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熊本県、川辺川ダム建設で五木村に新たな財政支援検討

 2020年の球磨川水害をきっかけに復活した川辺川ダム計画は、水没予定地を抱える五木村に大きな影を落としています。
 五木村は旧来の川辺川ダム計画については受け入れを表明していましたが、新たな川辺川ダム計画は通常はダムに水を貯めない流水型で、今後の行方が見通せないこともあり、ダム計画への賛否を表明していません。
 五木村に新たなダム計画を受け入れさせるために、熊本県はダム事業でしばしば見られる「アメ」による懐柔策を考えているようです。

◆2022年11月4日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/844036
ー五木村振興、新たな財政支援を検討 熊本県、ダム建設転換で調整 基金もさらに上乗せ方針ー

 球磨川支流の川辺川への流水型ダム建設に伴い、貯水時に一部地区の水没が想定される五木村を振興するため、熊本県が新たな財政支援を講じる方向で調整していることが3日、分かった。県は2011年に村内の道路といったハード整備支援などのために50億円の支出を決めた経緯があり、こうした事例を念頭に、今後、村側と必要額を精査するとみられる。

 ソフト対策に充てる村の振興基金についても、県は20年7月豪雨後に10億円増額することを決めていたが、さらに上乗せする方針だ。

 蒲島郁夫知事は08年に旧ダムの「白紙撤回」を表明したが、豪雨災害を受けて流水型ダムの建設容認に方針転換。「ダムによらない地域振興」からの変更を迫られた村に対し、県は「可能な限りの新たな財政支援が必要」と判断したもようだ。

 白紙撤回後の財政支援として、県は08年度に総額10億円の五木村振興基金を創設。11年度には基金とは別に、村の生活再建のために50億円を確保し、国道445号や文化施設、公園などの整備に活用してきた。

 複数の関係者によると、県は五木村振興計画の推進に向け、基金への積み増しに加え、新たな財政支援に必要な財源を確保する考えを村側に伝達した。具体額は提示していないという。

 流水型ダムは35年度の完成を目指し、27年度のダム本体工事着手を見込む。県は「完成後を見据えた中長期的な財源の確保」や、「スピード感を持った地域振興・生活再建の取り組み」のため、国、県、村、村議会による新たな協議の場も設ける考え。

 国と県が村に提示した村振興計画の素案の中身も判明した。事業期間は22年度から概ね20年間で、「誰もが安全・安心に住み続けられ、若者が集まる〝ひかり輝く〟新たな村の実現」を目標に掲げた。

 具体策として、平地が少ない村内に平場を整備し、移住・定住に向けた住まい確保を促進。空き家の修繕費用に対する助成事業や、新たな周遊観光ルートの構築などを盛り込んでいる。

 振興計画の策定時期について、県は当初、今秋を見込んでいたが、国や村側との調整が必要として22年度末にずれ込む見通しだ。

 旧中心部の宿泊施設「渓流ヴィラITSUKI」や公園「五木源[ごきげん]パーク」などダムの貯水時に水没が見込まれる一帯については23年度以降、利活用や維持管理策をまとめる。(内田裕之、中村勝洋)