熊本県の川辺川ダム計画は、八ッ場ダムと並び称されてきた国の巨大ダム事業です。民主党政権時代、八ッ場ダムは利根川流域都県がこぞってダム推進だったことから事業が止まりませんでしたが、川辺川ダムは熊本県が白紙撤回していたことから休止されました。
その後、2020年の熊本豪雨により、球磨川流域は甚大な水害を経験し、ダムを建設しなかったことが原因だといわれて事業は復活しました。川辺川ダム事業は休止前に道路の付け替え工事などが進み、五木村の水没住民の移転もほぼ終了していましたので、ダム事業再開は効率的な治水対策だと説明されてきましたが、これまでにかかった川辺川ダム旧計画の事業費が約2200億円、今後の事業費は2700億円近くになると見積もられています。
地元紙の以下の記事によれば、国土交通省が今後30年間に予定している球磨川の治水対策の費用は約5139億円に上るということです。川辺川ダムの新たな事業費2700億円はそのうち半分以上を占めることになります。
「ダム設、河道掘削、堤防強化、遊水地整備といった河川対策が約4848億円」とありますので、ダム事業費以外の河川対策費は2150億円弱であることがわかります。その他。砂防ダムなどの砂防対策は約266億円、排水施設の整備を含む下水道対策は約25億円と見込まれています。
ダム事業費は事業を進める中で膨らんでゆくのが常ですから、2700億円で済むと考えるのは早計です。完成は2035年度の予定ですが、これも従来のダム事業を踏まえると遅れる可能性が高いと考えられます。
ダムに反対する識者や市民運動の現地調査や分析によれば、2020年の豪雨時に仮に川辺川ダムがあったとしても、50人の犠牲者の多くは救えなかったとのことです。巨大事業に翻弄される球磨川流域はこれからどうなるのでしょうか?
★2023年6月7日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/1070348
国土交通省は6日、2020年7月豪雨に関する球磨川流域治水協議会の会合で、豪雨後おおむね30年間の流域の治水対策の総事業費が5千億円を超えるとの試算を報告した。(以下略)