていたのが再び風で?)3回…1回、2回、3回。それで、そのままの状態で朝までもった感じです」

 ところが、午後になって事態が急変。午前中まで2階で傾いていたベランダが今はこのように下に落ちてしまっています。住人の男性の話によりますと、午後1時ごろドカンと大きな音がして見に来たらこの状態だったということです。
 山口市は19日朝、仁保川が氾濫危険水位に達し、周辺に住むおよそ1万7500人に警戒レベルのうち最も高いレベル5の緊急安全確保を出しました。
 山口県内では24時間に降った雨の量が多い所で400ミリに達した所もあります。

 広島県の厳島神社では、大鳥居は現在、70年ぶりとなる大規模修繕のさなかで工事の足場に覆われていました。
 早朝から暴風域に入り、土産物店が立ち並ぶ通りでは高潮に備え、防水シートや土のうなどで浸水対策。
 広島県には台風が最接近し、小瀬川ダムを放流した影響で現在も大竹市の一部に緊急安全確保が出るなど各地で避難が呼び掛けられています。

 四国でも風速25メートル以上の暴風域に入っている所があり、海上は猛烈なしけとなっています。

 台風14号による人的被害は午後5時現在、ANNまとめによりますと、宮崎で1人が亡くなったほか、95人がけがをしています。

 また、土砂崩れで1人の安否が分かっていませんでしたが、午後に男性の遺体が見つかりました。