揖斐川の上流の岐阜県に2008年に建設された徳山ダム(独・水資源機構)の水を、ダム建設の本来の目的である愛知県、三重県、名古屋市の水道に供給することを目的とした木曽川導水路事業。水需要の低迷を背景にこれまで休止されてきた巨大事業ですが、今年2月末日、名古屋市の河村たかし市長が容認する意向を示したことで動き出す気配です。
さる5月13日、この木曽川導水路事業をテーマに、賛成、反対両派の専門家や市民団体の代表が登壇する意見交換会を開催されました。事業に反対する専門家の中には、名古屋市主催のこの意見交換会は茶番劇にすぎないとして登壇を見合わせた人もいたそうです。
新聞記事によれば、参加者は公募に応じた市民100人。登壇者8人のうち6人が賛成意見であったものの、市民の会場発言では9人中7人が反対意見であったということです。
ニュースや記事は名古屋市周辺でのみ流れているようですが、木曽川導水路の事業費(当初計画段階の総事業費890億円)の半額近くが国費で賄われます。
【関連ページ】
●「名古屋市 河村市長 撤退宣言から一転容認へ 徳山ダムから水引く木曽川導水路計画」
●「名古屋市の河村市長容認の木曽川導水路計画(続報)」
◆2023年5月13日 NHK 東海WEB
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20230513/3000029118.html
ー木曽川導水路めぐり名古屋市で意見交換会ー
水道用水の確保などを目的に岐阜県の徳山ダムから木曽川に水を引き入れる木曽川導水路の建設計画をめぐり、専門家や市民団体の代表による意見交換会が名古屋市で開かれました。
木曽川導水路をめぐっては、名古屋市の河村市長が、市長就任当初に反対したことなどから事業が凍結されていましたが、河村市長は、ことし2月「洪水対策とともに上流の安心安全な水を飲める」などとして、一転して計画を容認しました。
これを受け、名古屋市は13日、意見交換会を開き、容認と反対それぞれの立場の専門家や市民団体の代表、あわせて8人が出席しました。
この中で、防災が専門の名古屋大学の平山修久准教授は去年、大規模な漏水が起きた豊田市の取水施設を例に挙げ、「地域活動を支えるインフラは代替できない。バックアップが必要だという観点から地域で議論する必要がある」と述べ、容認する考えを示しました。
これに対し、市民団体の代表は「徳山ダムは失敗で、さらに失敗を重ねてはいけない。導水路は、税金の無駄遣いだ」などと反対する意見を述べました。
会場でそれぞれの意見を聞いた河村市長は「計画からの『撤退』という意見があったが、考えづらい。多額の税金を投入したのに水を使えないのが市民のためになるのか」と述べ、事業を推進する考えを重ねて示しました。
◆2023年5月14日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASR5F74FPR5FOXIE002.html
ー反対相次いでも河村市長「方針変更無い」 導水路事業で意見交換会ー
(一部引用)
・・・市民からは反対意見が相次いだが、河村市長は終了後、「ええ意見は採り入れるが、方針変更はない」と語った。
河村市長は「水余り」を認めながら、水の安定供給や治水の推進、堀川浄化の三つを提案することで転換したとしており、賛否が焦点だった。市が選んだ学識者、市民団体代表の発表は、8人中6人が賛成で、「気候変動で渇水や洪水のリスクが高まった」「明治用水頭首工のように、インフラ老朽化が進んだ」などとした。
しかし、市民の会場発言は9人中7人が反対。「堀川浄化は、余っている水道の水を使えばいい」「(凍結していたはずの)河村市長の手のひら返しにびっくり」「生態系への影響を考えるべきだ」などと続いた。反対の挙手が多く、司会が「賛成の人は?」と促す場面もあった。
河村市長は、まとめで「徳山ダムを造ってまった以上、(導水路で)使わないかん」と話すと、会場から「税金(料金)が高くなるぞ」とヤジも飛んだ。