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国は流域市町村に川辺川「流水型ダム」の構造案を説明

 球磨川の最大支流である川辺川は、16年連続で「水質が最も良好な河川」に選出されてきました。
 国の川辺川ダム計画は、「日本一の清流」の河川環境に致命的なダメージを与える恐れがあり、今も多くの人々がダム建設に反対し、その行方を注視しています。国土交通省は環境への配慮をアピールしており、今月6日に行った構造案の説明でも、環境への影響を最も小さくする構造をめざしていることをアピールしたとのことです。

 「公共放送」のニュースでは国交省の説明がそのまま流されるだけで、環境への影響への懸念には触れられていません。現在の計画によれば、完成は10年以上先の2035年度が予定されていますが、それまではダム建設の唯一の目的である「治水効果」は当然ながら期待できません。毎年、大雨にみまわれる球磨川流域で、2020年の球磨川水害以降、まさにショックドクトリン(惨事便乗型資本主義)が大手をふるって罷り通っています。

◆2023年6月6日 NHK熊本放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20230606/5000019210.html
ー球磨川治水対策の「流水型ダム」 国が流域市町村に構造案説明ー

 3年前の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として支流の川辺川に整備される「流水型ダム」について、国は流域の市町村などに対して環境への影響を最も小さくする構造を検討していることを説明しました。

 6日は球磨川の治水対策についての会議が熊本県の防災センターで開かれ、蒲島知事のほか国や県の担当者や流域の市町村の代表など合わせておよそ40人が集まりました。

 会議の中で、国からは支流の川辺川に整備する流水型ダムの構造について、模型での実験を紹介しながら説明がありました。

 それによりますと、ダムは環境への影響を最も小さくする構造を検討していて、ふだんはダム本体の3つの門を開放して川の水をそのまま下流に流し、アユなどの魚が移動できる経路を維持します。

 一方、大雨が降った際には3つの門を閉鎖して水をためるなど、平常時と大雨のときの水の流れを分ける形状を検討しているということです。

 下流には大雨のときにダムから放流された水の力を弱める働きがある「副ダム」を整備し、この副ダムも魚の移動を妨げない形状を検討しているということです。

 国は2027年度から流水型ダムの基礎掘削工事を始め、2035年度の事業完了を目指しています。

【国土交通省川辺川ダム砂防事務所長は】
 会議の後、国土交通省川辺川ダム砂防事務所の齋藤正徳事務所長は「環境への影響を極限まで配慮して、ダムの構造を設計していく。設計にあたっては、数値計算や解析など繊細な検討を進めていきたいと考えている。川辺川は清流で多くの方が利用しているので、地域の人々の生活に貢献する新しいダムを造っていきたい」と話していました。

 また、今後の取り組みについて「流水型ダムが下流に与える影響などについてはまだ検討が始まった段階で、地域に対して影響を説明できていない。今後はまず委員会を開いて有識者の意見を聞き、技術的に詰めたうえで地域の住民に説明することで、理解を得られるよう進めていきたい」と話していました。

◆2023年6月6日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/1068479
ー川辺川の流水型ダム放流口、下部に多く配置へ 国交省、生物移動を考慮 検討委で報告ー

 国土交通省は5日、2020年の熊本豪雨で氾濫した球磨川の支流・川辺川に建設する流水型ダムの放流口の配置について、下部(河床部放流設備)を3門とする方向で検討を進めることを明らかにした。茨城県つくば市で開かれた流水型ダム環境保全対策検討委員会(委員長・楠田哲也九州大名誉教授)の第6回会合で報告した。
 国交省によると、中部(常用洪水吐き)にも2門配置して計5門とする方針。(中略)・・・下部を3門とした場合、放流口の幅が計15メートル
で現在の川幅と同程度になることから、生物の移動への影響が比較的小さいと判断した。
 会合で国交省の担当者は、下部の放流口が1門当たり全長100メートル程度になると説明し(以下略)